• 料理家さんから繰り出される「おいしい」のベースは幼いころの記憶や体験にあったようです。今回は、「LIKE LIKE KITCHEN」主宰の小堀紀代美さんに、洋菓子店を営むお父さまがつくってくれたおやつ2品を教えていただきます。
    (『天然生活』2015年7月号掲載)

    料理家 小堀紀代美さん
    素材も手間も惜しまずに。甘く豊かな父のお菓子

    父からの教え
    材料は一等いいものを。食べ歩きで「おいしい」を養って

    「お菓子は、いつだって食べ放題。ショーケースから食べたいケーキを取り出しては、ちょこちょことつまんでいたんですよ」

    そんな、だれもが夢に描くような体験をしていた小堀紀代美さん。実家は、栃木・宇都宮にある「コボリ洋菓子店」です。

    「家にいたころはお菓子づくりをじっくり教わることはなかったんです。でも、工房にいることは多かったので、父や職人さんたちの手の動きや、工房に満ちた甘いにおいなんかは、くっきりと焼きついています」

    約50年前の開店当初は、いまのように多様な材料が簡単には手に入りませんでした。そんななかでも精一杯、いい素材を使ってお菓子をつくり、休みともなると評判のお菓子を食べ歩き、味の研究にも余念がなかったと振り返ります。

    「豊かじゃないからこその豊かさというか。選択肢が少ない分、それを補うべく、手間をかけて工夫をして、濃いお菓子づくりをしていたんだと思います」

    画像: スポンジケーキの切れ端や、余った生クリーム、季節のフルーツなどを使って、お父さまがよくつくってくれたそう。テフロンのフライパンが家に導入されたばかりで、クレープをきれいに焼けるのがうれしく、何枚も何枚も親子で焼いたのは、いい思い出。

    スポンジケーキの切れ端や、余った生クリーム、季節のフルーツなどを使って、お父さまがよくつくってくれたそう。テフロンのフライパンが家に導入されたばかりで、クレープをきれいに焼けるのがうれしく、何枚も何枚も親子で焼いたのは、いい思い出。

    そんな熱いお菓子づくりのDNAは確実に紀代美さんにも受け継がれて……。定番お菓子のつくり方をていねいに解説した、お菓子づくりの教科書ともいえる本を上梓したばかり。

    「お菓子は化学。同じ材料でも、入れる順番や混ぜ方の強弱によって仕上がりに差が出ます。そういうのを研究するのが好きなんです」

    そのために、世にあまたあるお菓子の配合をとにかく書き出し、違いを知り、実際につくり、ベストと思えるレシピをつくりました。

    店は弟さんが継ぎ、お菓子づくりに遠いところにいたかのようにみえた紀代美さん。そんな彼女がお菓子の本を出し、だれよりも喜んでいるのはお父さまです。

    父が店の片隅でつくってくれたおやつ

    レーズンとコーンフレークのクッキー

    画像: レーズンとコーンフレークのクッキー

    お父さまが子どもたちのために、店の仕込みの合間によくつくってくれた思い出のクッキー。コーンフレークのサクサクした歯ごたえが後を引く味。あまりに好評なので、一時、お店で販売したこともあったが、いまはなし。秘蔵のレシピを小堀さんが引き継いだ。

    材料(直径2cmのクッキー約40個)

    • 薄力粉 150g
    • レーズン 60g
    • コーンフレーク 40~50g
    • 食塩不使用バター 70g
    • グラニュー糖 75g
    • 卵 1個
    • バニラエクストラ 少々

    準備
    バターと卵は常温にもどし、卵はよく溶きほぐす。鉄板にオーブンペーパーを敷く。

    つくり方

    1. ボウルにやわらかくもどしたバターを入れて、泡立て器で軽くほぐし、グラニュー糖を一度に加えてすり合わせ、卵を2~3回に分けて加え、そのつどよく混ぜる。
    2. 1にバニラエクストラを2~3滴加え、薄力粉をふるい入れ、ゴムべらで粉けがなくなるまで混ぜ合わせ、レーズンも加え混ぜてラップに包み、冷蔵庫で1時間以上休ませる。
    3. バットなどにコーンフレークを入れる。生地を40等分に切り分け、手で丸めてころがしてコーンフレークをまぶし、きゅっとにぎるようにして形を整える。
    4. 3を天板に並べ170℃に温めたオーブンで15~20分、薄く色づくまで焼く。取り出し、鉄板のまま冷ます。

    ※保存袋などに入れて密封させると(あれば乾燥剤を入れ)、10日くらい日持ちする。
    ※生地は冷凍可能

    クレープ

    画像: クレープ

    スポンジケーキの切れ端や、余った生クリーム、季節のフルーツなどを使って、お父さまがよくつくってくれたそう。テフロンのフライパンが家に導入されたばかりで、クレープをきれいに焼けるのがうれしく、何枚も何枚も親子で焼いたのは、いい思い出。

    材料(つくりやすい分量)

    • 〈生地〉
      • 薄力粉 75g
      • 卵 2個
      • グラニュー糖 40g
      • バター 15g
      • 牛乳 150ml
    • 生クリーム 適量
    • いちごなど好みの果物  適量
    • 市販のスポンジやカステラ 適量

    下準備
    牛乳を沸騰直前まで沸かし、粗熱を取る。バターを湯せんにかけて溶かす。または耐熱容器に入れてラップをし、15~20秒、レンジにかけて溶かしバターにする。

    つくり方

    1. ボウルに卵を割り入れてホイッパーで溶きほぐし、グラニュー糖を加えて混ぜる
    2. 粉をふるいながら加えて混ぜる。溶かしバターを加えて乳化するまでしっかりと混ぜる。牛乳を少しずつ加えて混ぜ合わせ、30分くらいねかせる。
    3. フライパンを熱してバター(分量外)を溶かし、2を全面にのばす(50mlのおたまやレードルでしっかり1杯程度)。生地を流し入れたらフライパンを回すようにして全面に生地をのばす(足りないところには少し足す)。中火弱で加熱し、表面の色が変わって空気が入り、ふちが少し浮いてきたらひっくり返して1~2分さらに加熱して、バットの上などにとる(焼き上がったら重ねていっても大丈夫です)。
    4. 用意した生クリームの分量の10%のグラニュー糖(分量外)を加えて八分立てに泡立てる。市販のスポンジやカステラに生クリームと好きな果物をのせて、上からクレープをかぶせて包み込むように端を折りたたみ、盛りつける。

    七草店主・前沢リカさんの「親から子へ、つながる思い、継がれる味」へ ⇒

    <撮影/柳原久子(https://water-fish.co.jp/) 取材・文/鈴木麻子>

    小堀紀代美(こぼり・きよみ)
    料理教室「LIKE LIKE KITCHEN」を主宰。著書に『2品でパスタ定食』(文化出版局)、『いちばん作りたいお菓子の本』(マイナビ)が。コボリ洋菓子店は1968年創業の宇都宮の有名洋菓子店( http://www.kobori-cake.com/ )。
    http://blog.livedoor.jp/likelikekitchen/

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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