病気と闘う、小さな命「我が家の小さな家族」
わが家の小さな家族、猫のロンとようちゃん。
茶トラがロンで、ロシアンブルーがようちゃん。どちらもメスの16歳。
人間でいえばもう70代後半。
うちに来たばかりのころは片手に乗るくらいの小さなサイズで毎晩大運動会をしていたのに、いまはゆったり寝ていることが多くなりました。
16年の間に、ロンもようちゃんもどちらも大きな病気を経験しています。
猫の可愛さや素晴らしさは十分みなさんが伝えてくださってると思うので、動物の飼い主ならだれしもきっといつかは体験する、「病気」を通して気が付いたことを、私なりに書いてみようと思います。
茶トラのロンは持ち前の野性味と生命力の強さで、数年前に生まれつきの病気を克服しました(猫白血病キャリアの陽性から陰転)。
2018年の夏に「猫甲状腺機能亢進症」と診断されたロシアンのようちゃんは現在も闘病中。
ワイルドで好戦的それでいて繊細で内弁慶なロンに比べると、ようちゃんは実におおらか。おいしいものにはちょっとしつこいけど、本当に優しくて人懐っこいおっとりさん。
1歳の時に猫白血病で死にかけたロンは、近年までずっと陽性のキャリアを持ち続けていたので、ふだんの健康については、ついロンのことばかり優先してしまっていました。
穏やかでいつものほほんとしているようちゃんのことは、後回しになっていたのかもしれません。
兆候はきっと前からあったのです。
生後半年でわが家に来たようちゃん。
最初の1カ月はずっとひどい下痢をしていました。でもそれ以降はずっと健康。年に1度の健康診断でもいつも問題なし。
「ようちゃんは長生きするんだろうなあ~」と勝手に思い込んでいました。
病気発覚の数年前から食欲旺盛になり太りはじめましたが、その様子を見て、ぷっくりようちゃんかわいいね、と、呑気だった私……。
「甲状腺の数値が少し高めです」と、2017年の定期検診後病院の先生からアナウンスをもらっていたのですが、日々の生活の忙しさにかまけ、楽観的に過ごしてしまいました。
「あれ? ようちゃん痩せた?」
と、その後ろ姿に異変を感じたのは2018年の夏。自分の写真展が始まる直前ではあったのですが、なにか胸騒ぎがして慌てて病院へ行くと 1年前4kg近くあった体重は約3kgちょっとに。
血液検査の結果で「猫甲状線機能亢進症」と診断されました。そして、先生から、この病気は基本的には根本的な治療がなく一生付き合っていく病気であること、投薬治療がずっと続くこと、肝臓や腎臓など他の内臓に負担が大きくかかるため、その病気になる可能性もある……などなど、たくさんのお話を聞きました。
目の前が真っ暗になる、とはまさにこのことでした。
すぐ生死に関わる訳ではないとのことでしたが、ようちゃんの健康に対する認識不足や甘えを思って、猛烈に反省をしました。あんなに呑気に暮らしていたようちゃんが病気を患っていたなんて……。それに気づかなかったなんて……。
後悔ばかりする毎日でしたが、飼い主の気持ちの暗さは猫に伝播するのか、私がずっとジメジメしていると、ようちゃんも心なしか元気が無くなってしまうのです。
投薬治療や定期的な点滴を文句もいわずがんばっているようちゃんを見て、私が泣いてちゃダメだなと、心を改めました。
私はようちゃんから、たくさんのことを教えてもらっています。ようちゃんはとてもマイペースに、病気である自分を受け入れて自分自身の身体と心と向き合っているように見えます。
過去への後悔もなく、未来への不必要な不安もなく、ただ淡々とありのままの「いま」をのんびり、きっと楽しく、生きています。マインドフルネスってこのこと? そんな姿に私は何度も胸を打たれました。
猫に教わることって本当にいっぱいあります。
砂原 文(すなはら・あや)
写真家。
明治大学政治経済学部卒業。インテリアや料理など、暮らしまわりの雑誌や書籍の撮影で活躍。ほか、写真展なども開催している。夫、娘、猫2匹と暮らす。写真集『pili』が発売中。
Instagram:@trans_parence721