普段使いの器から、日曜を彩る器まで
「“沖縄のカケラ”と呼んでいるのですが、沖縄で作陶されている方や、作陶場所は沖縄でなくても沖縄にゆかりのある方の作品など、各地に散らばった沖縄文化の欠片を集めてご紹介しています」と話すのは、「GARB DOMINGO」の店主、藤田俊次さん、日菜子さんご夫妻です。お店には、陶器や木工、ガラス、漆器が揃うほか、ときには、紅型や琉球藍で染めた布物、芭蕉紙でできた雑貨など、地元の素材を生かした作品も並びます。
俊次さんは東京出身。日菜子さんは沖縄出身。東京で暮らしていたふたりは、日菜子さんの地元、沖縄に里帰りするたびに、器を見てまわったのだとか。
「沖縄には陶芸家が大勢いるというので、始めは観光気分で窯元などに足を運んでいました。沖縄の焼き物といえば壺屋焼が代表的ですが、そうやって見てまわるうちに、壺屋焼とは違う独自の感性でつくりあげる作家さんもいらっしゃるのがわかって。沖縄に移住して器屋をやろうと思ったときに、そういった作品を一堂に会して見られる場所にしようと、セレクトを始めました」
お店のある場所は、国際通りの近く、“国際通り裏”と呼ばれるエリアですが、お店を始めた15年ほど前は、いわゆるシャッター街で、人通りの少ない寂しい場所だったそう。でも、もともと建築デザインを生業にし、街づくりに強い関心のあった俊次さんは、「シャッターがひとつずつ開いていくように、この場所を活気づけたい」という想いを抱いたといいます。
そこで、器のほかにも絵画などの展示会を催したり、仲間と小冊子をつくって販売するなど、精力的に活動。「けして私たちの活動が影響を与えたわけではないのですが」と藤田さん夫妻はいいますが、それでもいつしか、自然と人がこのエリアに集まるようになり、いまでは新しい店も増えつつあるのだとか。
店名の『ガーブ・ドミンゴ』の“ガーブ”は、近くを流れるガーブ川からとったもので、“ドミンゴ”は、スペイン語で日曜や安息日を意味する言葉だそう。「店名にあるとおり、家での休日が潤うような、たとえば、絵皿などアート作品的なもの、花器、コンポート、ピッチャーなどにも力を入れています」と日菜子さん。それらの道具は、目に入るたびに心が浮き立つ美しいものばかり。ぜひ手にとってみてください。
伝統に根ざしながら、現代に似合う器を
そんな藤田さん夫妻に、いち押しの作家さんのアイテムをご紹介いただきました。
まずは、埼玉県行田市で作陶する、岩田智子(いわた・ともこ)さんの器です。
「岩田さんは埼玉県で作陶されていますが、沖縄県立芸術大学で絵画を学ばれました。まさに店のコンセプトの“沖縄のカケラ”の方ですね。すべて手びねりでつくられているのですが、最初にものすごく綿密なスケッチをし、余計なものをそぎ落とすようなイメージで成形されています。
『錆化粧広口花器』は、アンティーク感があり、古家具など古いものにもすんなり馴染みます。まるで絵画のような美しい表情をしており、どんな花を生けても様になりますね。『炭化広口花器』は、沖縄の伝統的な黒の釉薬、マンガン釉を使ったもの。最後に手で丹念に磨き上げることによって、奥深いマットな質感が生まれています。
『飾り手カップ』は、岩田さんらしい有機的な形の持ち手が特徴。優雅な気分に浸れるので、ひとりでゆったり過ごす時間や友人を家に招いたときなんかにおすすめです」
お次は、沖縄県読谷村で作陶する、山本憲卓(やまもと・のりたか)さんの器です。
「山本さんは、数々の工房やギャラリーが集まる読谷村の工芸村『やちむんの里』で修業し、大嶺實清氏に師事されていた、とても実力のある方です。沖縄の伝統的な登り窯で焼成をされていますが、土味を生かすのと、薪窯で焼くからこその表情をすごく大切にされていて。
山本さんの器には自然の持つ力強さやおおらかさを感じますが、やさしい雰囲気もあって、普段の料理に寄り添ってくれます。また、それでいてカッコよさも兼ね備えているので、男性や料理人の方にも人気がありますね。『焼締小皿』はまさにそんな器で、毎日活躍してくれますよ。
『フリーカップ』は、お茶やコーヒーのほか、スープなどを召し上がるのにもぴったりです。表面は焼き締めですが、内側には黒い釉薬がかかり、さらに透明の釉薬でコーティングされているので、シミや色移りを気にせず使っていただけますね。そんな実用性の高さも魅力です」
最後は、沖縄県南城市で作陶する、佐藤真琴(さとう・まこと)さんの器です。
「佐藤さんは、沖縄県立芸術大学で陶芸を学ばれましたが、ご主人が陶芸家の佐藤尚理さんで、ずっとそのサポートにまわっていらっしゃいました。そして、4年ほど前に作家デビューをされ、この『平皿』のような、チクチクと糸を縫うようにしてつける表情豊かな模様の作品をつくられています。
まずは下書きをし、柄や色をきっちり決めてから、手作業で模様をつけていくのですが、見ていても気の遠くなるような根気のいる作業で。もともと刺繍がすごくお好きで、ご趣味で布物に刺繍をされていたので、そこからの着想なのではと思います。
器自体は、クッキーみたいに薄くて軽く、おいしそうな感じです。アートとして飾っているという方もいますし、ティータイムなどに登場させると、気分が上がります。佐藤さんは沖縄出身で、地元で作陶されていますが、沖縄のいいところをすべて体現しているようなおおらかな女性。とても愛のある、魅力的な方ですね」
藤田さん夫妻は、作家さんを選ぶとき、どんなことを大切にされているのでしょうか。
「最初にお話ししたように、沖縄にゆかりのある方を中心に選ばせていただいていますが、それよりも軸となっているのは、沖縄の伝統的な、ひいては日本の伝統的なもの、時代性のあるものなど、古きよきものを自分の中に取り込み、それを新しい形に昇華されている作家さんであることです。懐かしさがありつつも、家に持ち帰っていまの時代のものと並べても馴染む、そんな作品のつくり手ですね。
さらに、陶器に限ると、土や釉薬などに沖縄ならではの素材を取り入れている方。また、フォルムはシンプルであることが絶対ですが、テクスチャーにこだわりのある作家さんにも惹かれます」
「私たちはふたりとも、『いいものは長く使える』という考えの環境で育ったので、自然と身の回りのものを大切に選んできて。器を好きになったのも、その延長という感じでした」と話す、藤田さん夫妻。そんな店主ふたりが集めるのは、伝統に根ざした“沖縄のカケラ”たち。一生楽しくつきあえる、よき相棒になるに違いありません。
※紹介した商品は、お店に在庫がなくなっている場合もございますので、ご了承ください。
<撮影/藤田俊次 取材・文/諸根文奈>
GARB DOMINGO
098-988-0244
9:30~13:00/14:30~17:00
水・木休 ※臨時休業はSNSにてお知らせしています
沖縄県那覇市壺屋1-6-3
最寄り駅:ゆいレール「牧志駅」より徒歩12分
https://www.garbdomingo.com/
https://www.instagram.com/garb_domingo/