• 天然素材にこだわった、安心でおいしいパン屋さんをご紹介。シンプルでいて深みのある味わいと絶妙な食感を持つフランスパンが評判のフランスパン専門店「SONKA(ソンカ)」。2年間という短い修業期間を経て店を構えた店主、村山さんに、その経緯についてもじっくりお話を聞きました。

    逆転の発想で、新しい道を切り開く

    店主、村山大輔さんがつくる極上フランスパンが人気を集めるフランスパン専門店「SONKA(ソンカ)」。定番の「フランスパン」、雑穀入りの「雑穀フランス」のほかに、フランスパン生地でできた具材入りパンなどが6種類、それに加えてフランスパンでつくるサンドイッチが8種類ほどと、なんとも潔いラインアップです。

    さっそく看板商品の「フランスパン」をいただいてみると、クラスト(皮)はバリッと香ばしく、クラム(中身)はもっちりとしていて、シンプルですっきりした味ながら深みがあり、まさに理想的なフランスパン。そんな味わいから、長く修業を積んだ方かと思ったのですが、予想とは異なる経歴でした。

    「学生時代からずっと音楽活動をしていて、会社員になっても続けてました。でも音楽ではお金にならなくて。それでも表現することが好きで、表現で身を立てたいという気持ちが強かった。それで考え抜いて出した答えが、パン屋になってパンで自分を表現することだったんです」

    画像: 毎日8種類ほど用意されているサンドイッチは、注文が入ってからつくります。定番人気は「生ハムとクリームチーズ」

    毎日8種類ほど用意されているサンドイッチは、注文が入ってからつくります。定番人気は「生ハムとクリームチーズ」

    画像: 2014年にオープンするとたちまちパン好きの間で評判に。奥様とふたりでお店を切り盛りされています

    2014年にオープンするとたちまちパン好きの間で評判に。奥様とふたりでお店を切り盛りされています

    画像: こちらが自慢のフランスパン。250円という買いやすい値段

    こちらが自慢のフランスパン。250円という買いやすい値段

    画像: 店内はジャズが流れる心地いい空間。大きなスピーカーが目を引きます

    店内はジャズが流れる心地いい空間。大きなスピーカーが目を引きます

    飲食店で働いた経験はゼロで、しかもパンが特別好きというわけではなかったという村山さん。それでもパン屋を選んだのは、何の気なしに寄った通勤途中にあるパン屋さんのパンがおいしかったことも一因ですが、消去法で考えたときにパン屋しか残らなかったからだそう。そうして、32歳で会社を辞めて2年間パン屋で修業した後、ほどなくして「ソンカ」をオープンさせました。

    修業したのは、通勤途中にあったという件のお店。レストラン併設のベーカリーで、フランスパン部門に配属されたことから、朝から晩までフランスパンだけを焼き続ける日々だったそう。フランスパンだけしか学べないことに不安が募りましたが、一年ほどが過ぎた頃、発想の転換ができたといいます。

    「当時通っていたラーメン屋さんからヒントを得たんです。その店はメニューが中華そばだけなんですけど、その中華そばがすごくおいしくて店も魅力的で、こういう店をやりたいなって。そしたら、いま自分がやってるフランスパンは、ものすごい武器になるんじゃないかって思ったんです。フランスパンをしっかり身につけて、それだけを出し続ければ、このラーメン屋さんのようにやっていけるかもしれないって」

    当時の趣味はパン屋さん巡りで、名店のパンを味わい尽くし、理想のフランスパンをイメージしていた村山さん。一方、修業先のフランスパンは、白っぽいふかふかとしたもので、それはそれでおいしかったものの、自分の店を持ったときに出したいパンとはまったく違うものでした。

    仕事が終わると、レシピ本を見ながら実験を繰り返す日々。一歩一歩、自分の理想のパンに近づくよう試行錯誤しながらつくりあげたのが、いまの「ソンカ」のフランスパンです。

