(『天然生活』2015年5月号掲載)
保存容器にラフに詰めた、冷めてもおいしいパスタとつけ合わせ
「お弁当? 苦手だなあ。だって、できたての味が好きだから」と、開口一番、渡辺さん。それならば、と発想を変えて、できたてでなくてもおいしいものを考えました。冷めているからこそ、おいしいものを。そこで思い出したのが、シチリアで食べた常温のショートパスタです。
「このひと皿に出合ったときは衝撃でしたね。あつあつでないのに、おいしいパスタがあるだなんて。たとえば、他のパスタにしても、僕たちは、ゆで加減や出すタイミングをシビアに考えるけど、あっちの人って、ざっくりしていて、アルデンテとかパスタがのびるとか、あまり考えない人も結構いて」
つけ合わせもやはり、冷めても味が変わらず、かえってなじんでおいしくなるものを選びました。キャベツは、くたくたに蒸すところまでは前日に済ませておけるし、じゃがいもは前の晩に、ひとつ余計にゆでてつくっておける気軽さ。お弁当箱は、こちらも手軽な保存容器にラフに詰めて。
「軽いし、食べ終わったら重ねて持って帰れるしね。お弁当って、そのくらい適当なほうが、ずっとおいしく感じる気がする」
でも、デザートは必須。とはいえ、こちらも気負うことなく、フルーツ丸ごとひとつ、バッグに入れて出かけます。
トラーパニ風パスタのつくり方
トマトの酸味にアーモンドの風味、そしてバジルのさわやかさ。ソースは熱を使わず、混ぜるだけでできるのがうれしい。
材料(1人分)
● プチトマト | 12粒 |
● アーモンド | 10粒 |
● にんにく | 1/4片 |
● バジル | 1枝 |
● オリーブオイル | 大さじ1 |
● ショートパスタ(フジッリなど) | 100g |
● 塩 | 適量 |
つくり方
1 プチトマトはへたを取り、半分に切って種を取り出す。アーモンドは薄皮を湯むきする。にんにくは皮をむいて芽を取り除く。
2 フードプロセッサーにアーモンドを入れてざっとくだき、パスタと塩以外の材料をすべて加えて攪拌し、ペースト状にする。ボウルに入れ、塩で味をととのえる。
3 パスタを表示時間どおりにゆでてざるにあげ、2のボウルに入れてあえる。
春キャベツの蒸し煮のつくり方
やわらかな春キャベツを、火加減は気にせずくたくたに。真ん中に落とした卵は、半熟にしてもかためにしても。
材料(1人分)
● 春キャベツ | 1/4個 |
● ディル | 6枝 |
● 卵 | 1個 |
● オリーブオイル、水 | 各40mL |
● 粗塩 | ひとつまみ |
つくり方
1 キャベツはざく切り(芯は薄切り)にし、ディルは枝ごとはさみで1cm長さ程度に切って厚手の鍋に入れる。オリーブオイルと水をまわしかけ、粗塩をふる。
2 ふたをして火にかけ、沸いたら弱火で蒸し煮する。たまにかき混ぜ、キャベツがくたくたになったら、塩(分量外)で調味する。
3 2の中央にくぼみをつくって卵を割り入れ、ふたをして好みのかたさになるまで火をとおす。
※パスタソースで取り除いたトマトの種を水代わりに使うと、さらにおいしい。
新じゃがいものアンチョビ風味のつくり方
じゃがいもは、粗めにつぶしたほうが食べごたえあり。レモンの酸味が軽やかな一品です。
材料(1人分)
● 新じゃがいも(中) | 1個 |
● アンチョビ | 1/2枚 |
● にんにく | 1/2片 |
● レモン | 1/4個 |
● オリーブオイル | 適量 |
● 塩 | ひとつまみ |
● こしょう | 適量 |
つくり方
1 新じゃがいもは皮をよく洗い、小鍋に入れてかぶるまで水を注ぐ。ほんのり塩けを感じる程度の塩(分量外)を加え、火にかける。沸いたら弱火にし、竹串がスッと通るまでゆでる。
2 アンチョビはみじん切りにし、にんにくは芽を取り除いて軽くつぶす。ともにボウルに入れ、レモンをしぼり、レモン汁と同量のオリーブオイルを加える。
3 2に塩、こしょうを加え、つぶしたにんにくを指で押しつけるようにしながら白っぽく乳化するまでぐるぐると混ぜ、にんにくを取り出す。
4 ゆで上げたじゃがいもを別のボウルにとり、木べらで粗くつぶす。3のアンチョビソースを加え混ぜ合わせる。
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〈撮影/三村健二 取材・文/福山雅美〉
渡辺康啓(わたなべ・やすひろ)
「コム デ ギャルソン」勤務後、料理家として独立。料理教室をメインに活動する。「料理を通して美しいものを表現する」ことを目指し、どの料理も独自の美意識に貫かれている。2015年初夏に、拠点を九州・福岡へ。
http://www.igrekdoublev.com