• 88歳でひとり暮らしの多良美智子さん。 料理歴70年、調理師免許ももっている多良さんは、日々の中で食事が一番の楽しみ、元気の源だといいます。栄養も考えた、朝食、昼食、夕食について教えていただきました。好きなものを少量ずつ楽しむ、豊かな食卓です。
    (『88歳ひとり暮らしの元気をつくる台所』より)

    朝は毎日健康スムージー、夜は晩酌。料理するのは昼の1食

    毎日の食事時間を決めているとお話ししましたが、内容もパターン化しています。

    毎日3食の献立を考えるとなると大変です。朝食はスムージーにゆで卵とりんご、夕食はお酒と豆腐、つくりおきの副菜など冷蔵庫にあるもの1〜2品で固定。

    3食のうち、朝夕の2食については考えなくていいようにしています。あらためて「つくる」となるのは、昼食だけ。1回だけだから、楽しんでつくることができます。

    朝食はスムージーが主役

    画像: 朝食。毎日同じです。スムージーはコップ1杯分。ゆで卵は一度にたくさんゆでてあります。りんごは小さく薄く切り、食べやすいようにしています

    朝食。毎日同じです。スムージーはコップ1杯分。ゆで卵は一度にたくさんゆでてあります。りんごは小さく薄く切り、食べやすいようにしています

    朝食のスムージーは夫の生前から、健康のためにと2人で飲んでいました。当時は牛乳にバナナ、りんご、小松菜、すりごまをミキサーにかけていました。

    夫は88歳のとき大動脈瘤で倒れました。手術は成功して退院しましたが、もう固形物は食べられません。ケアマネジャーさんにすすめられた介護食も試してみたけれど、ダメでした。

    唯一、ずっと飲んでいたスムージーだけは、口に入れることができたのです。

    孫(娘の息子)からプロテインを加えることをすすめられ、コップ1杯毎日飲んでいました。

    夫は、退院して50日ほどで亡くなりました。スムージーのおかげか、50日間命をつなぐことができ、私はしっかり看病をして見送ることができました。

    その命のスムージーを、ひとりになってもずっと飲み続けています。スムージーはするりと飲め、食べる時間もかからず、ラクです。

    今は、体に良いと言われているものを私なりに取り入れ、内容を少し変更しました。小松菜、りんごの皮、すりごま、おからパウダー、オートミール、プロテイン、アマニ油、牛乳をミキサーにかけるだけです。

    画像: スムージーに入れるもの。自分なりに組み合わせ、今にいたります

    スムージーに入れるもの。自分なりに組み合わせ、今にいたります

    小松菜は1束を買ってきたら、刻んで保存袋に入れて冷凍しておきます。スムージー1回分は少量なので、残りを野菜室で保存するとしなびてしまうし、その都度刻むのは面倒だったので、冷凍法を思いつきました。

    りんごは実の部分を食べるようになったので、皮だけを使っています。以前、りんごは皮ごと食べていたけれど、歯が弱くなったので最近はむいています。でも、皮に栄養があるので捨てるのはもったいないからと、スムージーに入れることにしました。

    りんごは半個です。さらに、ゆで卵1個も食べます。卵は一度に5個まとめてゆで、冷蔵庫に。

    1日の栄養のかなりの部分は、ここでとれていると思うと、気がラクです。「今日も1日元気で過ごせる」というお守りにもなっています。

    昼食はいちばん手をかけて

    画像: 昼食。ご飯はオートミールです。これにおかずと漬物などをつけるのが定番。日によっては麺類にすることも。 昼食が一番ボリュームがあります

    昼食。ご飯はオートミールです。これにおかずと漬物などをつけるのが定番。日によっては麺類にすることも。 昼食が一番ボリュームがあります

    昼食は、少し手間をかけます。「何を食べようかな」と考えるのも楽しみのひとつです。

    栄養バランスを考えながら、肉や魚、卵などのタンパク質、野菜、炭水化物をしっかりとるように。ここで色々食べているので、朝食、夕食が毎日同じものでも飽きないのかもしれません。

    パスタなど麺類の一品物もありますが、ご飯とおかず、汁物をそろえる「定食式」が多いです.

    ひじき煮やきんぴらなど、おかずは多めにつくってストックし、数日かけて食べることも。

    ごはんは時々、オートミールにしています。オートミール30gに水50ccを入れ、ラップをかけずに600Wの電子レンジで1分半加熱するだけ。

    お粥のような食感のやさしい味なので、和食にも合います。便秘解消にも効果があるように思います。

    夕食は晩酌を楽しむ

    画像: 夕食。晩酌のお供に、ごく軽くつまむものを。この写真の品数は多いほう。もっと少なく、冷奴だけという日も。お酒は本当はもっと飲めますが(笑)自制して

    夕食。晩酌のお供に、ごく軽くつまむものを。この写真の品数は多いほう。もっと少なく、冷奴だけという日も。お酒は本当はもっと飲めますが(笑)自制して

    夕食は、晩酌がメインです。お酒が好きなので、1日の終わりの楽しい時間。

    「今日も元気で過ごせた」と、ほっと一息つきます。毎日、蕎麦猪口に1杯、日本酒をいただきます。

    おかずは日本酒に合うものを少しだけ。メインは豆腐で、冬は湯豆腐、夏は冷奴です。豆腐は、子どものときから大好きなので、毎日食べても飽きません。

    あとは、ちくわを切ったもの、つくりおきの副菜などを添えますが、昼食をしっかり食べているので、夕食は軽めです。そのほうが胃腸の調子もいいし、睡眠の質にも影響しているように思います。

    昼食のタンパク質が少なめだったなと思ったときは、冷凍してある鶏の手羽中に塩こしょうをして、魚焼きグリルで10分ほど焼いていただきます。酒の肴にピッタリだし、タンパク質もとれる簡単メニュー。

    もっとお腹に余裕があるときは、蕎麦や素麺(そうめん)などの麺類を食べて、炭水化物をとることも。

    夕食をもっと食べたいなと思うときは、昼食が軽かったから。自分の体の声に正直に、時にはイレギュラーなことも取り入れています。

    本記事は『88歳ひとり暮らしの元気をつくる台所』(すばる舎)からの抜粋です

    〈撮影/馬場わかな〉


    多良美智子(たら・みちこ)

    昭和9年(1934年)長崎生まれ。8人きょうだいの7番目。戦死した長兄以外はみな姉妹。10歳のとき母を亡くし、父や姉たちに育てられる。小学生の時戦争を体験、被爆する。27歳で結婚後、神奈川県の現在の団地に。8年前に夫を見送り、以来ひとり暮らし。2020年に10代の孫と始めたYouTube「Earthおばあちゃんねる」では、日々の暮らしや料理をアップし、登録者数15万人を超える大人気チャンネルに。料理上手で食い道楽だった父の影響で、昔から料理が好き。「自分の好きなものを好きな味で食べられる」ことが何よりうれしい。65歳のとき専門学校に1年通い、調理師免許を取得。70年に及ぶ料理歴の間に、ありとあらゆる料理をつくってきたが、高齢でひとり暮らしの今は、「調理はごく簡単に」がモットー。著書に12万部のベストセラー『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(すばる舎)。

    Earth おばあちゃんねる
    https://www.youtube.com/c/Earth_Grandma

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    『88歳ひとり暮らしの元気をつくる台所』(多良美智子・著/すばる舎)

    『88歳ひとり暮らしの元気をつくる台所』(多良美智子・著/すばる舎)

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