小迷惑な関係性
AM4:30。
楠瀬あおの朝は早い。(某ドキュメンタリーTV番組風に)
家族はまだ寝静まっている。猫のあおちゃん(♂)の1日は始まる。まずは、寝室北側の窓を開けて外を監視するのが日課。
「ニャ〜〜窓開けて〜!」開けてもらえるまで泣きやまない…。無視されようものなら耳元まで来て全力で泣く。
窓が開くと、5分くらい窓際で座り込んで、次は「ニャ〜〜カリカリ(フード)を入れて〜!」と泣く。
フードを入れてなんとか落ち着くと、次は「ニャ〜〜一階のリビングの窓を開けて〜!」と泣く…。
というのが我が家の1日の始まり。(早すぎてしょっちゅう二度寝してしまう…)
あおちゃんが我が家に来たのは2017年の6月。
5月ころから実家の庭に突然居座るようになったあおちゃん。
最初は、あまり気にせず、野良猫かなと思っていたので、ちゃんと見ることもしなかった。
毎朝、作業場へ出勤すると必ず「ニャ〜〜、おはよう」と、どこからともなく顔を出す猫。
ちょっと鼻詰まりの独特なかわいい声。まったく猫に興味のなかった僕には、猫から擦り寄って来られるなんて、初めての経験。少しかわいいなと思いながらも基本的には無視し続けていた。
家の敷地内には、4軒の借家があり、朝から昼過ぎにかけて、毎日その4軒の家の玄関前に各1時間くらいずつ座り込みをしていた。その姿はなんだか営業マンのようだなと思って見ていた。
そんな日常が1ヶ月くらい続いたある日、目の前の道路で猫が車にひかれて亡くなった。
「もしや!」と思いながら、内心ドキドキしながら作業していると、いつもの声が。
ほっとした。(亡くなった猫ちゃんも近所の野良猫だった)
ただ、我が家には、すでに愛犬レタス(トイプードル)がいたので、猫を飼うという発想はなかったのだけど、その頃、たまたま遊びに来ていた猫好きの友人が「この子を保護する」と言い出し、しばらく我が家で預かる事になったのだった。
最初、とても痩せていて、頬もこけているように見えた。
なんだか個性的な顔の猫だともこの頃やっと気づいた。笑
保護当初、「この猫は天才なのか?」と思うくらいお利口だった。トイレも一発で覚えるし、言っていることもだいたいわかっているように見えたし、こんなに意思疎通できるとも思っていなかったのでびっくりだった。
青い首輪を付けていたことから名前を「あおちゃん」にした。
結局、あの手この手で元の飼い主を探したが、見つからずウチで飼うと決めた。
ちょうどその頃から、たまに噛みつくようになった。しかもまあまあ痛い…。
ただ、本気ではなく遊んでいるようだった。さらに、部屋の隅、籠の中、押し入れなど、あちこちでおしっこもされた。これが「猫をかぶる」というやつか…。
僕たちに慣れてきたのかもしれないが、「ここで住める!」とわかったとたんに自己中モード。性格もちょっと悪い。
レタスが、気持ちよさそうに寝ていると、ワザと近づいて行ってちょっと怒らせる。怒ったのを確認してゆっくり逃げて高いところから怒ったレタスを高見の見物。そして、「レタっ!うるさいよ!」とレタスが怒られると満足気にどこかに行く。なんとも悪いヤツ。
猫を飼っている人で「癒される〜」というワードをよく耳にするのだがあまりピンとこない。たしかにかわいいと思う瞬間はあるのだけれど、どちらかというとイラッとくる時もよくある。
では、どんな関係性かというと、お互いちょっと小迷惑なヤツなんじゃないかと思う。机でちょっと書きものでもしようとしたら、だいたい紙の上にぼてーんと来てぐちゃぐちゃにされる。(猫ちゃんあるあるかな)
逆に、僕はあおちゃんを捕まえては抱っこしてナデナデする。そういう時、だいたいあおちゃんは迷惑そうな顔をしている。笑
ただ毎日一緒に寝て、朝早く起こされて、ナデナデして邪魔されてを繰り返していると、それもまた愛おしいとも思い、共に生きている同志のようにも思える。
この小迷惑な関係性がまだまだ続いてくれるといいなと願っている。
AM4:30。
あおちゃんの朝はやっぱり早過ぎる。
楠瀬健太(くすのせ・けんた)
ハーブ専門農園まるふく農園/M'MATOKA 代表。
農薬や肥料を使わずできるだけ自然の原理に基づいて100種以上のハーブを栽培。料理用ハーブだけでなく、花材としてハーブや苗を全国へ出荷している。M'MATOKA(マトカ)の屋号で加工品の製造やワークショップなどハーブを身近に感じてもらえる活動を行なっている。
まるふく農園:http://www.marufuku.noen.biz/
M'MATOKA:https://www.matokaherbs.com/
Instagram:@marufukufarm