• 日本には心惹かれる器をつくる作家さんが大勢います。作家と私たちの暮らしをそっとつないでくれるのが器屋さんです。元は古い米穀店だったという風情ある建物に、温かみのある手仕事の道具が揃う「手仕事雑貨屋 風土(ふうど)」は、そんな器屋のひとつ。店主の浦田さんに、お薦めの作家をこっそり教えてもらいました。

    自然を慈しみたくなる、温かみあふれる器

    京都の北大路通り沿いに佇む「手仕事雑貨屋 風土(ふうど)」は、今から20年ほど前にオープン。当時、築90年を超えていた米穀店を、最低限の手直しをするだけでつくったというお店は、歴史を感じる情緒あふれる佇まいです。

    店主の浦田由美子さんは、フェルト作家。店を始める前は、陶器を販売するお店で働いていたことがあり、そのとき知り合ったつくり手の方々の作品や、自身のフェルト作品を扱うお店が持てたらいいなぁと漠然と考えていたのだそう。そして、同じく手仕事が好きだった夫と一緒にお店を始めることになりました。

    画像: 天井近くには、古道具屋さんで手に入れたという大きなザルが。「壁の空いたスペースになんとなしに飾ってみたんですが、1999年の開店以来、ずっとかけっぱなしです(笑)」と浦田さん

    天井近くには、古道具屋さんで手に入れたという大きなザルが。「壁の空いたスペースになんとなしに飾ってみたんですが、1999年の開店以来、ずっとかけっぱなしです(笑)」と浦田さん

    画像: 釜定工房の南部鉄器も販売。釜定工房の種類豊富な鉄瓶のなかからこの2つを選び、ずっと同じものを扱っているそう

    釜定工房の南部鉄器も販売。釜定工房の種類豊富な鉄瓶のなかからこの2つを選び、ずっと同じものを扱っているそう

    画像: 北大路通りに面するお店は、小豆色の壁が目印

    北大路通りに面するお店は、小豆色の壁が目印

    画像: 企画展の際にギャラリースペースとなる部屋。庭が見え、ほっこりと安らげます

    企画展の際にギャラリースペースとなる部屋。庭が見え、ほっこりと安らげます

    「自然からもらった恵みに人の知恵と技術が加えられた、温かみを感じる道具が中心です。ひとりでコツコツと物づくりしているつくり手の作品をご紹介できる場所になればというふうに思って店を始めました」

    そんな素朴な想いで集められた手仕事の道具は、陶器からガラス、金属、木工、布ものまで幅広く揃い、どれも温かみを感じるものばかり。浦田さんのフェルト作品も並べられ、動物をモチーフにしたものなど、とても愛くるしくて癒されます。

    経験で磨かれた感覚を頼りに

    そんな浦田さんに、いち押しの作家さんのアイテムをご紹介いただきました。
    まずは、滋賀県大津市で作陶する山極めぐみ (やまぎわめぐみ)さんの塩壺です。

    画像: やわらかな佇まいが素敵な「焼締塩壺」(高さ9 cm、直径8cmほど)。小さいサイズもあり

    やわらかな佇まいが素敵な「焼締塩壺」(高さ9 cm、直径8cmほど)。小さいサイズもあり

    「山極さんは渋めの粉引きや焼締の器を中心につくっていらして、窯の中に炭を入れて焼く炭化焼成をよくやられています。韓国に何度も訪問されていて、向こうで個展をやったこともありますね。この塩壺は渋い表情がとてもよくて、おいしいお塩を入れたくなります。私も愛用していますが、使い勝手がとてもいいんですよ。

    山極さんとは長い付き合いですが、自分が納得のいくものをコツコツと頑張ってつくっていらっしゃる方。最近では、薪を自分でくべて焼く薪窯にも挑戦しようとされていて、そちらも楽しみです」

    お次は、岡山県総社市で作陶されている正島克哉(しょうじまかつや)さんの器です。

    画像: 直火とオーブン対応の「平パン」は小・中・大・特大の4サイズ

    直火とオーブン対応の「平パン」は小・中・大・特大の4サイズ

    「正島さんはすごく人気のある方。火にかけられるこの『平パン』や『片手土鍋』は、サイズがいくつかあり、買い足される方が多いですね。実際使ってみると、お料理の幅がすごく広がりますし、買いやすいお値段というのも人気の理由だと思います。オーブンにも入れられ、野菜のグリルやグラタンなどを調理するのにもってこいですね。

    正島さんも奥様もとても料理上手で、直火対応の器を自身で使って試しながら、次の作品を考えていらっしゃって。個展のたびに小冊子のようなレシピ帖を手づくりしてくださるので、器を購入した方に配布しています。こんな料理までつくれるのかとヒントがもらえて、それで器を買っていく人もいると思います」

    最後は、岐阜県飛騨市で制作されているkino workshop(キノワークショップ)のお皿です。

    画像: 美しいフォルムが目を引く「丸皿」は、使い勝手も抜群。上がウォールナット、下が桜

    美しいフォルムが目を引く「丸皿」は、使い勝手も抜群。上がウォールナット、下が桜

    「片岡清英さん、紀子さんご夫婦によるkino workshopは、大きな家具からお皿、ブローチまで、幅広い木のアイテムをつくられています。

    おふたりに初めて会ったのは、たしか松本のクラフトフェアでした。そこで作品を見て、とても惹かれて。おふたりとも本当にきちっとした真面目なお人柄で、長く使えるものをという想いで作品づくりをされているのですが、実際とても質の高いものです。夫婦仲がとてもよく、猫3匹と暮らしながら、生活を充実させつつともに作品づくりに励む、そんな暮らしぶりにも憧れますね」

    浦田さんはフェルト作家としてクラフトフェアなどに自ら出展する機会も多く、会場を巡っていいなと思う作家さんがいれば、その場で声をかけてお話しすることもあるのだそう。そこで浦田さんに、作家さんを選ぶ際に大切にされていることを聞いてみました。

    「いま取扱いのある作家さんは、長いお付き合いの方ばかりなんですが、店を始めた当初から、『この人のものがすごく好き』とか『この器をどうしても使いたい』という直感的なものを大事にしていましたね。私と夫がいいなと思う人にお願いしている、そのやり方でここまでずっと来ている感じがします」

    直感的に選んだというものの、「風土」の取り扱い作家さんを見渡すと、今回紹介した正島克哉さんをはじめ、注目を集めている作家さんがずらり。浦田さんの直感力の確かさを物語っているようです。

    多くの作家さんと出会って作品に触れ、物づくりのプロとしても手仕事に携わってきたからこそ磨かれた目。豊かな感性で選ばれた作品を、ぜひ手にとってみてください。

    ※紹介した商品は、お店に在庫がなくなっている場合もございますので、ご了承ください。

    <撮影/浦田由美子 取材・文/諸根文奈>

    手仕事雑貨屋 風土(ふうど)
    075-468-8335
    11:00~18:00
    不定休 ※営業日はInstagramにてお知らせしています。
    京都府京都市北区紫野西御所田町34-2
    バス:市バス1・M1・北1・北8・9・12・37・67・101・102・204・205・206系統 北大路堀川バス停下車すぐ
    地下鉄:烏丸線「北大路」駅から徒歩12分
    http://www2n.biglobe.ne.jp/~urata/index.html
    https://www.instagram.com/fudo.urata/?utm_source=ig_profile_share&igshid=1tkiou2z85h9f
    ◆企画展「限りの月を愉しむ」を開催予定(2020年12月10日~20日)
    ◆正島克哉展を開催予定(2021年2月18日~24日)


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