• 私たちのからだに備わっている免疫力。これを支えているのが、腸内細菌です。日常の中で、腸内細菌をいい方向に育てることは、大人だけでなく子どもにとっても大切なこと。小児科医・微生物学者で、2人の子どもを育てる本間真二郎さんに、日々の生活で心がけておくといい点について聞きました。
    (『あかちゃんからのかぞくの医学』より)

    腸内細菌がよろこぶものを食べていますか?

    からだは、食べたものでできています。そして当然、わたしたちが食べたものは、腸内細菌の栄養にもなります。食べるものを選ぶ基準は、自然に近いものかどうかです。地域の自然な土壌で育った野菜には、その土地に合った微生物や栄養が豊富です。

    発酵食品も積極的に摂りましょう。腸内細菌が元気なら、たくさん食べなくても必要な栄養をつくり出してくれます。
     
    なにより、子どもは親の姿勢を見ています。子どもがちいさなときから、大人も一緒に食卓を囲み、同じものを食べる習慣をつくりましょう。

    できるだけ母乳育児を

    できれば2歳頃まで母乳育児を! 風邪や熱中症などが多発する時期は、母乳なら飲めるという子が多く、入院を防いだり、安心感にもつながります。母親の仕事や体調にもよりますが、長期的なメリットは大きいです。

    基本は和食中心

    日本人には、和食がもっとも合っています。腸内細菌のエネルギー源となる玄米などの炭水化物(多糖類)に加えて、味噌汁、漬けものが基本です。

    有機・自然農法の野菜

    農薬や化学肥料などの化学薬品を使わないで育てた野菜は、わたしたちの腸の健康にとって必要な微生物や栄養が豊富です。

    身土不二(しんどふじ)

    その土地でとれる作物は、その土地の微生物が育てた、そこに住む生物にもっとも合う食べもの。だから、住んでいる地域でとれた旬の食材をいただくのが、ベストなのです。

    一物全体(いちぶつぜんたい)

    作物は、全体で生命として完全で、それを丸ごといただくことによって、消化・吸収・代謝機能が過不足なく有効に働きます。また、野菜を皮ごと食べると、よく噛むことにもつながります。唾液がたっぷり出ると、消化を助け、口腔内の状態も良好になります。

    天然の調味料

    わたしたちの食事に欠かせない調味料、とくに塩は、ぜひ天然の伝統的な製法でつくられた、ミネラル豊富なものを使ってください。

    ま・ご・わ・や・さ・し・い

    おかずは、「ま」豆・「ご」ごま・「わ」わかめなどの海藻類・「や」野菜・「さ」魚・「し」しいたけなどのきのこ類・「い」いも類をバランスよく摂ることで、腸内環境が整います。

    食物繊維

    食物繊維は、腸内の状態を整える効果が高いすぐれた栄養素です。水溶性(昆布、わかめなど)と不溶性(穀類、豆類、きのこ類など)の食物繊維をまんべんなく摂りましょう。

    発酵食品

    発酵とは、善玉菌によって、ほかの生物を生かす作用です。和食は世界でもっとも発酵食品を摂る健康食です。味噌、しょう油、漬けものなどの発酵食品は、腸内環境をよい状態に整えます。

    画像: 本間さん家族のある日の夕食。この日は、味噌汁と雑穀ごはん、イワシの梅煮、キャベツのしょう油漬け、トマト、しょう油麹で食べる納豆

    本間さん家族のある日の夕食。この日は、味噌汁と雑穀ごはん、イワシの梅煮、キャベツのしょう油漬け、トマト、しょう油麹で食べる納豆

    毎日の暮らしは自然に沿ったものですか?

    日常的に行っている習慣も、腸内細菌にとって大切です。「自然に沿っているかどうか」を基準にしてみると、情報に振りまわされることもありません。

    ただし、理想ばかり追い求めると、現実から離れて、かえってストレスになり、不自然にもなります。まずは、できることをひとつでもはじめてみることが、大きな変化につながります。

    画像: 毎日の暮らしは自然に沿ったものですか?

    メリハリのある生活

    食べる・寝る・あそぶを、時間を決めてメリハリをつけて営むといいでしょう。朝の日課をもつなど、朝の時間が決まると一日がスムーズにまわります。子どもには、基本の生活リズムの安定が欠かせません。それにより、子どものきげんがよくなり、自律神経やホルモンのバランスが整います。

    ひととふれあう

    子どもの成長には、ひととふれあうことが欠かせません。親、友だち、先生、近所のひとなど、さまざまなひととふれあい、表情を見て、肌で感じることを通じて五感を発達させ、人間として多くのものを学んでいきます。

    最近は、女性の社会進出などで、早期の母子分離も当たり前になっています。だからこそ、ふれあいを意識できるといいですね。

    外であそぶ

    子どもたちの運動能力低下の最大の原因は、外であそばなくなったことでしょう。外あそびには、体力や運動能力が上がるだけでなく、五感やこころの発達、免疫力や学習能力、社会性の向上、微生物にふれるなど、多くのメリットがあります。

    できるだけちいさいときから、たくさんからだを使った外あそびをさせましょう。

    土にふれる

    身のまわりの菌をなるべく少なくすることが、清潔で健康的であるという考えがまかり通っていますが、現代病の原因は清潔にしすぎることにあります。

    土の中は、ひとの腸内以上に微生物が豊富です。免疫系をはじめ、からだが正常に働くためには、これらの微生物と接することがとても大切です。外あそびや、家庭菜園などを通じて、土にふれる機会を増やしましょう。

    手づくりする

    食べるものをはじめ、手間ひまかけて何かをつくることは、こころとからだの健康につながります。はじめは面倒に感じても、続けることで効率もよくなり、たのしみも大きくなります。親子で共通にたのしめるものを見つけるのもいいですね。

    画像: 本間さん家族のある日の昼食。ご近所の各家庭から味噌と野菜を持ち寄って味噌汁づくり

    本間さん家族のある日の昼食。ご近所の各家庭から味噌と野菜を持ち寄って味噌汁づくり

     

    本記事は『あかちゃんからのかぞくの医学』(クレヨンハウス)からの抜粋です


    画像2: 腸内細菌を育てる暮らし|あかちゃんからのかぞくの医学

    本間真二郎(ほんましんじろう)
    小児科医・微生物学者。2児の父。2001年より3年間、アメリカ国立衛生研究所(NIH)にて、ウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。札幌医科大学新生児集中治療室(NICU)室長などを経て、栃木県那須烏山市へ移住。同市で医師として地域に密着した医療に携わりながら、農的生活を送っている。『天然生活』2021年6月号より、連載コラムを担当。


    本書は、小児科医であり、ワクチン開発にも詳しい著者による、ホームケア事典。注目の集まる「免疫」に重点を置いた本書は、従来の医学事典にはなかった、これからの時代の、まったく新しい子どもの医学大全となっています。



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