• ことわざは、昔から言い伝えられてきた生活の知恵。朝にまつわることわざには、一日の始まりの心構えがいろいろ。今回は、「朝に読むとためになる」ことわざを集めて、日本語教師の海野凪子さんに解説してもらいました。
    (『天然生活』2016年5月号掲載)

    読めば朝から三文の徳
    朝に読むとためになることわざ集

    良いうちから養生

    同じような意味のことわざに「予防は治療に勝る」などがあります。

    体が元気なうちから健康に気をつけておくのが何よりの健康法だということですが、元気なときは、そのありがたみがなかなかわからないものですよね。

    網無うて淵をのぞくな

    用意もしていないのに何かをしはじめてもよい結果は得られない、という意味です。

    網を持っていないのに淵をのぞいても魚はとれません。何事も準備万全で臨んだほうが、それなりの成果があるということですね。

    今日の一針(ひとはり)明日の十針
    ベンジャミン・フランクリンの自伝より

    今日なら一針縫うだけですむほころびも、明日までほうっておくと大きくなって十針も縫わなければならなくなります。少しの労を惜しむと、あとあと大変なことになるというたとえ。

    「いまは時間がないから後でしよう」と思っていても、そのことから離れるとすっかり忘れてしまうことがありますね。

    画像: 今日の一針(ひとはり)明日の十針 ベンジャミン・フランクリンの自伝より

    茶碗を投げれば綿でかかえよ

    相手が茶碗を投げてきたら、柔らかい綿で受け止めなさい、つまり、相手が強い態度で迫ってきても柔らかい態度で対応すれば相手の気持ちも静まるという意味のことわざです。

    「面子にかかわるから絶対にこちらからは謝らない」という人もいるかもしれませんが、けんかばかりして話し合いもできない状態では何も生まれません。

    画像: 茶碗を投げれば綿でかかえよ

    始め半分

    「始めが肝心」「始めが大事」ということわざもあります。何かをするときは最初の段取りが大切で、「始め」にうまくやっておかないと結果に大きな影響を与えるということです。

    「終わりよければすべてよし」のように、始まりはどうでも、結果さえよければいいのだという意味のことわざもありますが、最初につまずくと「幸先が悪い」と思うことはあります。初めからしっかりしておけば、のちのち困ることはないのは、当然のことですね。

    早合点の早忘れ

    同じ意味で、「早のみこみの早忘れ」ということわざがあります。

    「早のみこみ」には「理解が早い」といういい意味もあるのですが、この場合は、話をしっかり理解していないのにわかったつもりになっている人は忘れるのも早く、あまりあてにはできないということです。「早合点」も「早忘れ」も気をつけたいものです。

    こんにゃくは体の砂払い

    体によいとされる食べ物は昔からたくさんあります。こんにゃくも、そのひとつで、「胃のほうき」とも呼ばれます。

    こんにゃくは体の中の砂を取る、というのですが「砂」とは「老廃物」のこと。栄養をとることも大切ですが、いらないものを外に出すことも重要だということを昔の人は知っていたのですね。

    また、「梅はその日の難逃れ」ということわざもあります。この場合の「難」は病気のことでしょうか。日本では梅干しにして食べることが多いと思いますが、梅干しに含まれているクエン酸は、疲労回復や血液をサラサラにするなど、たくさんの効能があるそうです。昔の人の知恵はなかなか侮れません。

    画像: こんにゃくは体の砂払い

    七たびたずねて人を疑え

    「ここに置いていたあれ知らない?」と聞く人はよくいますね。

    この場合の「たずねる」は「人に聞く」ということではなく「自分で捜す」という意味です。つまり、物が見当たらないなら、まずは自分でじっくり捜してから人に聞け、ということです。

    画像: 七たびたずねて人を疑え

    思い立ったが吉日

    いまでも「結婚式は『大安』の日に」という人が多いと思います。昔は何か新しいことを始めるときや旅行の出発の日などは「吉日」を選んでいました。

    何かしようと思ったら日などは選ばず、すぐに行動したほうがよいという意味の有名なことわざです。



    <解説/海野凪子 イラスト/山元かえ>

    海野凪子(うみの・なぎこ)
    日本語教師。大阪生まれ、大阪在住。著書に、外国人ならではの日本語の使い方や疑問を綴った『日本人の知らない日本語』(メディアファクトリー)、『「国際人」はじめました』(大和書房)、『大和言葉つかいかた図鑑』(誠文堂新光社)など多数。

    山元かえ(やまもと・かえ)/イラスト
    1978年生鹿児島育ち 主に生活や子供に関するイラストを中心に活動。 2006年より型染めによる作品制作もしている。
    http://torerocamomillo.ciao.jp
    インスタグラム https://www.instagram.com/millokae/

    参考文献/『世界ことわざ辞典』北村孝一編(東京堂出版)、『いつでもどこでも使えることわざハンドブック』(池田書店)、『生きるヒント 日本のことわざ 世界のことわざ』北村孝一著(幻冬舎文庫)、『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』(あすとろ出版)、『総解説 知りたい言葉の由来を読む 豊かな知識を育む実用百科 新装版 世界の故事・名言・ことわざ』(自由国民社)

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです


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