• 日記には、「書く愉しみ」と「読み返す愉しみ」がありますが、『天然生活』2020年3月号の「日記の愉しみ」に登場した方々の日記づきあいは、実に人それぞれでした。その中から、親子で連用日記をつけている砺波志を美さんの日記づきあいについて、本誌に書ききれなかった部分を含めて紹介します。

    親子ではじめた、3年日記、5年日記。

    「毎日、同じことを繰り返すのが好きなんです」という砺波志を美さんは、八ヶ岳のふもとの町で、古い平屋に暮らしています。家族は夫、3人の娘、犬猫が1匹ずつ。賑やかな日々を記録したくて、2年前に日記をつけはじめました。

    「私はエッセイなども、淡々と繰り返される生活の出来事や、食べたものの記録を読むのが好きです。でも、自分で日記を書くと、ついついグダグダとした気持ちを整理したり、かっこつけた言葉を選んだりしてしまうから、読み返すときにつまらない(笑)。それでだんだん、日記から遠ざかってしまうことが過去にありました」

     砺波さんが書きたいのは純粋な“したこと日記”。たとえば「朝ごはんは塩むすび一個」などという記録に徹すれば、後から読み返したときに、なんでそうだったんだろう……と、そのときの状況を思い出したり、背景を思い浮かべたり、想像が膨らむことを愉しみたいのだそうです。

     そこで選んだのは、書店で見つけた「連用日記」でした。同じ日付の日記欄が1ページの中に数年分並んでいるもので、書き込むスペースが少ないため、日記を書くハードルが下がるし、機能的なつくりが淡々と書くのにぴったり。砺波さんは自分用に5年日記を買い、小学生の長女と次女に3年日記をプレゼントしました。

     連用日記のいいところは、続けているうちに同じ日の記録が積み重なっていくこと。今日の日記を書きつつ、去年やおととしに書いた日記が自然と目に入ってくるのも特徴です。

    「子どもたちは素直だから、私が『寝る前に日記書きなね~』と声かけると、『はーい』って書いています。だんだんと難しい年頃になっていくけれど、いつか日記が助けてくれることがあればいいなと思っています。たとえば、もしもいま、すごく嫌だと思いながらやっていることがあったとしても、去年の自分はこんなに楽しんでやっていたんだとか、感じるかもしれません」

     淡々と書いた文にも、無邪気に書いた文にも、読み返したときの思わぬ発見に、日記の面白さがあるのです。

    画像: 右が娘たちの3年日記、左が砺波さんの5年日記。砺波さんは声をかけるだけで、何を書いているかまではもちろんチェックしないが、たまに見せてくれるのだとか。「まさに今日の出来事だけが書いてあって、私の日記よりも、子どもたちの日記のほうが面白いです」

    右が娘たちの3年日記、左が砺波さんの5年日記。砺波さんは声をかけるだけで、何を書いているかまではもちろんチェックしないが、たまに見せてくれるのだとか。「まさに今日の出来事だけが書いてあって、私の日記よりも、子どもたちの日記のほうが面白いです」

    <撮影/砺波周平 取材・文/石川理恵 >

    砺波志を美(となみ・しをみ)
    長野県富士見町に、写真家の夫、娘3人、犬1匹、猫1匹と住んでいる。保育士を経て、現在は子育て中心の暮らし。家庭菜園や地域の活動にも取り組む毎日。

    石川理恵(いしかわ・りえ)
    著書に『身軽に暮らす』(技術評論社)、『リトルプレスをつくる』(グラフィック社)があるほか、雑誌や書籍で暮らしや生き方にまつわる記事を編集・執筆。 hiyocomame.jp/

    This article is a sponsored article by
    ''.