• 必要なものが適量あって、迷うことなくさっと出し入れできる暮らしは快適。 「忙しくて片づかない。片づいていないから、よけい忙しくなる」という負の連鎖 から抜け出すコツを、生活研究家・消費生活アドバイザーの阿部絢子さんに伺いました。
    (『天然生活』2017年1月号掲載)

    暮らしの体質をチェック

    家じゅうをすっきり片づけたいけれど、毎日忙しくて……そんなふうに思っている方、多いのでは?

    でも、往々にして「片づいていないから、よけい忙しくなる」と阿部さんはいいます。

    一度、立ち止まって考え、ごちゃごちゃからの脱却を

    ごちゃごちゃスパイラル

    画像1: 一度、立ち止まって考え、ごちゃごちゃからの脱却を

    すっきりサイクル

    画像2: 一度、立ち止まって考え、ごちゃごちゃからの脱却を

    「仕事や子育てで忙しい時期は、物も増えやすいもの。そんな時期に “とりあえず” と、物を適当に置くのは要注意です。 “とりあえず” 置くと、収納がどんどんあいまいになり、何がどこにあるのかわからなくなり、物捜しに時間を取られ、さらに忙しくなる。これぞ、恐るべき負のループ=ごちゃごちゃスパイラル です」

    このスパイラルから抜け出すには、いま、自分にとって何が不快で、不便なのか、立ち止まって考える必要がある、と阿部さん。

    「けっして人のまねではなく、背伸びするのでもなく、自分にとっての快適、わが家に合った片づけでいいのです。等身大の快適な暮らし方を意識し、不便を感じている小さな場所から片づけはじめれば、上向きの “すっきりサイクル” に少しずつ変化していきます」

    物が適量あって、すべてを活用する暮らしは、気分がいいもの。

    そんな “すっきりサイクル” をキープするには?

    といっても、人によって “すっきり” の度合いは違うもの。

    「『物が多くても、私はこの暮らしが心地いい』と思うなら、ムリに捨てる必要はないんです。大切なのは、周りとの比較ではなく、あくまでも自分がどう暮らしたいか、です」

    暮らしの体質チェックシート

    3つ以上チェックがついたら、増量体質の可能性大。

    一度、暮らしの減量を考えてみてもいいかもしれません。

     無料のものに飛びつきやすい

     「もったいない」が口癖

     物はだれかが片づけてくれると思っている

     「便利かも」と思うと、つい買ってしまう

     小さなものの指定席を決められない

     新しいもの好き

     人にほめられると買ってしまう

     コレクションしているものがある

     物を片づける前に、収納グッズを買ってしまう

     優先順位を決められない

     動くと、すぐに疲れる

     きっかけがないと、新しいことを始められない

     1泊2日の旅行でも荷物が多い

     体形が元どおりになると思い込んでいる

    物を増やさないためには決断力を磨く練習を

    とはいえ、物が多いことで暮らしにくさやストレスを感じているなら、やはり減量が必要。

    「減量の前段階として、まずは自分が望む暮らしをイメージしてみましょう。だれかに追い込まれるように物を減らしても、納得がいかないまま片づけても、リバウンドの可能性大 ですから」

    物が増えがちで困っている人の特徴としては、 “無料” “便利” “もったいない” など そのときどきの気持ちに左右されやすい受け身の行動が多い、などが挙げられるそう(上の「暮らしの体質チェックシート」は自分の弱点チェックでもあるので、いま一度、ご参照を)。

    余分なものを持ち込まず、わが家なりの適量をキープしたいなら、「いまは家にレジ袋がたくさんあるから、もういらない」「使う化粧品を決めているから、違うブランドのサンプルはいらない」など暮らしの場面場面で即断即決する必要がある、と阿部さんはいいます。

    「いる、いらない、を決断するには、慣れや経験も必要。一朝一夕には難しくても、日々、小さな決断の練習をすれば、だんだん早く決められるようになってきます」

    片づけた=ゴールではなく、仕組みづくりの第一歩

    また、「片づけはするけれど、その状態が続かなくて、気づけば元のごちゃごちゃに逆戻り。私は片づけ下手なんでしょうか?」という人も多いのだとか。

    それに対して阿部さんは、 “一度、片づけたらゴール” と思うところに落とし穴がある、といいます。

    「どんなに物が多い家でも、がんばって片づければ、とりあえずはきれいになります。が、ルールを決めないまま、外に出ているものを収納に詰め込むだけでは、片づいた状態をキープするのはムリ。肝心なのは、どんなに忙しくても物が当たり前に指定席に戻る仕組みづくり。片づけはゴールではなく、仕組みづくりの第一歩であり、スタートなのです」

    さらに、自分は片づけが下手、なんて思わなくてよい、とも。

    「片づけ、といえば、きちんと、きれいに、そろえて、が鉄則で、本や雑誌には収納が得意な人の実例ばかりが紹介されていますが、そういう例と自分の暮らしとを比べなくてもよいのです。自分たちが出し入れしやすければ、やり方は自己流で十分。できないことはやらない。物が最低限、収まるところに収まり、あふれず、散らかっていなければ、それでよし。自分が楽で快適、と思える状態を大切にしてください」




    〈監修/阿部絢子 取材・文/宇野津暢子 イラスト・描き文字/古谷充子〉

    阿部絢子(あべ・あやこ)
    生活研究家・消費生活アドバイザー。薬剤師として洗剤メーカーに勤務後、独立。合理的かつエコな家事や整理収納など、生活の提案を行う。世界各国にホームステイし、その国の暮らしぶりを見つめる研究も続けている。著書に『老親の家を片づける ついでにわが家も片づける』『老いのシンプル節約生活』(ともに大和書房)、『ひとり暮らしのシンプル家事』(海竜社)など多数。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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