• お笑いコンビ、たんぽぽの白鳥久美子さんは、おばあちゃんっ子だったこともあり、「ばあちゃん仕事」に憧れ、愛してやみません。今日も、手を動かして、暮らしをつくる。白鳥さん流の「楽しい小さな暮らし」をご紹介します。久しぶりに出かけた酉の市で時の流れに思いを馳せる白鳥さん。

    おばさん化というものは、なんて清々しいのだろう

    久しぶりに酉の市に行ってきました。

    画像1: おばさん化というものは、なんて清々しいのだろう

    数年前までは女芸人仲間と一緒に、仕事終わりに合流して、新宿にあります花園神社の酉の市に行くのが恒例でした。

    商売繁盛を願って熊手を購入するのです。

    熊手は年々大きくしていくと商売も大きくなると聞いて、3千円から始め、最後は2万円の熊手になりました。

    画像2: おばさん化というものは、なんて清々しいのだろう

    お店のおじいさんに「たんぽぽ白鳥久美子」と札に書いてもらって、「縁起ものだから、これもつけちゃう!」と、サービスで稲穂やら、小判の飾りなんかを付けてもらって、「たんぽぽ白鳥久美子さんの、商売繁盛を願って~!」と言われながら拍子木を打ってもらうのが、なんだか愉快で楽しくて、「ああ、来年はすっごい楽しい仕事がたくさん来そうだなぁ~」なんて思ったものなのです。

    ところがここ数年パタリと行かなくなりました。

    その日もみんなで酉の市に行っていました。人混みに押されながら、帰りどこで飲むか、混む前に店の予約を取るか、いや、この花園神社に出ている屋台のどこかで飲んでから、お店を探そう。なんてことに夢中になっている自分たちにハタと気づいたのです。

    私たちって、酉の市にかこつけて、ただ飲みたいだけじゃないのか? なのに、いつまで熊手を大きくしていくつもりなのか? 2万円以上はもう出せない。いや、そもそも2万円っていうのも、見栄を張りすぎなんじゃないのか。縁起物とはいえ実際は痛手じゃないのか……? ということに、冷静になって気づいてしまったのです。

    こういうお祭りは冷静になってはいけないよ。とも思うのですが、ただ飲みに来ているだけだった自分たちの本心を知って、話し合いをしました。

    その結果、「酉の市はもう行かない。飲みたいだけなら居酒屋に行く。商売繁盛は自分の力で頑張る。」ということが、我々、女芸人仲間の中で決定されたのです。

    それなのに、久しぶりに行ってしまいました。門前仲町にあります富岡八幡宮です。

    画像3: おばさん化というものは、なんて清々しいのだろう

    花園神社の賑わいほどではありませんが、正直ちょうどいい賑わいです。神社の熊手を買うと、なんと隣に設けられた場所で、一人一人ご祈祷をしていただけるというではありませんか。この丁寧なお仕事ぶりに私はテンションが上がりました。

    昔ほど「商売繁盛! 売れたい! 仕事欲しい!」というギラギラした野心ではありませんでしたが、

    「商売繁盛に越したことはありません。生活がありますゆえ。でも、神様の無理のない範囲で大丈夫です。あとは自分が頑張ります。」

    とお参りさせていただきました。

    私が1人で熊手を買い終えると、以前の熊手仲間が駆けつけてきてくれました。あの頃はお酒でしたが、今は渋い喫茶店でしっぽりアイスコーヒーを飲みながら、これからの老後に向けての話に熱が入ります。このまま延長戦か? と思いましたが、良き時間になると、誰も駄々をこねずに素直にママチャリをこいで帰っていきました。

    私たち、マダムになったわねぇ。

    なんだか若い頃より今の方が、あっけらかんとしているもんだなぁ。と思いました。

    願掛けもほどほど。しゃべる時間もほどほど。もうなんでもよくなっている。どうにかなると思っている。

    これをおばさん化とも言うのでしょうが、なんて清々しいのだろうと、妙に感心しながら、かわいらしい熊手を飾りました。



    画像4: おばさん化というものは、なんて清々しいのだろう

    白鳥久美子(しらとり・くみこ)
    1981年生まれ。福島県出身。日本大学芸術学部卒。2008年に川村エミコとたんぽぽ結成。10年、フジテレビ系『めちゃ2イケてるッ!』の公開オーディションで新レギュラーの座をつかみ一躍人気者に。コンビとしての活動に加え、テレビ、ラジオ、ドラマ、舞台など多方面で活躍中。趣味は、散歩、高圧電線観察、シルバニアファミリー。特技は、詩を書くこと。唎酒師(日本酒のソムリエ)の資格ももつ。



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