(『天然生活』2022年12月号掲載)
湯船につかって体と心を健康に
毎日のルーティンに組み込まれている入浴。ポイントを押さえて入浴するだけで、自然と体の調子を整え、健康を保てます。
「日本では95%の家庭の自宅に浴室があります。そういう意味でも、最も身近ですぐにできる健康法が入浴なのです」
そう語るのは、お風呂や温泉の医学的効果に詳しい温泉療法専門医・早坂信哉先生です。
基本の入浴方法
● できれば毎日
● 40℃で10分間
● 全身浴
「毎日湯船につかっている人は、週に2回以下しか入らない人に比べて、介護状態になるリスクが3割も少ないという調査結果があります。ほとんど毎日湯船につかっている人と週2回以下しか入らない人を比べると、毎日湯船につかる人のほうが、心筋梗塞・心臓突然死が35%、脳卒中で26%、脳出血にいたっては46%も低くなります(※1)」
毎日の入浴習慣は、体だけではなく心にもよい影響を与えます。湯船に体を沈めると、ゆったりとした幸せな気持ちになれるもの。
毎日入浴すると
● 心疾患、脳卒中、糖尿病を防ぐ
● 免疫力が高まる
● 幸福度が高まる
「これは湯船につかることによって、ストレスホルモンの『コルチゾール』が減り、幸せホルモンの『オキシトシン』が増えることに関係しています」
※1 出典:Ukai T, et al.Heart 2020;106:732-737
湯船につかると血流がよくなり免疫力&代謝がアップ
このような入浴の効果は、体温が高くなり、血管が広がることで血流がよくなることにあります。
「体内に酸素や栄養素を届けて代謝を促す血流は、健康の土台。体温が高く血流がよくなると、免疫力がアップし細胞が活性化。代謝がよくなりデトックスもできるので、体を若々しく保てます」
湯船につかると肌が潤い、スムーズな血流はターンオーバーを促すなどの美容効果もあります。
ただし、シャワーを浴びるだけでは効果は期待できません。大切なのは「40℃のお湯に肩までしっかり10分つかる全身浴」です。
より免疫力を高める入浴方法
基本ルールは「毎日・40℃のお湯に10分・肩までの全身浴」の3つだけ。下記の腹式呼吸を取り入れると、より入浴効果を高めることができる
1 眼を閉じる。
2 腹式呼吸で3秒息を吸う。
3 口をすぼめて5秒かけて息を吐き出す。
4 1~3を繰り返し行う。
このようにいいことずくめの入浴健康法ですが、下記のように体調が優れないときは無理をしないことも大切です。
こういうときは入浴を避けよう
● 入浴前の上の血圧が160以上
● 入浴前の下の血圧が100以上
● 入浴前の体温が37.5℃以上
当たり前の習慣が健康法に
入浴は手軽な健康法。
難しく考えずに、お風呂タイムを楽しみましょう。
日本人にとっては、お風呂で湯船につかるのは当たり前の習慣です。
「1日の終わりにお風呂に入るのが楽しみ」という人も多いことでしょう。健康法の多くは続けるのに努力が必要ですが、入浴はいつも通りに湯船に肩までつかればいいだけ。がんばってなにかをする必要がない、究極の手抜き健康法といえます。
「入浴は体を清潔にするだけでなく、皮膚の体温を0.5℃上げることで全身の血流が3〜5倍にアップ。その結果、病気や介護を予防し、若々しく元気でいられます。基本の正しい入浴法だけ守れば、あとは自分の体調や気分に合わせて入浴法を工夫してください」
たまには気分転換を兼ねて、スーパー銭湯や温泉に出かけてリフレッシュするのもおすすめです。
「高齢になると入浴が面倒になりますが、銭湯に週2回通うだけで高齢者の体力がアップしたというケースも。外出する、人に会って話すという機会になるのも、銭湯を楽しむメリットですね」
<監修/早坂信哉 イラスト/植松しんこ 取材・文/工藤千秋>
早坂信哉(はやさか・しんや)
温泉療法専門医。東京都市大学人間科学部学部長・教授。お風呂や温泉に関する医学的研究の第一人者。著書に『入浴は究極の疲労回復術』(山と渓谷社)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです