(『79歳、食べて飲んで笑って』より)
エミー桜井、『Olive』の料理ページを担当!
雑誌『Olive』のキャッチコピーは「Magazine for City Girls」。ファッションだけでなく音楽、映画、インテリアなどサブカルチャーの要素をふんだんに取り入れたスタイルで一世を風靡しました。
『Olive』を愛読するティーンはいわゆる“新人類”世代、昭和40年代に生まれた人たちで「オリーブ少女」と呼ばれていました。
70年代に『anan』や『non・no』を読んで「アンノン族」という言葉を生みだした女性たちとはまた違う、新しい時代の女の子像が提示された雑誌でした。
新しい時代にふさわしいポップでキャッチーな誌面は、堀内誠一さんがタイトルロゴと表紙を担当し、アートディレクションを新谷雅弘さんが担当していました。
今見てもエッジが効いたお洒落な誌面ですよね。そんな『Olive』で料理コーナーを担当することになった私。
初めてつくったのはオムレツ……それも大きくて平たい、ワラジみたいなオムレツ……今思い出しても恥ずかしい上に、付けられたペンネームが「エミー桜井」。
笑っちゃうわよね。それでも試行錯誤しながら、なんとかかんとか料理のレシピを披露しているうちに、ある時文化出版の方から「料理本を出しませんか?」というお誘いの電話をいただきました。
初めての本の撮影は、我が家の台所で。テーブルクロス、器、ほとんど私の私物を使い、足りないものは文化出版局の担当者さんが貸してくれての撮影でした。
まだ「スタイリスト」と呼べる人がそんなに多くいなかったのでしょうね。育った環境も、社会人になってからもデザインや制作の世界にどっぷり浸かっていたわけですから、私には知らず知らずのうちに、演出やコーディネートする力がある程度備わっていたのだと思います。
食器や雑貨も好きだった私にとって、自分でスタイリングすることは思いのほか楽しく、やりがいのあることでした。
そうこうするうちにコマーシャルの仕事なども入り始め、いつものごとく深く考えずに引き受けているうちに、あれよという間に仕事は増えていきました。
編集者の石川次郎さん、淀川美代子さん、カメラマンの沢渡朔さん、そしてマガジンハウスの現・会長、木滑良久さん……。マガジンハウスではいろいろな方と出会い、お仕事をご一緒する機会に恵まれました。
雑誌文化が頂点に向かって上り詰めている時代でしたから、どんな現場も刺激的で楽しかったですね。
ミニオムレツのこと
子どもの頃大好きなメニューだったので、大人になってからも味の記憶を頼りに牛ひき肉でつくっていましたが、この度母のレシピ帳を見直したら豚ひき肉を使っていたことが判明。
お弁当に入れたり、もう一品って時に重宝しますよ 。
材 料(2人分)
● 豚ひき肉 | 200g |
● A | |
・玉ねぎ | 1個 |
・長ネギ | 1本 |
● たまご | 6個 |
● 塩 | 少々 |
● コショー | 少々 |
● 油 | 適量 |
つくり方
1 玉ねぎをみじん切り、長ネギを小口切りにする
2 油を熱し、豚ひき肉をパラパラになるまで炒め、1を加えてさらに炒め、塩・コショーを加え、ボールに入れる
3 ボールに卵をよく溶き、1を入れて塩・コショーを加え、よく混ぜる
4 フライパンに油を熱し2をスプーンで3杯加えて焼く。片面が焼けたら半円に折り、裏返して軽く焼く
本記事は『79歳、食べて飲んで笑って 〜人生で大切なことは、みんな料理に教わった』(産業編集センター)からの抜粋です
〈撮影/田川友彦 聞き手/田邊詩野(子鹿社)〉
桜井莞子(さくらい・えみこ)
東京・南青山にある、ごはんや・のみや「PAROLE」の店主。デザイン事務所勤務後、結婚、出産、2児の母となる。ケータリング会社の経営を経て、西麻布に「ごはんや PAROLE」をオープンし評判に。還暦を機に引退を決意。悠々自適な暮らしを楽しみつつ、料理教室を始める。2014年、70歳で一念発起し「のみや PAROLE」を開店。著書に『食通が足しげく通う店 PAROLE のおかず帖』(KADOKAWA)、『白だし和食』(講談社)、『ちゃんと覚えたい乾物料理の基本―乾物じょうずは和食じょうず』(成美堂出版)がある。最新刊『79歳、食べて飲んで笑って 〜人生で大切なことは、みんな料理に教わった』(産業編集センター)が発売中。
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年齢を重ねるって楽しい! 70代でお店をオープン、伊豆と青山で2拠点生活。食通に愛される青山のごはんや・のみや「パロル」店主・桜井莞子さんによる、“好き”であふれた日々を送るための処方箋。桜井さんが自分を形づくってきた人や物事、さまざまな料理やお酒について語る1冊です。桜井さんの思い出の料理10品のレシピも公開。