(『死なないノウハウ』より)
「家賃が払えない!」ときに役立つノウハウ 社会福祉士・横山北斗さん
「家賃が払えない」。特にコロナ禍では私もこのような相談を多く受けた。
派遣の仕事を減らされて家賃を滞納している、大家さんからあと一週間で追い出すと言われている、あるいは、今は多少の貯金はあるが数ヶ月後には家賃を払えなくなるタイミングが来そう、などなど。
自分で払うのが当たり前と信じられている家賃だが、公的な制度などあるのだろうか?
「このような場合、家賃のサポートが受けられる『住居確保給付金』が使えます。原則3ヶ月、最大9ヶ月まで延長できます。対象となるのは、離職(仕事を辞めた)・廃業(自分で会社などをやっていたけど辞めた)後、2年以内であること。もしくは個人の責任・都合によらず給与などの収入が少なくなった場合です。また、貯金が各市町村で定める基準額の6ヶ月以内で、100万円を超えない額であることなどが条件です」(横山北斗さん)
窓口は「生活困窮者自立支援」の相談窓口。名称は市区町村によって違うので注意が必要だ。ネットでは「住居確保給付金+住んでいる市区町村名」で検索すればいい。
具体的な額だが、収入がなく、家賃がその地域の生活保護の住宅扶助以下(東京で一人暮らしであれば5万3700円以下)であれば、家賃の全額が支給される。
収入があったり家賃が住宅扶助より上の場合、地域や世帯人数によって違い、計算式が複雑なのだが、例えば家賃が7万円で、現在の月収が10万円、そしてその地域の「基準額」と言われるものが7万8000円で一人暮らしの場合、4万8000円が支給されるという仕組みだ。計算が複雑なので、直接窓口で聞いてみるのがベスト。
これが最大9ヶ月続き、返済の必要はないのだから条件に合致する人は使わない手はないだろう。
コロナ禍、この住居確保給付金の申請は急増し、20年度は19年度の約34倍、13万5000件の利用となっている。
高齢で賃貸物件が借りられない 相談室ぱどる・原 昌平さん
高齢になったら、賃貸物件に入るのが難しくなると聞きました。派遣なのでローンを組むことも難しく、持ち家など夢のまた夢なのですが、年を取って賃貸物件にまで住めないとなるとどうしよう……と不安です。
「収入や資産がある程度ある人だったら、UR(かつての公団住宅)が借りられると思います。
低所得の高齢者や障害のある人なら、公営・市営住宅が入りやすいでしょう。
もうひとつ、かつて雇用促進住宅と呼ばれたものが、現在低価格の賃貸住宅『ビレッジハウス』となっています。こちらも敷金礼金なしの物件も多く、高齢者でも入りやすいようです。
また、国交省の政策で、『居住支援法人』という仕組みがあります。賃貸物件に入居しにくい高齢者、障害者、母子家庭、外国人などをサポートする民間団体や企業です。居住支援法人を探す時は、都道府県の住宅政策担当課に相談してみてください」
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著・雨宮処凛
作家・活動家。反貧困ネットワーク世話人。フリーターなどを経て、2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版、のちにちくま文庫)でデビュー。2006年からは貧困問題に取り組み、2007年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版、のちにちくま文庫)でJCJ賞を受賞。著書に『非正規・単身・アラフォー女性』(光文社新書)、『コロナ禍、貧困の記録、2020年、この国の底が抜けた』(かもがわ出版)、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)、『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)など多数。
雨宮処凛オフィシャルweb
http://amamiyakarin.com/
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「働けなくなったら」「お金がなくなったら」「親の介護が必要になったら」……。「これから先」を考えると押し寄せる不安。頼る人がいなければ、最悪、死ぬしかないのか? そして自らの死後、大切なペットは? スマホやサブスクの解約は? この先が不安で仕方ないアラフィフが各界の専門家に取材。社会保障を使いこなすコツや各種困りごとの相談先など、人生の荒波の中で「死なない」ための無敵のサバイバル術を一冊に。