エレガントさを纏う、大人の器がお出迎え
阪神本線「芦屋駅」のほど近くに立つ趣のあるレンガづくりのビルに、今回ご紹介する「bonton.」はあります。店内では、窓からたっぷり入る陽光に器がやさしく包み込まれ、心地よさそうに並んでいます。陶器や磁器、ガラスなどが揃いますが、メインはシックで女性らしい雰囲気の器たち。
そんな器を選んでいる店主の横井れい子さんは、祖父母が瀬戸物屋を営む姿を見て育ち、「自分も歳をとったら、小さなお店をやって店先で座っている、そんな日々を送れたら」という夢を抱いていたと話します。
![画像: 2006年9月にオープン。中央のテーブルは、朝食、おもてなしなど、テーマを決めて器をコーディネートしています](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/93642518c06aa7f4db821478353b6bb3cad67983.jpg)
2006年9月にオープン。中央のテーブルは、朝食、おもてなしなど、テーマを決めて器をコーディネートしています
![画像: 豆皿、足つきのボウル、右上の照明は、松平彩子さんの作品。木のカトラリーは鈴木 努さんのもの](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/a7d6b8ca9dc7b66513423bb49946ce89d281bc65.jpg)
豆皿、足つきのボウル、右上の照明は、松平彩子さんの作品。木のカトラリーは鈴木 努さんのもの
でもそれは年を重ねてからの夢。まずは会社員をやりたいと、会社勤めをしたそうですが、そんな日常にストレスを感じることもあったそうです。
「気分転換はいつも器で、器に助けられているような感覚でした。店に器を見に行っては購入し、陶器市やクラフトフェアに出掛けたり。会社では、作家もののカップでお茶を飲んでリラックス。休日は、好きなものをつくって盛りつけて、エネルギーを蓄える。だから、いざお店のことを具体的に考え始めたときは、器屋しか思い浮かばなかったんです」
物腰やわらかな横井さん。お店のオープンまでは時間をじっくりかけたのかと思ったら、その反対。「規模が小さいといっても、店を構えるとなると体力がいるはず。早いほうがいいのでは」と考え、44歳で退職し、熱意が通じてこだわりの物件でお店をオープンしたのはその1年後のことでした。
![画像: 入居するビル。年季が入っているかに見えますが、デザイナーが設計した比較的新しい建物。輸入レンガが覆い、ノスタルジックな佇まいです](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/cc6c881c36b2a694d6820dd6a4f6f583592f923c.jpg)
入居するビル。年季が入っているかに見えますが、デザイナーが設計した比較的新しい建物。輸入レンガが覆い、ノスタルジックな佇まいです
「器は、ポップな中にもエレガントさがあるものや、現代の生活に馴染みやすいものを置くようにしています」と横井さん。そんな器に混じって、遊び心のある器の姿も。大きな持ち手がユニークな矢尾板克則さんのマグカップがそれで、「クスっと笑える感じがありながら、大人も楽しめますね」というように、面白味がありながら洗練された雰囲気。個性豊かなラインアップにわくわく感が増します。
![画像: 中央が、その矢尾板克則さんのマグカップ。左が大村 剛さん、右が増渕篤宥さんの作品で、それぞれ形や色にオリジナリティが溢れています](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/ff7112970b019acada9cda61e26708014b992efc.jpg)
中央が、その矢尾板克則さんのマグカップ。左が大村 剛さん、右が増渕篤宥さんの作品で、それぞれ形や色にオリジナリティが溢れています
熱量の高い、想いが込められた器を
そんな横井さんに、いち押しの作家さんのアイテムをご紹介いただきました。
まずは、宮崎県小林市で作陶する、増渕篤宥(ますぶち・とくひろ)さんの器です。
![画像: リム部分の彫り模様に、釉薬がかかったお皿。右が「黄釉釉(きゆうゆう)象嵌リムプレート」、左が「青釉釉(あおゆうゆう)象嵌リムプレート」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/3a3698a0e056f843db4784569f637127f0cec059.jpg)
リム部分の彫り模様に、釉薬がかかったお皿。右が「黄釉釉(きゆうゆう)象嵌リムプレート」、左が「青釉釉(あおゆうゆう)象嵌リムプレート」
「最初に増渕さんの器を見たのは、東京の器屋さんでした。モノトーンのトクサ模様が施された器だったのですが、やさしくモダンな雰囲気が素敵で。その後も、彫りや透かし模様など、新しいことにどんどん挑戦されていらっしゃり、とても尊敬しています。
この『象嵌リムプレート』は、リム部分に美しい彫り模様が施されたもの。まるで機械のような緻密さなのですが、手彫りならではの温か味もあって。釉薬に濃淡があり、それも味わい深いですね。増渕さんはもともと専門学校でデザインの勉強をされていて、デザインに相当のこだわりが見受けられます。
![画像: 近くで見るとこの通り。オリジナルの刃物を使うそうですが、手彫りとは思えない精巧さです。写真では見えにくいですが、左はものすごく細かな線模様](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/dd01d5f12def9cbc4ad1589385d80774e667ad61.jpg)
