• 東京郊外に生まれ、南信州に暮らすライター・玉木美企子の日々を綴る連載コラム。村での季節のしごとや、街で出会えたひとやできごと、ときどきでかける旅のことも気ままにお伝えします。今回は、庭先で養蜂しているニホンミツバチとの日々のお話を。

    春ですね。私が暮らす南信州も桜が咲き、菜の花が咲き、朝晩の冷え込みもだいぶやらわいできました。さまざまな植物の開花とともに、いよいよみつばちも活動を開始する季節です。

    プロフィール欄に「養蜂女子部の一面も」とあるとおり、私はこちらに暮らし始めてすぐ、庭先でみつばちを飼い始めました。

    もともとはちみつが大好きで、夫ともども養蜂に関心を抱いていた私にとって、この村に暮らそうという気持ちを後押ししてくれたものの一つこそ、この、蜂の存在だったとも言えます。

    画像: 2015年、はじめて蜜絞りを見せていただいたAさんの蜂の巣箱。天竜川を見下ろす絶好の場所に、よしずで適度に日差しを遮って置かれているその様子に、Aさんの蜂への愛情が伝わってきます

    2015年、はじめて蜜絞りを見せていただいたAさんの蜂の巣箱。天竜川を見下ろす絶好の場所に、よしずで適度に日差しを遮って置かれているその様子に、Aさんの蜂への愛情が伝わってきます

    そう、私が暮らす村は、とても養蜂が盛んなところです。「りんごとはちみつの村」と言われ(どこかで聞いたことがあるような……笑)、村を車で走るとあちこちの庭先や道の奥に蜂の巣箱が見られます。

    しかも、ここで多くのおじいさんたちが飼っているのは、一般的に養蜂されているセイヨウミツバチでなく、日本に古来から生息する「ニホンミツバチ」です。セイヨウミツバチが、はちみつを得るために改良され生まれた種であるのに対し、こちらはいわば、野生の蜂なのです。

    タイミングのよいことに、私たち家族が移住してきたころちょうど、現部長である佐々木陽子さんが「信州日本みつばちの会」事務局で働き始め、「いっしょに養蜂やらない?」と、声をかけてくれて。それぞれの友人も加わり、まず5人から「養蜂女子部」は始まりました。(陽子さんは現在、信州日本みつばちの会は退職しています)

    画像: 巣箱を開けると、美しい巣がぎっしり。そのなかに、黄金色のハチミツがたっぷりと詰まっていました

    巣箱を開けると、美しい巣がぎっしり。そのなかに、黄金色のハチミツがたっぷりと詰まっていました

    それにしてもなぜ、この村では一般的なセイヨウミツバチではなく、ニホンミツバチの養蜂が盛んなのでしょう。理由はいろいろあるようですが、おじいさんたちの様子を見ているとはちみつのために飼う、というよりも、蜂たちをただ眺めているのが楽しい、という方がほとんどのよう。

    むしろはちみつは「(絞るのが)面倒だから、食べていいよ」と言う方さえいらっしゃいます。

    私はもともとはちみつが大好きなので、「はちみついらん」とはならないと思いますが、蜂が可愛くて飼っている、というおじいさんたちの気持ちはこの4年間で少しずつ、わかってきたように思います。

    「社会的昆虫」といわれる蜂は、数万匹の集団であり、一つのいのちのかたまりのようでもあります。働き蜂は約1ヶ月の短い命のなかでも、役割が決まっていて、じつは花の蜜を求めて飛び回るのはお掃除など巣箱内での仕事を経た最後の1~2週間の間だけ。なんともはかない一生のなかで、私たちにいろいろな表情を見せてくれます。

    画像: 巣箱に向かって列をなしているニホンミツバチたち。何をしていると思いますか? なんと、巣のなかを涼しくするために、羽をふるわせて風を送っているんです!

    巣箱に向かって列をなしているニホンミツバチたち。何をしていると思いますか? なんと、巣のなかを涼しくするために、羽をふるわせて風を送っているんです!

    そしてちょうどこの春こそ、蜂たちにも私たちにも一番大切な季節。新しい女王蜂が生まれ、旧女王が古巣を譲って仲間と新たな場所に旅立つ、「分蜂」のシーズンです。

    まだまだ話は尽きませんので、次回も引き続き、蜂の話題でお付き合いくださいね。

    画像: 村暮らし、まちあるき。
第七回 ニホンミツバチと暮らす(1)|玉木美企子

    玉木美企子(たまき・みきこ)
    農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も

    <撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>


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