(『天然生活』2024年1月号掲載)
心地よさを循環させる手づくりのある暮らし
夫の太陽さんはプロダクトから企業コンサルまで行うデザイナー、妻の詩織さんはかご作家。ふたりとも手を動かすのが好きなご夫婦です。
デザインの仕事をしていることもあり、家はレイアウトの実験の場と捉えていることも、空間が整う秘訣なのかもしれません。
気に入ったアート作品に出合ったら、住まいをキャンバスにデザイン思考が始まります。
飾りたいアートを主役に、豊かな空気感を生む余白や周囲に置くものとの関係性を考える。そうすることで自然と家が片づいていくと言います。
「人によってはものを増やしていると思うかもしれないですが、飾ることで整うという感覚がありますね」
暮らしていると利便性や要不要を追求しがちですが、本質的に大切なのは暮らしのなかで「うれしい」「楽しい」という気持ちが生まれること。
「違和感をためず、心地よさが循環する方を大切にしたいと思っています」
すっきり整える
壁+箱使いですっきり
安田家を見ると、壁のあちこちに箱が取り付けてあったり、柱にフックが打ってあったり。
「『とりあえず床に置く』が増えるほど散らかるんです。だからすかさず釘やネジを打って、引っ掛けられる場所をつくる。床面積が見えてくると部屋はすっきり見えますよ」
壁に釘が打てなければ、木製の家具の端に打つ手も。
すっきり整える
あえて見せる収納
「扉付きの棚を“面”で捉えるとひとつの塊に見えてしまうので、部屋が重い印象になる」と、太陽さん。部屋をデザイナー視点で考えています。
見せてもいいものは、あえてオープン収納した方がさまざまな色によって空間にリズムが生まれ、軽やかな印象に。
一目瞭然なので物量の把握にもなり、ものが増えることも防いでくれます。
すっきり整える
アートは魔法のほうき
好きなアートを手に入れたとき、安田家では模様替えスイッチが入ります。
「この絵にはどのくらいの余白が必要か」「何と一緒に飾ったらいいか」と考えているうちに、周りに置いてあるものが気になり出し、どんどん家が片づくのだそう。
実用的なものではないけれど、アートがひとつあるだけで空間が整う、まさに魔法のほうき。
運気アップの整えるポイント
シンプルな神棚
子どもが産まれたころから、人からお札をいただくようになったり、毎年の氏神参りでお札や破魔矢が集まるようになったという安田家。
飾っておける棚をとL字金具と板でつくりました。
「やっぱり見守られている気がしますね」
家の中に植物を
ダイニングやリビングに観葉植物を飾るだけでなく、家の敷地で育った植物を家の中に取り入れることも習慣に。
季節を感じるコーナーになり、心にも余裕が生まれる気がすると詩織さん。
子どもにとってもよい対話になっています。
手づくりのしめ縄
毎年、年末につくっているしめ縄。
いまの暮らしになじむシンプルなものをと、太陽さんの川越の事務所でもワークショップを行っています。
日本の習わしや行事を取り入れ、一年のめぐりを感じることは心を整えることにもつながるよう。
<撮影/林 紘輝 取材・文/竹田理紀>
安田太陽、詩織(やすだ・たいよう、しおり)
太陽さんは、大学でデザインを学び、家電ベンチャー企業にて9年間、その後コンサルティング会社へ転職したのち、2022年に自身のデザイン事務所「THE SUN」を設立。@https://thesun.design/ 詩織さんは「itashiori」として、2017年より作家活動を開始。さまざまなギャラリーなどで個展を行っている。インスタグラム@itashiori
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです