低温でゆっくり熟成し、奥深い味わいに
八王子駅から斜めにのびるユーロードを歩ききり、さらに少し進むと見えるのが、赤と青の鮮やかな外壁。パリの街角を彷彿とさせるお店が、八王子きっての人気店「ぶーるぶーるぶらんじぇり」です。パン好きの間では、クロワッサンのおいしい店としても評判。
店主の草野武さんは、茨城県で名を馳せたパン屋さん「パンダーチザンニコラ」(現在は閉店)で修業した実力派。しかし、その前は会社勤めをしていたそうで、パン職人を目指したきっかけを聞くと、こんな答えが返ってきました。
「アメリカにクライミングツアーで訪れたとき、素晴らしいパンを焼くパン屋さんをみつけたんです。それがなぜかドイツパンだったので、日本で同じようなドイツパンを焼くお店を探したら、『二コラ』に出合って。『二コラ』のパンを食べたら、シェフの元で仕事がしたいと思うようになりました」
パンに使う小麦は、北米産のものを一部使用しますが、メインで使うのは地元の製粉会社にオリジナルでつくってもらっているキタノカオリブレンド。ただそうはいっても、材料のこだわりはないそうで、「必要なものを使うだけです」と潔いお言葉が。
その分、製法で小麦粉のおいしさを十分に引き出すことを考え、よく取り入れているのは、プースラントという製法です。
「成形した後に低温でじっくりと冷蔵発酵する製法です。この方法だと、小麦粉の香りや甘味、うま味をたっぷりと引き立たせることができます。あとは、捏ね上げた生地を0度で冷蔵するブロック冷蔵というやり方もしていますね」
発酵種には、自家製のサワー種やルヴァンリキッド、ポーリッシュ種を使用し、味に深みを持たせたり、パンがおいしく焼きあがるようにしています。なかでも、ライ麦全粒粉100%の「ロッゲンシュロート」は、自家製のサワー種を使って焼き上げたもので、噛みしめるたびにライ麦のおいしさがどんどん増していきます。
一番人気という「フリュイ」は、修行時代を含め20年もの間、大切につくり続けているパンだそうで、リュスティックの生地に特別な処理をし、クランベリーとクルミを生地がつながる限界量までたっぷり入れたもの。朝食に、おやつに、ワインのおともにもぴったりで、そのまま食べても絶品ですが、無塩バターをつけて食べるのもおすすめなのだとか。
旬の野菜やフルーツをたっぷりと使ったパンが並び、季節を感じられるのも「ぶーるぶーる」のいいところ。この新の新作「さつまいもとマイタケのフォカッチャ」をはじめ、旬の野菜をふんだんにのせたタルティーヌなど、食欲をそそるパンが満載です。
ヨーロッパの伝統的な製法を守りていねいに焼くハード系パンから、日本の菓子パン、サンドイッチ、焼き菓子までと幅広く揃ううえに、「たくさんの種類を試してほしいから」と、日替わりパンも10種類ほど用意しています。地元の食卓を充実させるために、真摯にパンを焼き続ける「ぶーるぶーる」。ぜひそのおいしさを堪能してみてください。
<撮影/林 紘輝 取材・文/諸根文奈>
ぶーるぶーるぶらんじぇり
042-626-8806
10:00~19:00
月・火休み
東京都八王子市横山町16-5
最寄り駅:JR「八王子駅」
https://www.boule-beurre.com/index.html
https://www.instagram.com/boulebeurre2006/