近くで見るとこの通り。オリジナルの刃物を使うそうですが、手彫りとは思えない精巧さです。写真では見えにくいですが、左はものすごく細かな線模様
このお皿は自宅でよく使っていますが、どんなときも大活躍してくれます。和洋中の料理をはじめ、チーズの盛り合わせをのせたり、ワンプレートとして使ったり。お好み焼きなんかをのせても、意外としっくりきますよ。アンティーク感がありつつモダンさもあるので、盛りつけるものによってイメージが変わって面白いです」
お次は、石川県小松市で制作する、和田純子(わだ・じゅんこ)さんの器です。
![画像: 繊細で優美な「カップ&ソーサー circolo bianco(サーコロ ビアンコ)」と「ティーポット丸型 circolo bianco」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/966da04a8fe2a7d027032b85ceb549ff2f4d7a60.jpg)
繊細で優美な「カップ&ソーサー circolo bianco(サーコロ ビアンコ)」と「ティーポット丸型 circolo bianco」
「耐熱ガラスというと、厚手で重いイメージがあったので、お花の形だったりをガラスで繊細に表現されている和田さんの作品を初めて見たときは、衝撃的でした。ガラスなので衝撃を与えたらもちろん欠けたり割れたりしますが、普通の吹きガラスと同じように扱えるほど、丈夫です。
こちらは、やわらかな白の丸模様が愛らしい『circolo bianco』シリーズ。ポットには、お客さまが『茶こしがついているとうれしい』とおしゃっていたのを和田さんが取り入れて、茶こしが設えてあります。もちろん茶こし部分もガラスで。注ぎ口のキレがよくて使いやすく、とても人気があります。
和田さんはとても真面目で可愛らしい方ですが、情熱的な一面も。耐熱ガラスの器づくりの技術をさらに高めたいとの想いから、イタリア人の方に直接交渉されて、イタリアのムラーノ島まで技術を学びに行かれていらっしゃいました」
最後は、長野県伊那市で制作する、菅原利彦(すがはら・としひこ)さんの器とトレーです。
![画像: 色漆が施された「カップ」はシックな色合い。右の色は「錆浅葱」、左は「鼠」。シンプルなフォルムが素敵な「長方トレー」も、色漆によるもの](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/7d04d6327180730b2ecd59da4a1b1246c6b6c7c9.jpg)
色漆が施された「カップ」はシックな色合い。右の色は「錆浅葱」、左は「鼠」。シンプルなフォルムが素敵な「長方トレー」も、色漆によるもの
「作家さんを探しに、松本のクラフトフェアに行った際、ピンクや水色の美しい色味の器が目に止まって。吸い寄せられるようにして行くと、菅原さんのブースでした。菅原さんの色漆は、色の出方がとても上品。この『カップ』もとても素敵な色合いです。
光沢のある漆器だと指紋が気になりますが、菅原さんの漆器は指紋が目立たないので使いやすいと思います。この『長方トレー』は、お茶をお出しする際にとても重宝しますよ。お菓子を添えてのせると、おもてなし感がすごく出ます。
![画像: 「長方トレー」は象牙色もあります](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2022/09/01/8f620f53bd8ef8c72124c0744f0d1becb3fac332.jpg)
「長方トレー」は象牙色もあります
漆器作家の方って分業されている方も多いのですが、菅原さんは木地づくりからすべておひとりで手掛けているので、希望のイメージやサイズを伝えてお願いさせていただきやすくて。それにたいして、いつもいろいろご提案くださるので、とても頼もしいです」
横井さんは、作家さんを選ぶとき、どんなことを大切にされているのでしょうか。
「作家さんが大切につくった作品をお預かりして、お客様にご案内するので、やはり信頼関係を築けるかが一番大切ですね。意見交換ができたり、こういうことをしていきたいという想いがあって、その中でつながっていけるのが、大切だと思うし楽しい部分でもあります。
そしてもうひとつ意識しているのが、その作家さんがいかに強い情熱をもって取り組んでいらっしゃるかということ。初めてお会いして、作品づくりのことを説明いただくとわかったりするのですが、そこはかとない情熱を感じると、ぜひお願いしたいと思いますね」
会社員時代に、いつも器を心の拠り所にしていた横井さん。器で人の暮らしがより豊かに、楽しくなるよう、作家たちと一緒に取り組んでいきたいという想いは、器への恩返しの気持ちの表れなのかもしれません。目を楽しませ、使い勝手もいい器が多く揃う「bonton.」へ、ぜひ足を運んでみてください。
※紹介した商品は、お店に在庫がなくなっている場合もございますので、ご了承ください。
<撮影/横井れい子 取材・文/諸根文奈>
bonton.(ボントン)
0797-34-1678
11:00~19:00
水・木休
兵庫県芦屋市公光町10番10号 B.Block 2階
最寄り駅:阪神本線「芦屋駅」から徒歩約1分、JR「芦屋駅」から徒歩約9分
http://bon-ton.co.jp/
https://www.instagram.com/bonton_ashiya/
◆前田麻美さんの個展を開催予定(9月23日~9月28日)
◆大中和典さんの個展を開催予定(10月21日~10月26日)
◆増渕篤宥さんの個展を開催予定(12月2日~12月7日)