    画像: 五日市街道沿いに佇む。可愛らしいピンクの壁が目印です

    五日市街道沿いに佇む。可愛らしいピンクの壁が目印です

    画像: 木彫りのフランスパンがお出迎え。店のシンボルにと、知り合いの木彫り作家さんにお願いしてつくってもらったもの

    木彫りのフランスパンがお出迎え。店のシンボルにと、知り合いの木彫り作家さんにお願いしてつくってもらったもの

    パンに使うのは国産小麦のみ。それも、あえて北海道の製粉会社、江別製粉の「10P09」という粉だけを使っているのだとか。

    「国産だからというのは実は気に留めてなくて、もともとフランス産かカナダ産の小麦にしようと思ってたんです。でも、試作しているうちに江別製粉のとある粉が自分の目指すパンに合っているとわかって。そんなとき、自分の窮地を救ってくれた人がすすめてくれたのが、同じ江別製粉の『10P09』という粉でした」

    画像: 店のパンはすべて「10P09」だけでつくると決めているそう

    店のパンはすべて「10P09」だけでつくると決めているそう

    画像: フランスパン生地でつくる「フランス食パン」も人気の品。準強力粉では膨みが足りないが、発酵種を使うことでこれを克服。もちっとした食感で、粉の味がストレートに感じられます

    フランスパン生地でつくる「フランス食パン」も人気の品。準強力粉では膨みが足りないが、発酵種を使うことでこれを克服。もちっとした食感で、粉の味がストレートに感じられます

    店を始めるとき、食材の業者探しで苦労したという村山さん。修業期間が短いうえに、フランスパン専門店という特殊な形態という理由で、相手にしてもらえなかったそう。何軒も断られ困り果てたときに見つけたのが、自宅から歩いて5分ほどの場所、小学校時代の通学路でもあった所にある卸の会社でした。

    「初めて話をまともに聞いてもらえてすごくうれしくて。しかも、いろいろアドバイスをしてくれたんです。最後のほうには『フランスパンだけなんてやめとけ』って説教にはなっちゃったんですが、感動しすぎていてあまり話を聞いてませんでした(笑)。後日契約を決めるときに、同じ江別製粉でも『10P09』には添加物は入ってないよと教えてくれて。この粉しか使わないのは、出会いが自分にとっては大事だったから」

    画像: 「フランス食パン」がまだなかった頃、高齢のお客さんから「私でも食べられる柔らかいパンをつくってほしい」とリクエストされて考案した「オレンジフランス」。しっとり柔らかな生地に、爽やかな伊予柑ピール入り

    「フランス食パン」がまだなかった頃、高齢のお客さんから「私でも食べられる柔らかいパンをつくってほしい」とリクエストされて考案した「オレンジフランス」。しっとり柔らかな生地に、爽やかな伊予柑ピール入り

    パンを学び始めて店を構えるまで、2年半ほどという短い期間ではあったものの、逆転の発想で新たな方法を見つけだし、理想のパンを目指して研究を重ね、人との出会いを通して難局を乗り切ってと、さまざまな道筋を辿りながら進んだ、濃密な時間が流れていました。

    「自分の表現を認められたいという気持ちでパン屋になったけれど、パンは子どもからお年寄りまで好きな人が幅広いから、そういう意味でよかったなと思います。いろんな人に好かれるものをやりたいっていう想いはあるんですよね」

    店から歩いて5分ほどの場所に善福寺川緑地があり、購入したパンやサンドイッチをそこで楽しまれている方も多いのだとか。暖かくなったらお散歩がてら出掛けてみてはいかがでしょうか。

    画像: 逆転の発想で、新しい道を切り開く

    <撮影/山田耕司 取材・文/諸根文奈>

    SONKA(ソンカ)
    電話番号(非掲載)
    10:00~14:00(売り切れ次第閉店)
    ※現在はイートインは休止中
    火・日休み
    東京都杉並区成田東2-33-9
    最寄り駅:東京メトロ丸ノ内線「南阿佐ケ谷」「新高円寺」
    http://www.sonka.tokyo/


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