(『天然生活』2020年3月号掲載)
ひとり作業も、家族の気配を感じながら。サイチカさんの夜長仕事
01 編み物をする
ニットデザイナーのサイチカさんは、1年中、編み物をしていますが、一番はかどるのが、冬の夜だと言います。
お気に入りの豆をミルでていねいに挽いたコーヒーをお供に、夜中から朝まで、編み続けるのだとか。
「納期が迫っているときは、1日中編みますが、昼間は外が明るいせいか、気持ちが落ち着かないんです。冬の夜から朝にかけては、外も静かで、集中して編むことができます」
02 ゆっくり新聞を読む
テレビをほとんど見ないことと、文字を読むことが好きなため、情報を得るのは、新聞が中心です。
「朝刊も夕刊も、夜、読むことが多いですね。朝はお弁当づくりなどの家事もあってあわただしく、時間がないので、夜のほうが、落ち着いて読めます」
文化欄や経済欄などをチェックしながら、世界情勢について考えたり、夫とニュースについて話し合ったりするのも、大切な時間です。
03 朗読を聴きながら糸紡ぎ
羊毛などの繊維をよって、糸をつくり出す糸紡ぎ。昔は自身で紡いだ糸を使い作品をつくっていましたが、いまは作品づくりのためというより、もっぱら“メディテーション”のために行っているそう。
オーディブルやラジオなどで、小説の朗読を聴きながら、糸を紡ぎます。
「糸が切れないよう適度に集中しつつ、何も考えずに無心で単純作業をくり返すので、心のざわつきが落ち着くんです」
04 煮こみ料理をつくる
冬の定番料理は、丸鶏をじっくり煮込んだスープと、りんご煮をパイシートで包んだアップルパイです。
「夜、編み物をしながら、よくつくります。煮込み系は、ずっと火のそばについていなくてもいいので、ながら料理にぴったりです。圧力鍋でつくるのもいいけれど、時間をかけて煮たほうが、不思議とおいしい気がします」
05 体がほぐれるヨガをする
友人に誘われ、ヨガを始めて2年半。肩こりが改善され、体幹も鍛えられている気がするそう。
「運動が好きで、夏は区民プールに毎日行くのですが、冬はプールの回数を減らし、代わりにヨガを毎晩30分くらい、行っています。バレエを習っている娘と一緒にすることもありますよ」
編み物でこり固まった肩甲骨をほぐし、体をゆるめるヨガは、リラックスでき、睡眠も深くなるといいます。
編み物がはかどる夜は、家族との団らんも楽しみ
「娘が生まれてからというもの、夜の早い時間に一度寝てしまい、夜中に起き出し、明け方にまた寝るという生活をしています。ですから夜が2回ある感じですね」と語るのは、ニットデザイナーとして活躍するサイチカさんです。
冬の夜は、昼間や日が長い季節には気持ちがふわふわして集中しづらい仕事もがぜんはかどります。
「静かですし、夜が長いせいか、まとまった時間をとることができるんです。キッチンを背にリビングで編み物をすることが多いので、気分転換に煮込み料理をつくりながら、編むことが多いです」
新聞を読んだり、糸を紡いだりといった自分のために欠かせないことをするのも、夜が中心です。
「昼間は家事や仕事があってせわしないので、夜のほうが落ち着いてできます。短くてもいいので、考えごとをしたり、集中したりする時間は、必要ですよね」
冬の夜は、なぜか家族もリビングに集まってきて、本を読んだり、勉強をしたりしているそう。
「夏は私がセーターを編んでいると、暑苦しいと思うみたいですよ。冬は毛糸でもこもこしているのがかえっていいのか、そばにいることが多いですね。一緒にヨガをすることもありますし、家族の気配を感じながら過ごせるのは、いい時間だと思っています」
〈撮影/小禄慎一郎 取材・文/長谷川未緒〉
サイチカ(さい・ちか)
ニットデザイナー。文化服装学院卒業。服づくりとニットとデザインを学ぶ。子育てを機に、2010年から雑誌や書籍、メーカーなどへのニットデザイン提供を始める。
インスタグラム:@saichikaknit
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです