やってしまった!
先日、東京駅に忘れ物をしてきてしまいました。
仕事で新幹線に乗るために東京駅に来ていた時のこと。前の予定が早く終わり時間を持て余していました。
ゆっくりランチを食べてもまだ余る。細々とした買い物を済ませてしまおうと、買い物をしてもまだ余る。新幹線で飲むコーヒーを買ってもコーヒーが冷めてしまいそうなほど時間が余る。有り余る。
もうウロウロするのにも疲れ果てたので、新幹線の待合室で時間を潰そうと思いました。そこで私のささやかな趣味であります「物件探し」をするために携帯をピョコピョコ触り出したのがいけなかった。
「物件探し」は決して引っ越しの予定があるわけでもないのにやり始めてしまうのです。
いつか住みたいとか、相場を知りたいとか、そんな目的も当初はありましたが、今はただ「この間取りでこれは高い。」とか「これはキッチンが使いにくいのを、うまく写真でごまかしている。」とか粗探しをするための、文句おばさんのはけ口として機能しているところがあります。やらなくてもいい趣味なのです。
ところが、その日に限って全く粗のない、私好みの物件が見つかってしまったのです。広々としたバルコニーがついていました。プールも家庭菜園もやり放題じゃないか。しかも今住んでいるマンションのご近所。仮にもし住むとしたら……妄想が止まらない私。
するとあっという間に新幹線の時間が迫ってきていました。慌てて車内に乗り込む私。そこで、あ! と気がつくのです。手に持っていたアンパンマンのエコバッグを待合室に置いてきてしまったことに。戻れるか? と思った時には新幹線が発車していました。
「やってしまった!」と慌てたものの、仕事でどれだけ新幹線に乗っていると思っているのよ、私。大丈夫、こういう時にはネットで検索すればすぐに落とし物対応のページが見つかるわよ。とクールにきめました。
そして慣れた手つきで(カッコよくないぞ!)、落とし物登録をして、返答のメールが来るのを待ちました。
ところが帰りの新幹線の時間になっても、「該当する落とし物は届いていません。」という返事ばかりがきます。
不安になる私。もしやアンパンマン好きが盗んでいったとか? そこに入れていたストールが今日のファッションにピッタリで盗んだとか? 悪い妄想が止まりません。
到着したらすぐに待合室付近の改札で駅員さんに聞いてみよう。
そして震える声でその旨を伝えると、ありました! あったのです! アンパンマンのエコバッグが!
日本は落とした財布が返ってくる国だとは聞いていましたが、本当でした。落としたエコバッグまで返ってきました。届けてくれた方ありがとうございました。保管してくれた駅員さんありがとうございました。
無目的な「物件探し」は「落とし物探し」に繋がって大変危険です。これからは目的のある「物件探し」をすることをここに誓います。
白鳥久美子(しらとり・くみこ)
1981年生まれ。福島県出身。日本大学芸術学部卒。2008年に川村エミコとたんぽぽ結成。10年、フジテレビ系『めちゃ2イケてるッ!』の公開オーディションで新レギュラーの座をつかみ一躍人気者に。コンビとしての活動に加え、テレビ、ラジオ、ドラマ、舞台など多方面で活躍中。趣味は、散歩、高圧電線観察、シルバニアファミリー。特技は、詩を書くこと。唎酒師(日本酒のソムリエ)の資格ももつ。