• 2018年の年末に、東京・等々力での営業を終了した、家具と雑貨のお店「巣巣(すす)」。店主の岩崎朋子さんは、新しい場所で、新しいお店を現在準備中です。その場所とは、富山県立山町。この連載は、岩崎さんのお引越しのいろいろ、物件探しから、お店オープンまでのさまざまな出会いや出来事の日々の記録です。今回は、移住を決心するきっかけとなった、富山の古民家のお話を。

    気になる古民家

    以前から、いろいろな偶然が重なるということがよくあったのですが、今回の移転にもそんな偶然の連なりがありました。

    富山滞在中のある初夏の日、護国神社の蚤の市で手にした整体院のチラシ、とても効きそうだったので、予約して整体を受けてみることにしました。

    施述の途中、話の流れで、富山では古い家の空き家がたくさんあって、勿体無いことになっているという話を聞きました。今ではもう造れないような、立派な材木を使った築100年を超える古民家が、引き継ぐ人がいなくて、解体されたり、手入れがされずそのまま朽ちてしまっていると。

    前後して、茨城のお米農家山崎さんの田植えのお手伝いに行った時に、たまたま車でご一緒した方が、「最近友達が富山で古民家の民泊をはじめたんだよ」と教えてくれました。

    もともと、使い込まれた年代物の木製品や建具などに強い魅力を感じる方だったので、富山の古民家にふつふつと興味が湧きました。自然の木でできた太い梁や木の柱を組んで作る、日本に古くから伝わる木造軸組建築。今の時代に自分では、予算的に到底建てることができない建築です。

    また、古材好きとしては、新築よりも年月が経った木の家の方が、より味わいが増していて愛着が持てそうです。

    何度か富山を訪れ、あちこち行き来して、次第に土地勘も出て来ました。新しい店を自然豊かな富山で始めるというのはいいかも。と思うようになりました。海も山もあり、空気も澄んで気持ち良く、空も広々しています。

    何より北アルプスの山々の美しさに惹かれました。古民家というのも気になります。

    2019年の秋の始まる頃、教えてもらった農家民泊(白雪ゲストハウス)に泊まりに行ってみることにしました。ホストは、数年前に家族で東京から立山町に移住してきた坂口さん一家。

    農業経験ゼロだったそうですが、坂口さんは移住を機に一年間農業学校で学び、取得した六反ほどの畑で有機農園を営んでいます。

    訪ねると、とても広い敷地に、大きく立派な母屋と土蔵などの納屋がいくつも建っています。

    お家は築50年ほどだそうですが、同じ場所に建っていた古民家の材木や建具が使われており、築年数以上の趣があります。もともと地域の大地主さんが住んでいた家は、太い梁や広い板間の廊下、三間続きの大広間があり、とにかく大きい。

    農園を散策すると、家の隣にある畑でいろいろな野菜が育てられ、ビニールハウスにはぶどうが沢山なっています。少し離れた高台の原っぱには、家畜のポニー親子もいます。

    泊めてもらった日の夕方には田んぼに沈む美しい夕陽が、翌日早朝には山からのぼる朝陽を眺めることができました。広々とした美しい空は、なんという贅沢なのでしょうか。

    画像: 田んぼに沈みつつある夕陽

    田んぼに沈みつつある夕陽

    画像: ポニーと朝の散策

    ポニーと朝の散策

    坂口さんは、以前に私の書いた本を図書館で見つけて読んでくださったことがあるそうで、さらには共通の友人がいることもわかり、ご縁になんだかびっくりでした。富山移住の先輩に、移住のことや、家探し、富山での暮らしなどについていろいろ聞くことができました。

    富山県ではIターンやUターンの移住の促進に力を入れています。それぞれの市町村役場では、移住の相談窓口や、web上で移者の経験談や、町の紹介、物件探しのための空き家バンクなども設けています。坂口さんも、立山町の空き家バンクで今のお家に出会ったそうです。

    どんな家や土地があるのだろうか? 9、10月はずっと前から計画していたスペインバスク旅行やバンドの西日本ツアーなどで旅のケジュールが立て込んで、富山に行くことができませんでした。

    移動の隙間の空いている時間に、富山の各市町村の空き家バンクに掲載されている物件を研究し、イメージを膨らませてみるという日々が始まりました。

    ※ ※ ※

    私の好きな富山のお店

    総曲輪のカフェ SIX OR THIRD COFFEE STAND

    美味しいコーヒーと味わい深い焼き菓子やドーナツが楽しめる。すっきりしたお店の雰囲気がとても落ちつく、買い物や図書館帰りによく立ち寄るお店です。

    SIX OR THIRD COFFEE STAND
    〒930-0083 富山市総曲輪2−7−12
    10:00-17:00 水曜定休

    画像: SIX OR THIRD COFFEEさんの美味しいカフェラテと焼き菓子

    SIX OR THIRD COFFEEさんの美味しいカフェラテと焼き菓子


    画像: 総曲輪のカフェ SIX OR THIRD COFFEE STAND

    巣巣 岩崎 朋子(いわさき・ともこ)
    世田谷の等々力で「巣巣」という家具と雑貨の店16年営み閉店。現在富山県立山町に移住して新しい店を準備中。バンド「草とten shoes」リーダー。著書に「小さな巣をつくるように暮らすこと」(SBクリエイティブ)。

    <撮影/馬場わかな(プロフィール写真)>


    This article is a sponsored article by
    ''.