• Kathy’s Kitchen(キャシーズキッチン)は、京都・元田中にあるお菓子教室。Kathyさんこと、山口景さんがおしえてくれるのは、アメリカンベイキング。ハマったきっかけは、中学1年生ときに手にした一冊の本、『ステラおばさんのアメリカンカントリーのお菓子』。ケーキショップに勤めたのち、教室をはじめたのは、お家でつくってほしいから。ご縁がつながって、いまでは東京・目黒にも教室があります。今回は、京都の焼き菓子好きに愛される、Kathyさんのお話です。

    人生を変えたのは、一冊の本

    画像: 人生を変えたのは、一冊の本

    はじめてKathyさんこと、山口景さんの焼き菓子を食べたのは下鴨神社糺の森であった左京ワンダーマーケット。焼き色といい、かたちといい、見るからにおいしそうで、食べれば素朴という言葉では語りきれない味わい。たちまち好きになったのです。

    しかし、買いに行きたくとも、Kathyさんのベースは教室。販売があるのはイベントなどに限られ、思いは募るばかり。食べたい一心で追いかけてみれば、Kathyさん主宰のマーケットはいつもたくさんの人でにぎわい、教室でのおしえは実に的確。どうしてアメリカンベイクだったのか、なぜ教室なのか。お話をうかがうことにしました。

    画像: お菓子づくりの原点、「ステラおばさんのアメリカンカントリーのお菓子」(主婦の友社)。紹介されているお菓子を何度もつくったそう

    お菓子づくりの原点、「ステラおばさんのアメリカンカントリーのお菓子」(主婦の友社)。紹介されているお菓子を何度もつくったそう

    アメリカンベイキングとの出会いは、一冊の本。『ステラおばさんのアメリカンカントリーのお菓子』。米国・ペンシルバニア州、アーミッシュといわれる人たちの、お菓子のレシピ集。あのクッキーの、ステラおばさんです。

    「祖父からなんでも一冊買ってあげると言われて選んだのが、この本。本の中にあったのは、アーミッシュの暮らし、女性たちが焼くパイやケーキ、クッキー……。開いたとたん、一瞬で引き込まれました。1993年出版とあるから、中学1年生だったのかな。それから、お菓子をつくることが日常のあたりまえになりました」

    焼きっぱなしなのに奥深い、アメリカンベイク

    画像: 生徒のみなさんが教室で焼いた、マフィン

    生徒のみなさんが教室で焼いた、マフィン

    大学卒業後、アメリカンケーキのお店で働き、あちこち旅行しては現地のレシピを楽しみました。その後、京都の人気カフェ「さらさ」が立ち上げた、「さらさ焼き菓子工房」の主軸として活躍。長年、お店のキッチンでお菓子を焼いてきました。

    「さらさ」のオーナーから、「どんなでも好きにやっていいよ」って言ってもらい、つくりかったのはやっぱり、アメリカンベイク。

    「アメリカンベイクは焼いて終わり、だけど、すごく深いんです。もともとはドイツやイギリスから来たものだけど、アメリカの焼き菓子が肌に合う。前世で暮らしていたとしか言いようがない感じですね」

    画像: これまでの道のりを伝える写真がアトリエの壁に

    これまでの道のりを伝える写真がアトリエの壁に

    そうして、お店のキッチンに立ち続け、たくさんのお菓子を焼いて。そろそろやめようかなと思ったのは、30代のとき。

    「このまま、同じものをつくり続ける毎日でいいのかなって、思ったんですよね。次に何をするかは決めていなかったけど、旅先で考えればいいかなって、2ヶ月かけてアメリカを旅しました。シアトルでお気に入りおの店ができて、「こんなお店ならやってみたい!」と思ったこともありましたけど、そういえばお金がない! いまの自分にできることとして、思いついたのが「教室」でした。「さらさ」でもときどき教室をやっていて、だんだん希望者が増えていくのがうれしくて、おしえることが好きだったんです」

    自分でつくれば、一番おいしい瞬間に味わえる

    画像: 自分でつくれば、一番おいしい瞬間に味わえる

    お菓子教室「Kathy’s Kitchen」を自宅ではじめ、2016年から京都・元田中のTHE SITEにアトリエを移転。お家に招かれたような、そんなキッチンです。

    「私、実は甘いものが好きじゃないんです。食べるのは、1日1個が限界。つくるのが楽しいんです」と、Kathyさん。自然な味わいは、そんなところから来るのかもしれません。30代、気になり出したのが、材料でした。

    「アメリカンケーキは、小麦粉や砂糖をたっぷり使っていて、健康的でないイメージもあると思いますが、自分でつくれば調整ができます。つくり方をおしえることは、知識を得てもらうことになる。

    お店では原価を考えなければならなくて、卵一つでも、いいものを使うと価格に関わります。だけど、自分のためにつくるなら、ちょっといい卵、砂糖、粉を選べる。それが、手づくりのいいところですよね。

    自分でつくることで、材料が高いとわかれば、安く食べられるものが、どうしてそうなのか。おのずと気づくことにもなります。

    そして、なにより自分でつくれば、一番おいしい時に食べられます! お店ではどうしてもタイムラグができますから。つくっている限り、できたての、一番おいしい瞬間を味わってほしいんです」

    レシピ本から感じ取れない手の感触、変わりゆく焼き色、におい、生地のふくらみ。実際やってみてわかることを伝えたい。おうちでつくってほしいから。いつものカレーやハンバーグみたいに。

    「焼けるのを待つ間の香りに、たまらなくしあわせになります。つくる時間って、楽しい。生活の一部になったら、うれしいです」

    画像: 本棚にはレシピ本がぎっしりと

    本棚にはレシピ本がぎっしりと

    画像: 京都・元田中にある「Kathy’sKitchen」。どこかお家のような雰囲気

    京都・元田中にある「Kathy’sKitchen」。どこかお家のような雰囲気

    本がきっかけで、アメリカンベイキングに夢中になった、Kathyさん。自費出版でレシピ本をつくり、「映画の中のお菓子」をテーマにした3冊目は昨年末に出来上がり、もう残り100冊ほどです! 次回は、旅のこと、本づくりのことを。

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    Kathy’s Kitchen

    京都・元田中と東京・都立大学にてお菓子教室を主宰。スケジュールはHPにて。
    インスタグラム:@kathybaker511

    KYOTO
    京都市左京区田中東春菜町32-2 The SITE内 南棟1F
    TOKYO
    東京都目黒区八雲1−8−7


    宮下亜紀(みやした・あき)

    京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。
    インスタグラム:@miyanlife



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