(『天然生活』2021年5月号掲載)
一日の予定や献立決めは、すべて朝のうちに
さっと身支度を済ませたら、体は家事モードに。
「なかなかエンジンがかからない」午後に比べ、朝はテキパキと動けるといいます。
「とくに大事なのは、その日の予定や夕食の献立を朝のうちに決めるということ。そうすれば、その日一日を時間に追われず、精神的に余裕をもって過ごせます。たとえ外出する日でも『帰ったら夕食は何にしよう』とか『帰ったらこれをしなくては』と外出先で考えずにすみ、ゆったりとした気持ちで楽しめるんです」
無理なく、できる範囲で、段取りよく
とくにここ数年は、平日の夕食は長男家族と長女家族を合わせて9人分をつくる日々。
段取りをつけておくことはとても大事です。
「朝の早いうちから、できるところまで夕食の下準備をしておきます。たとえば今日の夕食はコロッケなので、朝に衣をつける前の段階まで準備を終わらせておくの。夕方に孫が帰ってから一緒に揚げる約束をしているんですが、ここまでしておけば、あせらずにすむので失敗も少ないでしょう。不思議なもので、気持ちのあせりは味にも出てしまうんですよ」
夕食の下準備以外にも、掃除や整理整頓など、体が動く朝にできることをやっておくことが、坂井さんがいつも穏やかにいられる秘訣のようです。
とはいえ「こうしなくては」という気負いはありません。あくまでも、自分が無理なくできることを、できる範囲で。
40年ほど続けている、毎朝仏壇へコーヒーをお供えする習慣も、自分自身が飲むために淹れるからなのだと笑います。
「本来ならお茶をお供えするんでしょうけどね。でも続けることが大事なのだから、自分流でいいと思うんです」
毎朝、窓から見える四季の変化を楽しんで
出勤する長男に、リビングの窓越しに手をふるのも、朝の楽しみのひとつ。
起きる時間にはまだ真っ暗だった冬から、少しずつ明るくなってくる春へと、窓から見える景色も、四季ごとに刻々と変わっていきます。
「春に木々が芽吹いたり、花が咲いたりするのを見ると、やっぱり気持ちが開放的になりますね」
庭にはサルスベリやアジサイなどの木が。初夏には、これらの花が咲くのも楽しみです。
坂井さん流 一日のリズムをつけるスイッチの切り替え方
好きなものや習慣が家事も楽しくしてくれます。朝から気分よく家事に取り組むための、坂井さんのスイッチです。
好きなお盆に料理を載せて
「木のお盆が大好きで、鎌倉のお店などで少しずつ買い集めてきました」
朝食と昼食用はこれ、夕食用はこれ、お客さまへのお茶用はこれなどと、用途を決めて使い分けています。そうすることで三度の食事にもメリハリと楽しさが生まれます。
「お盆に載せるだけで料理の見栄えもよくなるし、食卓にリズムが生まれる気がします」
使ったものはすぐリセット
すべてのものに指定席をつくり、使ったらすぐに元に戻してリセット。これは坂井さんの譲れない決まりです。
朝食後も使った食器は洗ったらすぐにふいて食器棚にしまいます。
「次に家事にとりかかるとき、マイナス、つまり前に使ったものを片づけるところから始めるのは気が重いでしょう。リセットしておけば、いつでも気分よく家事に取り組めます」
〈撮影/柳原久子 取材・文/嶌 陽子〉
坂井より子(さかい・よりこ)
1946年生まれ。主婦としての豊富な経験を生かし、やさしい家庭料理や暮らしの知恵を伝授。幅広い世代の女性から支持を集めている。著書に『暮らしをつむぐ』『受け継ぐ暮らし』(ともに技術評論社)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです