• 子育ての悩みや日常生活のちょっとしたイライラ、みなさんどんな風に解決していますか。京町家に家族4人で暮らし、洋服づくりを手掛ける美濃羽まゆみさんは、仕事に家事に忙しい毎日も自分のペースでごきげんに楽しんでいるようです。個性豊かな子どもたちとの向き合い方や日々の小さな心掛け、気持ちの整え方……。美濃羽さんが日ごろから大切にしていることをお聞きして、 “ごきげんに暮らすヒント=ごきげんスイッチ”を探っていきます。今回のテーマは「子育てで大事にしていること」。我が子の成長が気になるとき、ふっと心が軽くなるお話です。

    子育てで大事にしていること
    「ヨコでくらべず、タテでくらべる」  

    現在、娘さんが14歳、息子さんが8歳です。いっしょに遊ぶ姿からは、仲良し親子であることが伝わってきますが、美濃羽さんが子育てをするなかで、赤ちゃんのころからずっと大事にしてきたことって、どんなことなのでしょうか? 

    育てようと思わないこと。

    私が大事にしたいなといつも思うのは、育てるのではなく見守るということ。親が導いたり手助けしなくても、その子自身にはちゃんと「よりよくなろう」「成長したい」という力があると思っていて、私はそれを邪魔しないようにしよう、といつも心にとめています。

    とはいえ私も娘が幼いころは、「いい親にならないと」「育児書どおりにがんばらなきゃ」と必死でした。でも、うちの場合は娘の子育てが思い通りにいかないこと、他の子と違うことがありすぎて……。いっしょうけんめい育てようとすればするほど、まるでうまくいかなかったんです。

    画像: 1歳ごろのゴンちゃん(長女)。美濃羽さんがはじめてつくった服を着てごきげん顔。「気に入らないことがあると豹変して手くせ足くせが悪くなるので、夫が“怪獣ゴンやなー”と。あだ名が“ゴン”になりました!」

    1歳ごろのゴンちゃん(長女)。美濃羽さんがはじめてつくった服を着てごきげん顔。「気に入らないことがあると豹変して手くせ足くせが悪くなるので、夫が“怪獣ゴンやなー”と。あだ名が“ゴン”になりました!」

    寝ない食べないは、私のせい?

    最初の壁は寝てくれなかったこと。「新生児は一日中眠っています」なんて育児書には書かれているのに「うそでしょ?!」というぐらい寝ませんでしたね。

    娘をひたすら抱っこしてやっと寝たかなと思っても、私のひざがパキッと鳴っただけでぱっと目をあける、布団にそっと寝かせようとするとぱちっと目をさます。いつもそのくり返しでした。

    離乳食も思い通りに進まなくて。今でも思い出すのは、吐き出した離乳食をパンパン叩いて遊ぶ姿です。やわらかくゆでた野菜を裏ごししてなめらかにしても食べてくれない。とろみをつけたり冷やしたりしてもダメ。

    おもゆでトロトロにしたものだけはちょこっと食べてくれることもあったのですが、ほんの少しお米の量を増やしたりすると、すぐにべーっと吐き出してしまう……。

    「私の料理がまずいのかな?」とか「どこか具合が悪いんだろうか?」と、心配でたまりませんでした。

    追々お話していきますが、実は娘は発達障がいの特性を持っていて、音や味などに対する身体的な感覚がとても敏感な子だったんです

    赤ちゃんのときに服を着せるだけですごく不機嫌になったりしたのも肌感覚が過敏だったからなのですが、その当時は、何が原因なのか全く分からなくて、ただただ自分のやり方、育て方が悪いんだと思っていましたね。

    画像: 「離乳食をはじめたばかりのころ、全身をつかって“これイヤ!”を表現。歯が生えるのも標準よりだいぶ遅かったので、“まだ準備が整っていないよ”とサインを出してくれていたのかもしれませんね」

    「離乳食をはじめたばかりのころ、全身をつかって“これイヤ!”を表現。歯が生えるのも標準よりだいぶ遅かったので、“まだ準備が整っていないよ”とサインを出してくれていたのかもしれませんね」

    ママ友の悩みに驚いて。

    そんなうまくいかないことが続いていたころ、確か娘が1歳くらいのときですが、同じくらいの子どもがいる友人たちと集まる機会があったんです。「食べてくれる子がうらやましい」と悩みを打ち明けると、「うちは吐くまで食べるので困る」と返されたんですよね。

    それに、うちは寝ないことで困っていたけれど「寝すぎてちゃんと生きてるのか心配で家事が手につかない」という友人もいて、もうびっくり!

