• 東京郊外に生まれ、南信州に暮らすライター・玉木美企子の日々を綴る連載コラム。村での季節のしごとや、街で出会えたひとやできごと、旅のことなど気ままにお伝えします。今回は、村の先輩たちに誘われて、はじめて小麦の種まきをした日 のお話を。

    秋晴れの空の下、
    数家族が集って小麦の種まきを

    遠くのアルプスから近くの里山へと、ゆっくりと幕が下りるように木々が色づいていく紅葉の美しい季節になってきました。

    寒がりの私の靴下は、すっかり分厚い毛糸の冬仕様に。

    それでも晴れた日の窓辺はぽかぽかとあたたかく、猫といっしょに寝転がれば「ああ、最高だなあ」と思わず声が出てしまうほど、すごしやすい秋の日の幸せを感じるこの頃です。

    画像1: 秋晴れの空の下、 数家族が集って小麦の種まきを

    さて、稲刈りはすっかり終わった伊那谷ですが、まだ畑には冬に向けて白菜や小松菜、大根などの冬野菜が育っていますし、これからのための種まきも残っていました。

    それは、秋蒔き小麦

    日ごろお世話になっている村の先輩のSさんにお声がけいただき、今年はわが家もはじめて、小麦づくりに挑戦することになりました。

    画像2: 秋晴れの空の下、 数家族が集って小麦の種まきを

    10日ほど前に鶏ふんの肥料をすき込んでおいた畑にこの日、集まったのは、Sさんをはじめいずれもベテランぞろい。

    私はみなさんの指示に従い、見よう見まねで種をまきます。

    今回播種する品種は、パン用小麦の原種にあたる古代穀物「スペルト小麦」と、このあたりの気候や土に合うという「南部小麦」が中心。

    あらかじめ畑に目印の線を引いておき、これにそって麦を薄くまいたら、土をそっと被せていきます。

    画像3: 秋晴れの空の下、 数家族が集って小麦の種まきを

    サラサラとした手触りの麦を、そっと地面に落として……。

    最初は慎重にやっていたのに、つい楽しくて大胆になってしまいます。

    それでも先輩たちは「みんなで3年かけて『おいしくて、美しい畑』にしましょうね!」と、大らかに見守ってくださる。何よりありがたいことです。

    おおよその種を蒔き終わり、最後はライ麦を。

    穂についたまま保管されていたものを一つずつ外して、余ったスペースに蒔いておくことにしました。

    画像: ライ麦はヒゲが長いのが特徴

    ライ麦はヒゲが長いのが特徴

    約3時間ほどのこの作業、一人で行えばきっとつらい気持ちになりますが、みなさんと取り組むとわきあいあい、楽しい時間に変わるから不思議です。

    作業後のお茶の時間は信州ならでは、大学芋にりんご、こんにゃくの煮物と、甘いものからしょっぱいものまで豪華なお茶うけが並びました。

    私の夢は、ここで育てた小麦で乾麺をつくる こと。

    小麦を持ち込めば少量からでも乾麺に加工してくださる場所があると知り、がぜん期待が高まっています。

    麺類が大好きなわが家の子どもたちに、みんなで手塩にかけた小麦のうどんが出せたら……。なんと豊かなことでしょうか。

    ちょっと厚く蒔きすぎたかな、と気がかりなのですが、あとは種の力を信じ、見守っていこうと思います。



    画像4: 秋晴れの空の下、 数家族が集って小麦の種まきを

    玉木美企子(たまき・みきこ)
    農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も

    <撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>



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