• 庭では、植物だけでなく人も育つ―。ハーブ研究家のベニシアさんがつくる8つのガーデンには、人と自然を結ぶ幸せな “つながり” がありました。今回は、ベニシアさんに、庭との触れ合い、植物からの恵みについて、お話を伺います。
    (『天然生活』2014年8月号掲載)

    大地との「つながり」を感じる暮らし

    画像: 西側のスパニッシュ・ガーデンは、ゼラニウムの赤や小花の黄色を配した色鮮やかな庭。子どものころに1年間生活した、スペイン・バルセロナの風景を切り取って

    西側のスパニッシュ・ガーデンは、ゼラニウムの赤や小花の黄色を配した色鮮やかな庭。子どものころに1年間生活した、スペイン・バルセロナの風景を切り取って

    「植物は人間を元気にしてくれる特別な力をもっています。私も、障害のある娘のことで悩んだりと家族のことで苦労がありました。落ち込んだときは必ず庭仕事をするの。心のなかで花に話しかけていると平穏さが戻ってくるんです」というベニシアさん。

    離婚を経験した彼女は、前夫との間に3人のお子さん、いまのご主人の正さんとの間にできた息子さんを含め、4人の子育ての難しさを感じたことも。

    「どんな人でも悩みや問題があります。でもね、悲しんでばかりいては時間がもったいない。近くの公園を歩くのでもいい、小さなプランターで花を育てるのでもいい。美しい自然に触れることで救われます」

    植物との距離が縮まると、「土や植物に負担をかける化学肥料や除草剤は使えない」という気持ちになるのだそう。

    ベニシアさんはコンポストでつくった有機肥料を用い、虫よけにはハーブを近くに植え、自然に近いかたちで庭づくりをしています。

    さらに、「洗濯で使った水は川に流れていく」というように、暮らしと自然がつながっていることを実感している彼女。掃除や洗濯には無添加の手づくり洗剤を使用しています。

    床は、粉石けんにスペアミントや酢を混ぜた石けん水で、ふき掃除。化粧水にはバラを、顔用クリームにはラベンダーを入れて、植物の力を生活の随所に取り入れています。

    「夏は、乾燥させたびわの葉でお茶をよくつくります。びわは昔から、食中毒を予防し、夏風邪をひいたときにも用いられていたそう。日本の伝統的な生活の知恵は勉強になります」

    妊娠した際に体調管理のためハーブや植物の知識を身につけたベニシアさん。庭にたっぷりと植えられているハーブは時季がきたら収穫し、家の天井から吊るして乾燥させます。

    そのあとは種類ごとに缶に分けて一年分をストック。お茶にしたり、料理に使ったりして、楽しんでいます。

    画像: 夏にたっぷり採れるミントを使ってシロップをつくるベニシアさん。沸騰した湯にフレッシュハーブを入れると爽快な香りが部屋いっぱいに広がる

    夏にたっぷり採れるミントを使ってシロップをつくるベニシアさん。沸騰した湯にフレッシュハーブを入れると爽快な香りが部屋いっぱいに広がる

    「庭をもつことで、心も体もすこやかになります。お子さんがいる方は、一緒に庭づくりをしてみてください」とベニシアさん。

    彼女は幼少期に数年、イギリス領のジャージー島で自給自足の生活を送っていました。

    「野菜を収穫し、鶏に餌をやり、大自然のなかで過ごした毎日は、鮮明に心に刻まれています。自然との触れ合いは心を養うためにも大事な経験」

    そこで、初めての庭づくりは「ひとりで管理できるサイズにとどめておいて」とアドバイス。広げすぎると庭仕事が続きません。

    自分の庭では、太陽に輝く花びらや風で揺れる葉の動きを、頭をからっぽにして眺める―。

    そんな何気ない時間が、私たちには必要なのです。

    自宅のすぐ近くにある自家菜園

    画像: ベジタブルガーデンではトマトやきゅうり、レタス、ベリーのほか、有機肥料のもととなるコンフリーなども栽培。家族の食卓に足りない野菜は知人の有機農家さんから購入

    ベジタブルガーデンではトマトやきゅうり、レタス、ベリーのほか、有機肥料のもととなるコンフリーなども栽培。家族の食卓に足りない野菜は知人の有機農家さんから購入

    手づくりの化粧水やクリーム

    画像: お風呂場近くの棚には手づくりのコスメや薬用ハーブなどのボトルが並んでいる。ラベンダー、バラ、レモンバームなどの華やかな香りに心も満たされる

    お風呂場近くの棚には手づくりのコスメや薬用ハーブなどのボトルが並んでいる。ラベンダー、バラ、レモンバームなどの華やかな香りに心も満たされる

    手放せないガーデニング・ダイアリー

    画像: 一年分の庭仕事の内容が記されている園芸日誌。毎月、週ごとに、花やハーブを植える時季、手入れをするタイミングなどがメモされている

    一年分の庭仕事の内容が記されている園芸日誌。毎月、週ごとに、花やハーブを植える時季、手入れをするタイミングなどがメモされている

    ベニシアさんのガーデンマップ

    画像: 中心部分が、ご自宅。家を囲むようにして8のガーデンが配置されている。日当たりを考え、場所に合った花を植えていく

    中心部分が、ご自宅。家を囲むようにして8のガーデンが配置されている。日当たりを考え、場所に合った花を植えていく




    〈撮影/梶山 正 取材・文/梅崎奈津子 イラスト/にしごりるみ〉

    ベニシア・スタンリー・スミス
    ハーブ研究家。イギリスの貴族の家に生まれる。19歳のときに貴族社会に疑問をもち、インドなどへの旅を経て’71年に来日。’96年に大原にある築100年の古民家に移住する。自然と共生した生き方が注目を集め、著書も多数。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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