• 年齢を少し重ねたからこそできる、人に気遣いをさせない大人の気配り。
    マニュアルのひとつ上をゆくこまやかな気配りについて、フリーアナウンサーとして活躍する堤信子さんに教えていただきました。
    (『天然生活』2018年4月号掲載)

    “大人の気配り”って、どんなこと?

    かつて、「はなまるマーケット」などのテレビ番組にレギュラー出演し、現在、幾つかの大学で、学生たちの伝える力、聞く力の向上に努めている気配りのプロ、堤信子さん。“大人の気配り”って、どんなことでしょう?

    「そうですね。気配りは、相手への思いやりでもあるけれど、実は自分のためという気がするんです。気配りができることは、なにより私にとって喜ばしいことです」。

    “気配り”と“大人の気配り”は違うものでしょうか?

     「そうですね。私自身、ずっと気を配ってきたつもりでしたが、若いころは常に必死で、全体をみる余裕がありませんでした。ですが、いま、年を重ねることで、周りをみる余裕が生まれてきたように思います。状況に応じて変化球も投げられるし、相手の心配を先まわりして助け船を出すこともできる。それが大人の気配り、でしょうか」

    また、ギブ・アンド・テイクではなく、恩送り、という考え方が好き、と堤さん。

    「人に与えたことばかり覚えていて、もらっていないと考えるのは、精神衛生上よくない気がして。ギブはさらっと忘れ、テイクは覚えておく。見返りがなくても、恩は送られていくもの。そんなふうに思っています」。

    それではさっそく、シーン別の気配りアイデアを伺います。

    招くとき、招かれたとき

    香りは家の第一印象

    画像: 香りは家の第一印象

    お客さまを家に招待するとき、ぜひとも気をつけたいのは、家の香り。慣れると家族は気づかないけれど、お客さまは意外に敏感なもの。

    「私は、来客30分前に換気し、エアフレッシュナーや消臭スプレーを玄関やリビングに、ひと吹きしておきます。夕方以降のお客さまなら、玄関付近で消臭効果もあるキャンドルを焚くのもおすすめですよ」

    お出ししたお菓子は、自分も食べる

    お客さまに出すお菓子は、お客さまの立場に立って考えると、最初に手をつけるのは、はばかられるもの。

    「そんなときは、タイミングを見計らって、私が最初に食べるようにします。そうすると、皆さんも自然に食べやすい雰囲気になるんですね」

    手土産は自分も好きなものを

    手土産は相手の好みに合わせるのが前提ですが、自分も好きなものを選ぶこと。

    「渡すときに『私も大好きなので、ぜひ食べてもらいたくて』など、ひと言添えるのもさりげない気遣いです」

    親しい人の場合は、何を持っていくか事前に伝えても。

    会話

    ドジ話8割、成功話2割

    成功話や自慢話より、ちょっとドジな話のほうが、相手に親近感を与え、双方の距離もぐっと縮まるもの。

    「電車を乗り過ごした話や、うっかり忘れものをした話など、くすっと笑える程度の“ドジ話ストック”を自分の心の引き出しに入れておきましょう」

    割合は、ドジ話8割、成功話2割くらい。成功話はスパイス程度、控え目に。

    話していない人に会話を振る

    人が複数人集まると、たくさん話す人は、おのずと決まってくるもの。だからこそ、発言の少ない人を意識しながら会話を進めるのが、大人らしい気配り。

    「タイミングを見計らって、『○○さんはどうしていらっしゃるの?』など、発言の少ない人に、それとなく話を振ってみましょう。全員が参加しているほうが、全体の雰囲気もよくなります」

    相手の話す速度に合わせる

    話すスピードは、人によってずいぶん違うもの。「速く話す人とは速めに、ゆっくり話す人とはゆっくりめに。相手のスピードに合わせて話すのが、会話が弾むコツです」。

    そんなの無理、という人も多そうですが……。「でしたら、大事なポイントと語尾だけでも、ゆっくり、はっきり発語してみてください。それだけで印象がよくなります」

    相づちを打つ

    堤さんが大学の授業や講演会などでよく話すのは「話し方と同じくらい、聞き方が大事」ということ。とくに大事なのは相づちだといいます。

    「うなずきや相づちがあると、会話にリズムが生まれます。また、自分の真意が相手に伝わっていると実感でき、心の距離も縮まります。会話中は少し意識して相づちを打ってみましょう」

