• 「サステイナブルな暮らし」のあり方は自由そのもの。暮らしにちょっとした変化や工夫を取り入れることで、日々の手ざわりや感じ方は、楽しく変化していきます。高知県の山のふもとで暮らす翻訳家の服部雄一郎さん、麻子さん夫妻の、無理なく心地よく暮らすヒントをお届けします。今回は、「買わない」ギフトのお話です。
    (『サステイナブルに暮らしたい』より)

    お金も時間もかからない、畑のブーケ

    画像: お金も時間もかからない、畑のブーケ

    友人の家を訪ねる時や、小包を送る時、畑の花でブーケをつくります。

    畑や庭に飛び出して、あちらこちら歩きながら探せば、ハーブや野の花、野菜の花など、たいてい何かしらが見つかります。

    こぼれ種から育ったカモミールやコリアンダーの花、鮮やかな色の春菊や菊芋の花。ミントやヴェルヴェーヌ、レモンバーム、タイムにローズマリー。ハーブはフレッシュハーブティーとしてたのしんでもらえるし、乾燥させればドライハーブにもなります。ハーブや野菜の花は、エディブルフラワーとして料理にも使えます。

    少し水切りをしてから、麻ひもなどで束ね、新聞紙でふんわりと植物がのぞくように包むと、素朴で良い感じに仕上がります。

    庭にたくさん繁っている、これといって特別感のない草花やハーブでも、摘んで束ねてブーケにすると、思いのほか喜んでもらえます。花を贈られる、というのはやはり特別なこと。
     
    自分でブーケにすればごみも出ず、お金も時間もかからない。ささやかなギフトです。

    誕生日には「買わないギフト」

    山のふもとの生活は、買い物に行くのも一苦労。ふらっとお店に立ち寄って素敵なものに出会う、ということはまずありません。

    でも、誕生日は年に一度の特別な日。離れて住む友人には誕生日プレゼントに小包を送ります。箱に詰めるのは、身の周りにあるもの。家の中をぐるりと見回します。

    目に入るのは……

    ・野草茶
    ・畑の野菜 
    ・保存食の瓶詰め

    それに雑誌や新聞の切り抜きやメッセージを添えます。

    手元の野草茶を使って、その人のための「バースデーブレンド」をつくります。友人のことを思い浮かべながら、インスピレーションで調合します。

    グラシン紙などの薄紙に包んでから、厚めの紙で包み、植物染めの紐で結びます。

    画像1: 誕生日には「買わないギフト」

    かごを片手に畑や庭をぐるりと一周して、野菜やハーブを収穫します。花が咲いていれば素朴なブーケをつくることもあります。

    秋冬なら、ぬらしたティッシュで茎元を覆い、リユースのプラスチックの袋でくるんでから新聞紙で包みます。野菜も新聞紙で包み、ブーケは一番上にのせて、新聞紙をくしゃっとさせたものをふわりとのせて封をすれば、案外つぶれずに届きます。

    わが家のパントリーには季節ごとにつくりためた保存食がずらりと並んでいます。ジャムは、新聞紙に包んで箱の真ん中あたりにいれると緩衝材も不要です。手製の梅干しや味噌を喜んでくれそうな人には、小瓶に詰めなおして。それぞれの好みを思い出しながら、あれこれ考えるのもたのしい時間です。

    メッセージは必ず。長めの手紙を書くこともあります。便箋は使わないので、段ボールを切った厚紙や、子どもが描いた絵の裏を使ったりします。

    近所にある山の上の本屋「うずまき舎」に本を選びにいくこともあります。今日はどんな本に出会えるだろう? そんな時間は私にとってのギフトでもあります。時には、「新しいものではないけれど」と自分の本棚にある本を贈ることもあります。

    新聞や雑誌の良い記事はストックしておき、好みに合いそうなものを選びます。活字の情報には、手紙とはまた違う魅力があります。ページをびりっとやぶっただけの気軽さも好きです。

    「観てよかった映画」や「気になっている映画」のチラシをいれることも。すでに上映終了していたり、場所によっては観られないものもありますが、ひとつの「情報ギフト」として。意外と頭の隅に残って、いつかどこかのタイミングで何かとつながることもあるかもしれません。

    これが私の誕生日の贈り物。ささやかで素朴なものばかりですが、「気持ちを届ける」イメージで、毎回たのしんで小包をつくっています。

    本記事は『サステイナブルに暮らしたい』(アノニマ・スタジオ)からの抜粋です



    〈文/服部麻子 撮影/衛藤キヨコ)〉

    画像2: 誕生日には「買わないギフト」

    服部雄一郎(はっとり・ゆういちろう)、服部麻子(はっとり・あさこ)

    夫・服部雄一郎、妻・服部麻子(ともに1976年生まれ)、長男(高1)、長女(小5)、次男(小2)の5人家族。アメリカ、南インド、京都を経て、2014年に高知県に移住。

    一家の環境に配慮した「ゼロウェイスト」や「プラスチックフリー(プラフリー)」の実践的な取り組み、循環や持続可能性を意識した暮らし方がメディアで紹介され注目を集めている。今後ゲストハウスなども運営予定。持続可能な暮らしのノウハウや生き方を綴った著書『サステイナブルに暮らしたい』が発売中。

    雄一郎:神奈川県葉山町役場のごみ担当職員として、ゼロウェイスト政策に携わる。訳書に、『ゼロ・ウェイスト・ホーム』(アノニマ・スタジオ)、『プラスチック・フリー生活』(NHK 出版)、『ギフトエコノミー』(青土社)など。
    http://sustainably.jp/
    インスタグラム:@sustainably.jp

    麻子:野草茶のブレンドを手掛ける。
    http://lotusretreat.info/ 
    インスタグラム(野草茶):@asterope_tea

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    画像: ごみを出さない「買わない」ギフト|サステイナブルに暮らしたい/服部雄一郎・服部麻子

    『サステイナブルに暮らしたい』(アノニマ・スタジオ)

    『サステイナブルに暮らしたい』(アノニマ・スタジオ)|amazon.co.jp

    著者/服部雄一郎、服部麻子

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    高知の山のふもとに暮らす翻訳者・服部雄一郎とその家族の無理なく楽しむ、シンプルで心地よい暮らしのはなし。『ゼロ・ウェイスト・ホーム』訳者による、持続可能な暮らしのノウハウや生き方を綴ったエッセイ&生活実用書です。ゴミ、プラスチック問題に精通しているからこその、無理なく楽しく取り組む方法やアイデアが満載。それぞれの暮らしに合ったヒントが見つかります。



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