‟犬と共に社会に貢献する”。「セラピードッグ」の活動をお届けします
みなさん、はじめまして。認定NPO法人日本レスキュー協会の赤木亜規子と申します。
飛行機が真上を飛ぶ、大阪国際空港(伊丹空港)のすぐ近くで、「セラピードッグ」と一緒にお仕事をしています。
日本レスキュー協会は1995年、「阪神淡路大震災」をきっかけに、「犬と共に社会に貢献する」という理念のもと設立されました。
災害救助犬やセラピードッグの育成・派遣のほか、保護した犬の新しい家族を見つける動物福祉活動を行っています。
この連載を通して、さまざまな場所で「セラピードッグ」という犬が活躍していること、少しでも知っていただけたら嬉しいです。
セラピードッグってどんな犬?
盲導犬や介助犬、聴導犬が、身体に障がいのある人の「からだの一部」となって生活を支えるお仕事をしているとしたら、人の「心」に寄り添い元気づけるお手伝いしている、そんな役割を担った犬が「セラピードッグ」です。
日本レスキュー協会のセラピードッグは、高齢者や障がいのある方が入居されている施設のほか、闘病中の子どもたちが入院する病院を定期的に訪問しています。
そのほか、被災地の仮設住宅や復興イベントに参加するなど、これまでたくさんの方々を対象に「ドッグセラピー」を実施しています。
たとえば、仕事や人間関係がうまくいかず落ち込んで帰った時、愛犬がしっぽを振って迎えてくれる、ただそれだけで心癒され元気になった経験、犬を飼っていらっしゃる方なら誰でもあるのではないでしょうか。
それこそ「ドッグセラピー」。犬には私たち人間にはない、とっても魅力的な力があり、ふれあいを通じてさまざまな効果をもたらすことが期待されています。
実際の活動の様子を交えながら、これから少しずつお伝えしていきたいと思います。
ドッグセラピーにはどんな効果があるの?
少し専門的な説明になりますが、セラピードッグのことを知ってもらううえで、とても大事なことなのでお話させてください。
まず、教育や医療の現場で、心と体の成長のために「犬」を介在させた活動の事を「ドッグセラピー」といいます。(※犬に限らず、馬を介在させたホースセラピーなど、総称してアニマルセラピーといいます)
主に「動物介在療法」「動物介在活動」「動物介在教育」の3つに分類されるのですが、私たち日本レスキュー協会が主に行っているのは2つめの「動物介在活動」。
これは「QOL(クオリティオブライフ)」(生活の質)を保つことを目的としていて、セラピードッグに触れたり、一緒に遊んだり、おやつをあげたり、ブラッシングしたり……。
病院や施設などでは、そのようなふれあいを通して、「緊張感の緩和」「不安やストレスの軽減」「闘病意欲の向上」などの効果が見られます。
効果を最大限に感じてもらうため、「だれに」「なぜ」「なんのために」犬と一緒にそのプログラムを実施するのか、「身体的」「心理的」「社会的」この3つの効果を基準に「ドッグセラピー」の内容を組み立てていきます。
犬種も大きさもいろいろ。日本レスキュー協会のセラピードッグたち
日本レスキュー協会で活動しているセラピードッグは、犬種も大きさもいろいろ。なかには殺処分寸前に保護した元保護犬の兄妹もいます。
しかし残念ながら、どんな犬でもセラピードッグとして活動できるわけではありません。
実際の現場でストレスを感じることなく活動できるかどうか、その適性を見極めるテストを実施し、様々な項目をクリアした犬だけを育成しています。そのポイントは3つ。「人に対して攻撃性がないこと」「温厚な性格で社交性があること」「環境適応能力があること」。
初めての場所や大きな物音、車椅子の方や杖を持った人、様々な環境にも怖がったり興奮したりせず落ち着いていられる犬が向いています。
私たちがセラピードッグを育成する時に大事にしていることは犬種や大きさではなく、その犬が生まれながらに持つ性質を見極めること。犬自身がストレスなく活動できるよう心掛けています。
次回からは、セラピードッグ「にこり」と一緒に、実際の活動の様子をご紹介していきたいと思います。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
赤木 亜規子(あかぎ・あきこ)
日本レスキュー協会でセラピードッグと一緒にお仕事しています。
https://www.japan-rescue.com/
インスタグラム:@japanrescue