(『天然生活』2020年2月号掲載)
自分の理想にしばられず、ときと場合で柔軟に
料理家の松本朱希子さんは、3年前に出産し、母となりました。それ以来、料理の仕事は少し控えめに。そんな松本さんから産後間もなくのときに届いた便りが印象的でした。
「お元気ですか? 私はいま子育てにハマっています」

料理で気をつけていることは旬の食材を多く使うこと。「栄養価もおいしさもその時季が最高だと思います」
なんとも「らしい」ひと言です。仕事、人づきあい、家事など、目の前のことにひたむきに真摯に取り組む女性。何でもとことん一生懸命という印象です。
でも、その「とことん」に変化の兆しがあったようです。変化を運んできたのは、娘の橙(ゆず)ちゃん。

「娘は食べることが大好きなので、料理もつくりがいがあります」
「ときには『ま、いっか』と、いい意味で諦められるようになりました。昔は『こうでなきゃ』って自分で決めたら、それをストイックなほどに突き詰めていたんです。でも、子どもがいたら自分の都合で物事は進まないですからね。ルールや理想を少しゆるめて、そのときにできる範囲でやれればいいのかなって思っています」
たとえば、食卓の品数はグッと減りました。一品料理で完結なんていうこともしょっちゅう。
野菜をたっぷり入れて一品のなかでおいしく栄養がとれればよしという考え方です。
かつおだしも鶏ガラスープも、無添加のものなら顆粒のお手軽タイプだって使います。

娘さんの洋服づくりにハマり中。ここには力を入れて
「『こうしなきゃ』と無理をして、余裕がなくなり、笑顔じゃなくなったら元も子もない。家族も健やかには過ごせませんものね」
すぐに薬に頼らない

不調は体からのサイン。薬でその不調を封じ込めるのではなく、自然治癒力を高め、治すようにしています。
松本家で万能に活躍しているのが梅醬番茶。風邪をひきそう、食が進まない、旦那さんが二日酔いなど、さまざまなときに登場します。

湯飲みに梅干しを入れ、しょうがのすりおろし、しょうゆ少々を垂らす。そこに熱い番茶を注ぎよく混ぜる
胃腸が弱っているときには葛粉を料理に使うことも。どちらも体の中からポカポカに。
自家製ヨーグルトを毎朝食べる

整腸作用や免疫力アップ効果があるとされるヨーグルトですが、それ以上の力をもつと知人に聞き、ケフィアヨーグルトを食べています。

ケフィアのタネ菌と牛乳をヨーグルトメーカーに入れ、指定の温度と時間にセットするだけ
「含まれる酵母菌が発酵し続け、販売過程で容器破損の恐れがあるため製品の状態では販売できないそう。だからタネ菌を買い、ヨーグルトメーカーで手づくり。胃腸が元気なのは大切ですよね」

季節の果物でジャムをつくる。写真はみかんジャム。「娘も手伝ってくれ、素材や調理法などいろいろと興味をもってくれます」
\ 大好きなジャムでたくさん食べられるよ /

植物からエネルギーをキャッチ

いまの住まいは大きなベランダが気に入って引っ越してきました。
そこいっぱいに植木鉢を並べています。家の中にも植物はたくさん。

ベランダ、室内ともにさまざまな植木鉢が。「つる性で伸びていくものや、食べられる実がなるもの、また、1年草より多年草を選ぶことが多いです」
「植物からは生き生きとしたいいエネルギーが出ていていやされます。生き物のお世話をする、気にかけるという行為も、日々、前向きな気持ちを与えてくれます。娘にも育む心が生まれているはず」

ガラスの大きなジャーで熱帯魚・テトラを飼育。「魚が好きな娘にと、飼い始めました。水槽の中ですいすい泳ぐ魚を見ているとこちらまで気持ちよくなります」
<撮影/砂原 文 取材・文/鈴木麻子>
松本朱希子(まつもと・あきこ)
料理家。季節の食材を多く取り入れたまっすぐな料理を提案する。著書に『かえる食堂のおやつの本』(扶桑社)など。http://www.kaeru-shokudou.com
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです