服を作ってみよう。本を見て。
私は針仕事がめっぽう苦手です。
先輩の女芸人、オアシズ光浦さんは手芸が得意でうらやましいです。羊毛ニードルの作品がとっても可愛いのですよ。
なんでも光浦さんは小学生の頃、初めて針を持ったにも関わらず、返し縫いがひょいひょいできてしまったそうです。
一方、私はと言えば、返し縫いの理論が全く分からず投げ出し、家庭科のエプロンを作る課題では、ズタボロになり果てた哀れな布を提出したオンナです。
そんな私ですが、針仕事には密かな憧れを持ち続けてきました。
きっかけは「赤毛のアン」です。
孤児院で育ったアンは、つんつるてんの服を着ています。
そんなアンのために養母のマリラがミシンで服を作ってあげるのですが、アンは実用的な服より流行りのパプスリーブのドレスに憧れていて……という、お洋服に関する描写が出てきます。
そこで私はハッとするのです。
「そっか、服って作れるんだ。昔の人は作ってたんだよね。うわぁ……自分の好きな服を作れたらどんなにステキだろう……」
そして針を持った私はズタボロのエプロンを作り……って、違う!
想像していたものが現実にならない悔しさから憧れを封印してきましたが、今こそやるべきなんじゃないか?
服を作ってみよう。本を見て。今ならできるかもしれないよ。私の中のリトル久美子がささやきます。
すると不思議……できそうな気がしてくるではないか。
まず、型紙付の本を購入しました。次は布。針と糸はあります。
ミシンは? と思いましたね? ミシンは使いません。なぜなら使い方を知らないからです。
ダメじゃないか。いいえ大丈夫。手縫いで縫いきって見せますぞ。
不思議……なぜか溢れる自信。
洋服には前身頃と後ろ身頃があることを知りました。1番簡単なのはその2つを縫い合わせるだけのブラウスなので、それをチクチク。
ところが素人のくせに、思いつきでタックを入れたせいで後ろ身頃が縮んでしまいました。
でも私はあきらめません。はみ出た部分を切ったり、足りない部分は布を足したり。
この際、本は無視です。
やがて作り方はどんどん自己流に。これは手芸? もはや工作?
その結果、歪んだ着心地の悪いブラウスが出来上がりました。
戦いの痕跡が見える部分は痛ましくて涙が出ます。これを着て出かける勇気? 私にはない。
でも……ミシンがあれば違うのかも。
そしたら絶対上手に作れたよ。リトル久美子がささやきます。
失敗しているくせに、どんどん溢れてくる自信をたずさえて、私、進みます。
白鳥久美子(しらとり・くみこ)
1981年生まれ。福島県出身。日本大学芸術学部卒。2008年に川村エミコとたんぽぽ結成。10年、フジテレビ系『めちゃ2イケてるッ!』の公開オーディションで新レギュラーの座をつかみ一躍人気者に。コンビとしての活動に加え、テレビ、ラジオ、ドラマ、舞台など多方面で活躍中。趣味は、散歩、高圧電線観察、シルバニアファミリー。特技は、詩を書くこと。唎酒師(日本酒のソムリエ)の資格ももつ。