に、魚料理をおいしく仕上げるためのちょっとしたコツを教えていただきました。
これさえ知れば、さらにおいしく。魚調理で気をつけるポイント
この春発売されたレシピ本『基本から身につける 季節の魚料理』は、『天然生活』誌上に、2014年から2016年まで掲載された、人気連載「長谷川弓子 季節の魚料理」をまとめたもの。
近茶流宗家・柳原一成氏、柳原尚之氏のもとで日本料理を学んだ長谷川さんが、日本料理から得たセンスと技法を持ち込んで、家庭でもつくりやすいレシピを提案する魚料理の手引書です。今回は、そんな長谷川さんに魚調理のコツを教えていただきました。
魚を自分でおろしたことがないという方も多いと思うのですが、失敗しないコツはありますか。
まず大切なのは、鮮度のよい魚を選ぶこと。というのは、鮮度がよくないと魚の身が軟らかく、おろしにくいからです。
鮮度がいい魚を選ぶには、「魚体が輝いているか」「腹部がしまっていて、肛門から中身が出ていないか」「えらが鮮やかな紅色をしているか」「生臭くないか」などをチェックしてみてください。
魚の構造を理解することも、上手くおろすコツですね。あとは、何度もやって慣れることが大事です。
魚の生臭みをとるのにおすすめの方法を教えてください。
生臭いときは、塩と酢でマスキングするといいでしょう。まず、魚に塩を振りかけてしばらく置き、出てきた水分(生臭み)を拭き取ります。これだけでも臭みはとれますが、その後で酢をかけるとさらに臭いが消え、身も締まっておいしくなります。
また、ねぎやしょうがなどの薬味を多めに加えるのもおすすめ。煮つけなら茹でたごぼうも臭み消しになります。
あとは味噌や醤油といった発酵調味料を利用するのも手。たとえば、西京漬けなどの味噌は、魚に味を含めるだけでなく生臭みを消す効果があります。さばの味噌煮は、味噌の持つ香りと、味噌の臭いを吸着する作用とで、臭みをとってくれます。また、漬け丼などがそうですが、醤油漬けにするのも効果がありますよ。
魚焼きグリルでおいしく魚を焼くにはどうすればいいでしょうか。
焼き魚の基本は「強火の遠火」。表面(盛りつけたときに上になるほう)は4割、裏面は6割程度の火力で焼くといいのですが、グリルでは難しいかもしれません。
そこで、グリルで焼くときのコツは、まず表面を強火で焼いて焼き目をつけてから、裏に返して、中火でじっくりとよく焼くと、おいしく仕上がります。
また、塩をふった後は、できるだけ早めに焼きましょう。大体15分以内が目安です。そのまま何時間も置いておくと、魚の身が締まってしまうので気をつけてください。
煮魚では「生臭みが出てしまう」というお悩みが多いと思うのですが、生臭みを防ぐ方法を教えてください。
白身魚の場合は短時間で煮ることが大切です。魚の大きさにもよりますが、煮る時間は大体7~8分が目安ですね。煮汁が沸く前に入れてしまうと、生臭みが出てしまうので、必ず沸かした中に魚を入れてください。
煮るときに、しょうがや長ねぎなどの香味野菜やごぼうを多めに入れることによっても、生臭みを防げます。長ねぎやごぼうは副菜代わりにもなるので、おすすめですよ。
魚をおいしく揚げるにはどうすればいいでしょうか。
170~180℃の温度で揚げるのがコツです。低温ではからっと揚がりません。また、魚に粉をたっぷりとまぶした後に、余分な粉を落としてから油に入れるといいでしょう。
骨を抜くときに骨に身がついてしまうのですが、どうすれば上手くいきますか。
骨は直線ではなく緩い曲線になっているので、骨抜きを使い骨の角度に沿って引っ張れば、きれいに取れると思います。
魚を調理するときに、あると便利な道具を教えてください。
骨抜き、うろこ引き、牛刀、出刃包丁は魚料理にとても重宝する道具です。ぜひ揃えてみてください。
そのほかに、私が愛用しているのは目ざるです。霜降りにするときに使うと便利なのですが、魚を目ざるに入れてざるごと熱湯の中にさっと入れて、霜降りにします。金ざると違って底面が広く円筒形に近い形なので、均一に早く火が入るんです。あとは、カキを洗うときなんかにもよく使いますね。
魚の本当のおいしさに出合えたら、魚料理がずっと楽しくなるはず。ちょっとしたコツで味わいが変わってくるので、ぜひいろいろ試してみてください。
<撮影/川村 隆 取材・文/諸根文奈>
長谷川弓子(はせがわ・ゆみこ)
東京都出身。料理家、栄養士。明治大学卒業後、社会人経験をしたのち、近茶流宗家・柳原一成氏、柳原尚之氏に師事し、日本料理を学ぶ。現在、聖徳大学短期大学部准教授として、調理実習等を担当する。とくに好きな魚はあじ。「海に囲まれた国に生まれたからには、ぜひ、魚料理に親しんでいただければ」