(『飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方』より)
毎日使う道具こそいいものを選びたい。坂井より子さんのもの選び
毎日使うものや家族みんなで使うものは、自分が本当にいいと思ったものを選ぶようにしています。
そして、それを長く使う。鍋や食器は何十年と使っているものがほとんどですね。
40年前に買ったステンレスの鍋セットもそう。当時は高いなぁと思ったけど、直感でこれがいいとピンときて買いました。
サイズ違いで3つあって、みそ汁も煮ものもこれで作りますし、牛乳を温めたり野菜をゆでたりするのにも便利。ほかの鍋もあるのに、今でもこればかり使っています。だからもう十分すぎるくらいに元は取れたんじゃないかしら。
煮ものなどは特に、いい鍋でないとおいしくできないんですよ。肉じゃがを作るのでも、びしゃびしゃじゃなく、ほっくりさせたいでしょ。
そのためには少ない煮汁で煮るのがいいですが、それができるのはやっぱりいい鍋。安い鍋だと鍋肌がすぐ焦げて、表面がチリチリになってしまうんです。
だから毎日使う道具こそいいものを選びたい。安物を買って失敗した経験があるので、そういう買い物はだんだんしなくなりました。
食器も同じ。気に入ったものはちょっとお高くても、逆にB級品でちょっと難があっても、いいなと思えば買いますね。
リビングに置いている大きな水屋箪笥(みずやだんす。今でいう食器棚のこと)も、近所のお店でひと目見るなり気に入って買ったもの。なんとか払える金額だったから即決でした。リビングのあそこに置こうという算段も頭の中ですぐにして。
食器はここに入る分だけを持とうという基準にもなったから、おかげで断捨離も進んだんですよ。
前の家では2段重ねて使っていたけれど、この家に移った時に横並びで置いてみたら、サイズがぴったり。
低い方が威圧感がなくて、部屋が広く見えるからよかったわ。
物を大切にすることは生活の基本だと思います。
100円ショップは便利だけれど、数倍のお金を出しても長く使えるものなら、そっちを選ぶ。
しょっちゅう使うものほどいいものを選んで買うと、手にも暮らしにもなじんで使い心地がいいですよ。
〈撮影/枦木功 取材・文/片田理恵〉
本記事は『飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方』(家の光協会)からの抜粋です
坂井より子(さかい・よりこ)
1946年生まれ。2人の子どもの母、3人の孫の祖母で、神奈川県葉山町に3世帯9人で暮らす。子育てが落ち着いた40代後半から15年ほど、自宅で料理教室を主宰。主婦歴50年の経験から生まれた暮らしの知恵、また人生を軽やかに生きるコツなどを独特のやさしい口調で語るその姿が、若い世代を含む幅広い年齢層に支持されている。近著『飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方』は、これまでの人生を深く綴った初めての本。
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自然体な暮らしと素敵な笑顔で、幅広い世代の女性から支持される坂井より子さん。専業主婦歴50年、「ふつうの主婦」だからこそ伝えられる、日々を前向きに暮らすための生き方、考え方をつづったエッセイです。
子どもたち家族と3世帯で暮らし、9人分の家族の食事を作る日々。その時々で「流れに任せて」「いいとこどり」で生きてきたと語るより子さん。一人の女性として、しなやかに、楽しく生きるヒントがたくさん詰まった1冊です。