    ありがとうは、先手必勝

    画像: ありがとうは、先手必勝

    「ありがとう」といわれてイヤな人はほとんどいないから、堤さんは、できるだけ先に「ありがとう」といいます。

    「とくに夫婦や家族など関係が近くなるほど、ありがとうの出し惜しみをしがち。近い人にこそ、ていねいに感謝を伝えることで、家の雰囲気もよくなります」

    “感謝”の意を込めて、福岡の感謝コーヒー&お茶をあげることも。

    話のお土産を持っていく

    「お土産は物に限りません」と堤さん。たとえば、ホットケーキ好きの友人に会うときに、近くにおいしいお店ができたよ、と伝えるのも、そのあとの会話が弾む話のお土産。

    「相手の興味がありそうなトピックを、事前に調べておくといいですね。○○さんがあなたのことをほめてたわよ、など、うれしいウワサのお土産もおすすめです」

    贈りもの

    切手もひとつの贈りもの

    画像: 切手もひとつの贈りもの

    手紙を送るとき、犬好きの友人には犬の切手、電車好きのお子さんがいる方には電車の切手など、相手を思って切手選びをするという堤さん。

    「私自身、いただいた封筒に美しい切手が貼られていると、とてもうれしい。切手は、郵便局に行くついでなどに、こまめに買ってストック。ジャンル別に分けた切手を眺めるのも楽しいんです」

    手紙には、小さなおまけを

    画像: 手紙には、小さなおまけを

    封筒に手紙を入れるときは、小さなおまけも一緒に忍ばせて。

    「かしこまった手紙は別ですが、親しい方への手紙には、ちょっとしたサプライズのつもりで、おいしい紅茶のティーバッグなどを同封します。飾り穴をあけられるパンチを使って台紙をつくれば、ティーバッグも、おしゃれな装いに」

    重さで切手の料金不足にならないように注意。

    おすそわけにもリボンをかけて

    画像: おすそわけにもリボンをかけて

    おいしいお菓子をいただいたら、だれかとその喜びを分かち合いたい。箱入りのお菓子をいただいたときなど、堤さんはひと工夫して、友人たちにおすそわけをするのだとか。

    「包んである包装紙とリボンを何等分かにして、お菓子を包み、小さなギフトをつくります。包装紙に記載されている電話番号など、お店情報も一緒におすそわけ」

    日持ちする手土産を買っておく

    画像: 日持ちする手土産を買っておく

    急なお誘いの場合や、人と会う約束をしているのに手土産を買う時間がないとき。そんなときのために、日持ちする手土産をいつも用意している堤さん。

    「ワインなどのお酒類は日持ちするのでダースで買い、ワインを入れる袋も一緒にストックしています。お酒が苦手な方やお子さんのいるご家庭には、コーヒーやジュースなどを」

    その他

    手紙はすき間時間に

    画像: 手紙はすき間時間に

    堤さんがバッグにいつも忍ばせているのが“サンキューセット”。それは、お礼状を書くためのはがきや便箋、封筒、切手などをひとまとめにしたもの。

    「人との待ち合わせ時間に少し早く着いたときなどに、簡潔に、でも気持ちを込めて書きます。書く相手が決まっていれば、封筒にあらかじめ住所を書き、切手を貼っておくことも」

    懐紙はぽち袋にも、メモ帳にも

    画像: 懐紙はぽち袋にも、メモ帳にも

    「日常的に懐紙を使う方は少ないかもしれませんが、懐紙って、とても便利。折れば、ぽち袋。メモ帳や一筆箋の代わりにも。手や口元をふくときのティッシュ代わりにもなります」

    お茶の席だけでなく、文字どおり、懐に入れて携帯する紙=懐紙。多用途に使える懐紙をさらっと使いこなせたら、大人上級者です。

    謝るとき、人のせいにしない

    人に謝るときは、「私が悪かった」「私のせいで」と、あくまでも“私”に原因があることを強調して誠実な対応を心がけましょう、と堤さん。

    「自己防衛に入らないように気をつけて。これ以上、相手を不ゆかいにさせず、相手の気持ちを最優先することが大切です」

    自分の好きを綴っておく

    画像: 自分の好きを綴っておく

    だれかにいわれてうれしかった言葉や、本で見つけた好きな文章を手帳に書き留め、ときどき見返しているという堤さん。

    「隣のページには、言葉と同様、雑誌やカタログなどで見つけた美しい写真や絵を切り抜いて貼ります。これで私の“好き”が詰まったノートが完成」

    このノートを見ながら、手紙に引用することもあるとか。

    断りは、残念な気持ちを前面に

    人からの誘いを断ることは、少なからず、その人をがっかりさせること。だから、「誘わなければよかった」と思わせないような、断り後のフォローが大切。

    「『残念! その日は先約があって、どうしても行けないの』と残念な気持ちを前面に出しつつ、『次こそは必ず』と、“次”にポイントを置きましょう」



    〈撮影/鍵岡龍門 取材・文/宇野津暢子〉

    画像: 断りは、残念な気持ちを前面に

    堤 信子(つつみ・のぶこ)
    フリーアナウンサー。著書に『ありがとう上手の習慣』(ディスカヴァー21)amazonで見る などがある。YouTubeチャンネル「ありがとう上手の習慣」YouTube を最近スタート。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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