(『天然生活』2013年6月号掲載)
いわし仕事 | 6月~
手早い調理で長く楽しむ 松田美智子
安くておいしい大衆魚として古くから親しまれてきた、いわし。漢字では鰯。魚偏に弱いと書くのは、読んで字のごとく、足が早く、傷みやすいからです。また、弱い魚ゆえ、群れをなす習性があります。どの国でも古くから、一度に大量に捕れたいわしを、保存するための調理法が工夫されました。
日本のいわし料理の代表がしょうゆ味の煮ものなら、洋の代表はオイルサーディン。にんにくやローリエなどの香辛料とともに、油の中でいわしを煮る料理です。
「オイルサーディンの缶詰がなんともおしゃれに感じた昔、塩をしたいわしを油の中でじっくり煮れば同じものができ上がるということを料理の本で知ったときには、うれしかったですね」
今回、松田さんが教えてくれたレシピは、オリーブオイルと水を半々に注ぎ、コトコト煮る方法です。しっとり柔らかく煮上がるため、大ぶりの真いわしにはおすすめです。
ただ、本来のオイルサーディンはオリーブオイルだけで加熱するもの。カリッと揚げたようなしっかりした食感が楽しめます。最近は、小さなヒシコイワシ(カタクチイワシの通称)がすっかり希少になってしまいましたが、もし、手に入ったら、オイルだけで煮る方法を試してみるとよいでしょう。
できたてのあつあつを大根おろしで食べるもよし、飽きたら皮をむいてざく切りにしたトマトを加えて煮込んでもおいしい。しそや青ねぎをたっぷり添えてどうぞ。また、豆板醤を加え、しょうゆと酢少々で味をととのえてごはんにのせれば、辛酸っぱさがあとをひく、個性派のいわし丼になります。
いわしは数十年周期で豊漁・不漁を繰り返す傾向のある魚だそうです。不漁期にあるいまは、ときに高級魚並みの値段になることもありますが、ぜひ、旬のいまこそ、新鮮な安いいわしを見つけて、存分に料理をしてみてください。
オイルサーディンのつくり方
鮮度のいいいわしの内臓を出して塩をし、身を締めてから、オリーブオイルと水の中でじっくり煮る、オイルサーディン。足の早いいわしのうま味をぎゅっと閉じ込めた保存食です。
材料(つくりやすい分量)
● 真いわし | 8尾 |
● 塩 | 1/4カップ |
● オリーブオイル | 1カップ |
● 水 | 1カップ |
● 黒粒こしょう | 大さじ1 |
● ローリエ | 2枚 |
● 赤とうがらし(種をのぞく) | 1本 |
つくり方
1 いわしは鮮度がよいほどうろこがあるので、包丁の刃をねかせて、こそげ取る。エラの下で頭を斜めに落とす。
2 腹に浅めに切り目を入れて、内臓を手で引き出すようにして取る。尾を落とし、3等分に切る。
3 塩をしたバットにいわしを並べ、上面にも塩をふる。塩が浸透して水が出るまで15~20分、そのままおく。
4 ひと切れずつ冷水でいわしを洗い、軽く水けを押さえ、直径20cmの厚手の鍋にオリーブオイル少量(分量外)をひいた上に並べる。
5 ひと並べにしたら、黒粒こしょう、ローリエ、赤とうがらしを入れ、オリーブオイルと水を注ぐ。水位は、ひたひたが目安。鍋の大きさなどにより、ひたひたにならない場合は、水を加えて調節する。ふたをして中火にかけ、沸いたら火を弱め、30~40分、揚げ煮にする。火を止め、ふたをしたまま粗熱を取る。保存は、密閉容器に移し、オリーブオイルで覆って空気に触れないようにすれば、1カ月は保存可能。
大根おろしと煮汁、オリーブオイルをかけていただく
<料理/松田美智子 撮影/川村 隆 取材・文/小松宏子>
松田美智子(まつだ・みちこ)
日本料理をベースにした家庭料理の教室を主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった四季の保存食づくりをベースに、現代の生活でも無理なくできる、季節の食の楽しみを提案。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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