• 絵本好きの編集者・長谷川未緒さんが、大人も子どもも楽しめる、季節に合わせた絵本を3冊セレクト。今回は、桜にまつわる絵本をご紹介いただきます。
    画像: お花見気分が味わえる、桜の絵本3冊|ずっと絵本と。

    春生まれのせいか、桜が好きです。絵本にも桜が描かれている作品が数多くあり、今回は気分がぱぁっと明るくなる3冊をご紹介します。

    『もういいかい』(中野真典・作 BL出版)

    画像: どこか懐かしさを感じる絵に引き込まれます

    どこか懐かしさを感じる絵に引き込まれます

    舞台はちいさな神社の境内。かくれんぼ遊びをしている女の子ふたりが主人公です。

    大きな桜の木の下で、目をつむった女の子が

    「もう、いいかい?」

    大きな声で聞きます。

    「まぁだだよ」

    答えた女の子は、隠れ場所を探しているのかと思いきや、手水舎でとんぼに気を取られています。

    「もう、いいかい?」

    「まぁだだよ」

    画像: たんぽぽの花畑にしゃがみこみ、お花摘み。暖かな日差しとのんびりした空気が伝わってきます

    たんぽぽの花畑にしゃがみこみ、お花摘み。暖かな日差しとのんびりした空気が伝わってきます

    女の子は好奇心いっぱい。いまこの瞬間、心を捉えたものに目を向けずにはいられません。

    今度は何に夢中になるんだろう。女の子の気まぐれでまっすぐなまなざしは、自分の気持ちをなおざりにせず、世界を楽しみたいと思わせてくれます。

    画像: 神社の境内って、だいたい大きな桜の木が植わっていますよね

    神社の境内って、だいたい大きな桜の木が植わっていますよね

    さてさて、このかくれんぼ遊びはどうなるのでしょう。こころが晴れ晴れするのびやかなラストに、ふっと笑顔がこぼれると思います。

    『がたごと がたごと』(内田麟太郎・文、西村繁男・絵 童心社)

    画像: 2冊目は、絵本界の大御所ふたりによる愉快な絵本。

    2冊目は、絵本界の大御所ふたりによる愉快な絵本。

    満開の桜の下、お客さんを大ぜい乗せた電車が、がたごと走ります。

    画像: この見開きの絵、よく覚えておいてくださいね

    この見開きの絵、よく覚えておいてくださいね

    がたごと走る電車は、町を抜け、野をこえ、山をこえ、その先に、ようやく到着。

    画像: おりてきたのは、なんとっ!?

    おりてきたのは、なんとっ!?

    ひとが乗ったはずなのに、どうして動物たちが降りてくるの? 

    そんな疑問を抱くのはナンセンス。だってナンセンスの神様(とわたしが勝手に思っている)内田麟太郎さんの絵本ですから。

    きっと西村繁男さんも、にやにやしながら絵を描いたにちがいありません。だってほら、乗ったひとたちと降りてきた動物たち、よくよく見てくださいよ。何か気がつくことありませんか。

    がたごと走る電車は、次はどんな乗客をのせて、どこを走るのでしょう。ページをめくる楽しさに時間を忘れてしまうので、急いでいるときは要注意です。

    『さくらもちのさくらこさん』(岡田よしたか・作 ブロンズ新社)

    画像: いまだかつてあっただろうか、さくらもちが主人公の絵本。

    いまだかつてあっただろうか、さくらもちが主人公の絵本。

    さくらもちのさくらこさんは、ごきげんななめ。

    「あ〜 つまんない つまんない。
     ぜーんぜん おもしろない。
     たのしいこと なーんも ないわ」

    作者の岡田よしたかさんは関西のご出身で、主人公・さくらこさんのセリフも関西弁、声に出して読みたくなるはず。

    画像: さくらもちの証、桜の葉っぱの服も脱いでしまうさくらこさん

    さくらもちの証、桜の葉っぱの服も脱いでしまうさくらこさん

    おやつ仲間のキャンディーさんやプリンちゃん、ラムネくんが
    「どうしたん?」
    と心配しても、さくらこさんはしらんかお。あそびの誘いにも
    「おもしろなーい、やりたなーい」

    外に出てみたものの、おにごっこにも、なわとびにも加わらず、「べっちょべちょのソフトクリーム、あわばっかりふいてるラムネ」なんて、おやつ仲間の悪口をいう始末。

    でもありますよね、こういうこと。何があったわけでもないのに、ご機嫌ななめで、ふてくされずにはいられない……。

    そんなとき、機嫌を直すきっかけになるのは、やっぱりやさしさなのでしょうか。

    画像: 見るに見かねた桜の木が、よいしょよいしょとさくらこさんのそばにやってきて……。

    見るに見かねた桜の木が、よいしょよいしょとさくらこさんのそばにやってきて……。

    桜の木があることをしてくれたおかげで、うれしくなったさくらこさん。桜の花が舞い散る中、踊ります。ラストはおやつ仲間もみんなやってきて、ダンス大会がはじまりました。

    満開の桜を見たら、踊りだしたくなる気持ちもわかります。今年はさくらこさんたちのように、みんなで集まってのお花見はむずかしそうですが、公園や神社など、近所で少しでも桜をたのしめるといいですね!


    画像: 『さくらもちのさくらこさん』(岡田よしたか・作 ブロンズ新社)

    長谷川未緒(はせがわ・みお)
    東京外国語大学卒。出版社で絵本の編集などを経て、フリーランスに。暮らしまわりの雑誌、書籍、児童書の編集・執筆などを手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。

    <撮影/神ノ川智早(プロフィール写真)>


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