「藤娘」に憧れて
東京は江東区にあります亀戸天神社で「藤まつり」が開催されているということで、家族で遊びに行ってきました。
うちから割と近くにありまして、「今年こそ行こう、今年こそ行こう」と思いながら、数年が経ち、ようやく今になって行くことができました。
昔、友人が「亀戸天神社で藤みてきたのよ~ ステキだった~」と大興奮で話してくれたのが忘れられずにいました。
藤の花の何がそんなに乙女心をくすぐるのかと、二人で話していたところ、分かったことがあります。
枝垂れ咲いている姿も確かにキレイなのですが、歌舞伎の「藤娘」の姿に、心の奥底で憧れていることに気がついたのです。
私も友人も歌舞伎に詳しくはありません。確か「藤娘」は藤の花の精が娘の姿になって踊っているんじゃなかったかしら? くらいのレベルです。
ただ、役者さんのあの美しい姿だけを強烈に覚えていて「キレイ、ステキ、かわいい」と心惹かれ憧れていたのです。
私も藤の下で踊りたい、たしか藤の花を持って踊っていたよね。あれがやりたい。かわいいい。止まらない乙女心。
さすがに踊ることはしませんでしたが、一面に続く藤棚を見て心は踊りました。ただよう甘い香り。薄紫のグラデーション。ちょいと髪に飾りたくなる藤の姿は、やっぱりかわいい。
藤棚の下を歩いていると、なるほど確かに、藤の花の精が出てきそうな幻想的な空間です。きっと友人もそんな気分になって大興奮で帰ってきたのだなぁとほっこりしました。
当日は日曜日ということもあって、すごい賑わいでした。大きなカメラを持った方や、海外からの方もちらほら見えて、改めて藤の魅力を感じました。
亀戸天神社の近くにくず餅で有名な「船橋屋」というお店があります。お店にも立派な藤棚がありステキです。
行列ができていて、お店でいただくことは諦めましたが、分店でくず餅の販売もしていて買うことができたので、お家でゆっくりいただきました。
そして家で撮ってきた写真を振り返ってびっくり。娘と藤を撮ること夢中だったせいか、私の写真が一枚もないのです。
夫も気が利かないと思いません? 夫と娘のツーショットは私がたくさん撮っているのに、どうして娘と私のツーショットは撮ってくれないのかしら!? 私と藤のツーショットだって撮ってくれたらいいと思いません? そしたら万に一の確率で、私も「藤娘」みたいに写った可能性だってあるわけじゃないですか。本当に気が利かないわ。と、しばしプンスコしました。
というわけで、私の写真は一個もありませんので、十年前の同じ時期に、里山で撮った私の写真を載せておきます。世の中お父さん、もしこれを読んでいてくれていたら、どうぞ奥さんの写真をちゃんと撮ってあげてくださいね。
花と写ると、写真映えもするから本人も喜びますよ。
白鳥久美子(しらとり・くみこ)
1981年生まれ。福島県出身。日本大学芸術学部卒。2008年に川村エミコとたんぽぽ結成。10年、フジテレビ系『めちゃ2イケてるッ!』の公開オーディションで新レギュラーの座をつかみ一躍人気者に。コンビとしての活動に加え、テレビ、ラジオ、ドラマ、舞台など多方面で活躍中。趣味は、散歩、高圧電線観察、シルバニアファミリー。特技は、詩を書くこと。唎酒師(日本酒のソムリエ)の資格ももつ。