    うちの娘ばかりいろいろあってしんどいのかなと思っていたのですが、「なあんだ、みんなそれぞれ悩んでるんだ」と

    他人から見てどんな「いい子」であっても親は悩んでしまう生きもの。子どものことがかわいいからこそ、心配は尽きないのかもしれないなって思ったんです。

    心の支えになった絵日記。

    それまでは、他の子とくらべて「これができる」で安心したり、「できていない」で落ち込んだりしていました。

    でもあるとき、妊娠中からつけていた子育て日記をふと見返してみたら、そんな娘でもちょっとずつ成長していると気づいて。「前よりは食べるようになってきたなあ」とか、「まとめて寝る日が多くなってきたな」と思えてほっとできたんです。それからというもの、この日記が心の支えになっていきました。

    画像: 妊娠~3歳までをつづった育児日記。ゴンちゃんの分だけで8冊もあるそう。「仕事が忙しく帰りの遅い夫への報告もかねて、悩んでいること、おもしろおかしいできごとを、気抜けイラストとともに書いていました」

    妊娠~3歳までをつづった育児日記。ゴンちゃんの分だけで8冊もあるそう。「仕事が忙しく帰りの遅い夫への報告もかねて、悩んでいること、おもしろおかしいできごとを、気抜けイラストとともに書いていました」

    このころからですね、他の子と比べて一喜一憂していたときには気づかなかった、この子なりのユニークさに気づく余裕も出てきて、「娘自身をもっと観察していこう」「見守っていけばいいんだ」って、思えるようになったのは。

    そのうち、私自身も「いい親じゃなくても、私なりのやり方でいいじゃない」とありのままの自分をみとめられるようになってきて。少しずつ生きやすくなっていった気がします。

    今では子どもたちとともに日記を開くのも、楽しみのひとつになりました。


    ――― 娘さんの個性に悩みながらも、「ヨコからタテへ」視点を切り替える=スイッチすることで、心にゆとりを取り戻していった美濃羽さん。娘さんならではの「ユニークさ」に気づいてからは、日記タイムもどんどん楽しくなったとのことで、当時の日記にはほほえましいエピソードがイラストとともにたくさん描かれています。この連載のなかでも毎回一つずつ紹介していきますので、どうぞお楽しみに!


    〈今回のスイッチポイント〉

    子どもの成長を実感したいなら、他の子とくべるのではなくその子自身の変化を見てみよう。


    画像: 子育てで大事にしていること「ヨコでくらべず、タテでくらべる」|美濃羽まゆみのごきげんスイッチ。凸凹子育て&暮らしと仕事

    ~1歳のゴン、大暴れの巻き~

    「イヤイヤ期にはまだまだ早いのに、着替えさせようとすると時々大暴れ&大泣き……。すんなり着てくれる洋服とそうでないものがあるらしい、とは何となく気づいていたものの、その理由が感覚過敏によるものだとはつゆ知らず。前後が逆だったり表裏逆だったりしたときもあったけれど、着てるだけまし! と自分をなぐさめておりました」


    ――― さて、次回のテーマは「我が家の偏食対策」。偏食傾向のある娘さんのごはんづくりについて、美濃羽さんの体験談や工夫していることをお聞きします。




    〈写真・イラスト/美濃羽まゆみ 取材・文/山形恭子〉

    画像: 心の支えになった絵日記。

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。

    現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYou Tubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。

    ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
    インスタグラム:@minowa_mayumi



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