セラピードッグの「にこり」です
ここからは、私が担当するセラピードッグ「にこり」の活動を通して、セラピードッグのお仕事をご紹介していきます。
まずは「にこり」の紹介から。「にこり」はゴールデンレトリバーとスタンダードプードルのミックス、今年11歳になるおんなの子です。
初めての人にも尻尾フリフリ、人懐っこい性格に加え、大きくてモフモフの体で出会う人みんなを笑顔にしてしまいます。
「にこり」と対象者さんがつくるおだやかな空気の中にいると、「犬ってすごいなぁ」と改めて感心させられます。
日本レスキュー協会では、必ず1頭にひとりのハンドラー(担当スタッフ)がいて、セラピードッグとして活動するためのトレーニングのほか、毎日の散歩やごはん、身体のケアも含め、すべてのお世話をしながら信頼関係をつくっていきます。
ドッグセラピーの現場では対象者さんはもちろん、犬の安全を守りながら実施するために、ハンドラーと犬との信頼関係がとても大切です。
どんな場所で活動しているの?
日本レスキュー協会のセラピードッグが活動する場所は、大きく分けて次の4つです。
①高齢者や障がいのある方が入居されている福祉施設
②被災地の仮設住宅や復興イベント
③「R.E.A.Dプログラム」を実施する図書館
④闘病中の子どもたちが入院する病院
①福祉施設
福祉施設でのふれあいが、回復と心のケアに
福祉施設では、セラピードッグと一緒にふれあいやゲームを楽しんでいただきます。
たとえば犬にボールを投げてもらうことで腕を動かすリハビリに繋がったり、おやつをあげてもらって喜ぶ犬の姿を見ることで、落ち込んでいた気分が前向きになったり。
なかには、認知症により普段あまり感情を出さない方が、セラピードッグを撫でているうちに昔飼っていた犬を思い出し、涙を流されることもあります。
②被災地
被災地での交流が生まれるきっかけづくり
また、被災地では仮設住宅や復興住宅での避難生活が長くなるほど、外出の機会が減ることで起こる体力の低下や、住み慣れた場所から離れ新しいコミュニティに参加することの難しさ、ひとり暮らしの高齢者の「引きこもり」や「孤独死」といった深刻な問題があります。
仮設住宅の集会所で開催される集まりには積極的に参加されない方が「わんちゃんが来るなら……」と、セラピードッグに会うために顔を出してくださいます。
そうしてセラピードッグを介して隣の方とおしゃべりが始まるなど、自然と人同士の交流が生まれるのです。
セラピードッグは人の「心」に寄り添い元気づけるだけでなく、被災地での社会問題の解決という、とても大事な役割も担っています。
③図書館
子どもたちがセラピードッグに絵本を読み聞かせる取り組み
「R.E.A.Dプログラム」ってご存じですか?
子どもたちが犬に絵本の読み聞かせをするというこのプログラムは、アメリカの図書館から始まりました。
いまではヨーロッパなど多くの国の図書館や学校で、一般的に行われているそうです。
たとえば言葉によるコミュニケーションが難しい場合、うまく伝わらなかったり聞き返されたりすると諦めてしまう場合があります。
話すことを苦手とする理由はさまざまです。「上手に話すこと」よりも、自分らしく表現することの大切さを子どもたちに感じてもらうには、セラピードッグはとてもよい「聞き役」になってくれます。
④病院
闘病中の子どもたちとその家族のためにできること
そして日本レスキュー協会のセラピードッグは、闘病中の子どもたちが入院する病院を定期的に訪問しています。
現在は新型コロナウィルス感染対策のため訪問活動はお休み中ですが、新たな取り組みがスタートし、子どもたちとの交流は続いています。
2016年から始まった、子どもとそのご家族を元気づけるこの取り組みも今年で6年目になりました。
もちろん、衛生管理の厳しい病院で、最初からスムーズにセラピードッグが活動できたわけではありません。
生まれてから一度も「犬」を見たことがない女の子が、初めて毛むくじゃらの「にこり」と出会ったときの反応は?
次回からはセラピードッグと子どもたちの交流、そして訪問に代わる新たな取り組みについてご紹介します。
赤木 亜規子(あかぎ・あきこ)
日本レスキュー協会でセラピードッグと一緒にお仕事しています。
https://www.japan-rescue.com/
インスタグラム:@japanrescue