• ものだけでなく、暮らしに向かう自分の気持ちも心地よく片づいている。すっきりと暮らすとは、そういうことなのかもしれません。イラストレーターの山本祐布子さんに、新しい暮らしの中で見つけた答えと、大切にしている心がけについて聞きました。
    (『天然生活』2019年10月号掲載)

    毎日小さなことを、少しずつ積み重ねる

    房総半島の東部、千葉県大多喜町で暮らすイラストレーターの山本祐布子さん。

    夫である江口宏志さんとともに、日本初のボタニカルブランデー蒸留所「mitosaya薬草園蒸留所」を立ち上げました。

    ハーブや果実の香りと風味をぎゅっと閉じ込めた美しいブランデー、園内でとれる季節の葉と花をふんだんに使ったお茶など、オリジナルのプロダクトを続々と発表しています。

    画像: mitosaya薬草園蒸留所のオリジナルハーブティーは、すべて山本さんの手づくり。季節の植物を、心の赴くままに組み合わせ、絵を描くようにブレンドしていく

    mitosaya薬草園蒸留所のオリジナルハーブティーは、すべて山本さんの手づくり。季節の植物を、心の赴くままに組み合わせ、絵を描くようにブレンドしていく

    家族は夫妻とふたりの娘の4人。新事業のために引っ越してきたこの町での暮らしは、今年で3年目に入りました。

    「ここはもともと県立の薬草園だった場所。資料館や展示室の入っていた建物を改修しながら暮らしているんですが、住まいとしてつくられているわけではないので、最初のころはここでどう生活すればいいのか途方に暮れていました。

    試行錯誤をしながらたどり着いたいまの私なりの答えは、『小さい部分に目を向ける』こと。

    それまでとは違う仕事、違う住まい、そしてどんどん成長していく娘たちの子育てと、そのすべてを同時に見るのは無理だし、自分ひとりで担うのも無理だとわかったんです。

    だったらそのときに自分ができる小さなことを、毎日少しずつ積み上げていこう。そうすればそれなりになるんじゃないか、って」

    そう考えるようになったのは、月に一度のペースで行う蒸留所の開放日「オープンデー」を経験したことも大きかったそう。

    ブランデーの試飲にランチの提供、物販、展示など、当日に向けてどんなスケジュールを組み、だれに声をかけ、どう動きながら進めていくか。その試行錯誤は、日々の家仕事を考えるうえでも大きな学びとなりました。

    昨日の自分の小さな仕事が今日の自分を楽にする

    「すっきりと暮らすためには、気持ちが整っていることが大事だと思います。だからどうすれば心が平らでいられるかを考えて、次の行動を決める。

    家事はひとり作業だけれど、実は過去の自分に支えられているものなんですよね。昨日の自分がやっておいてくれた小さな仕事が、今日の自分を楽にしてくれる。

    だから今日も明日の私のために花を摘んで、ボトルを拭いて、洋服を選んでおくんです。明日の私がしっかり走れるように」

    新しく充実した挑戦の日々。どんな多忙のなかにあっても山本さんがその暮らしをすっきりと心地よく営んでいけるのは、自分自身との協力態勢がつくられていることが理由のようです。

    「私の最大の味方は、私。もうひとり自分がいると思うと心強いでしょう?」

    〈撮影/馬場わかな 取材・文/片田理恵〉

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    山本祐布子(やまもと・ゆうこ)

    1977年生まれ。イラストレーター。千葉県大多喜町にあるmitosaya薬草園蒸留所代表。2児の母。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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