(『梅おばあちゃんの贈りもの』より)
身体と心を整える毎日の食事
私の養生食の基本は、細胞を刺激し元気にしてくれる梅干し、梅酢、そして旬の食材です。旬の中でも初(はつ)、中(なか)、後(あと)とありますが、私は初々しい味わいと活力が宿っている初物をいただくようにしています。
野菜や果物は、芳醇さが際立ちおいしさが頂点になる中(なか)の時季のものも好きです。
養生食の主役となるのは、旬の野菜の煮びたしです。小松菜なども煮びたしにするとカサが減り、一束もあっという間になくなります。
ビタミンや食物繊維がたっぷり取れるから、身体の調子が整います。油揚げやきのこなどを入れ、日々アレンジすると飽きませんよ。
梅酢を使うと日持ちがよくなり、つくりおきにも便利です。
最近、タンパク質は、なるべく魚や豆腐から取るようにしています。
魚は梅酢を使うと臭みが取れ、ふっくら炊けます。食欲のないときは、梅がゆに水で溶いたくずを加えると身体が温まり、胃腸の働きを活発にしてくれます。
梅干しに番茶を注ぐだけの梅干し番茶もいいですよ。風邪予防には、おろししょうがとしょうゆを極少量加えます。空腹時や食前に熱々で飲むのがポイント。
梅を使った養生食、体調が優れないときにもお試しください。
小松菜とホタテの梅酢煮びたしのつくり方
材料(つくりやすい分量)
● 小松菜 | 1束 |
● A | |
・日本酒 | 180mL |
・みりん | 50mL |
・しょうゆ | 大さじ2 |
・梅酢(赤でも白でもよい) | 20mL |
・粗びき黒こしょう(好みで) | 小さじ1 |
● ホタテ(刺身用) | 5〜10個 |
つくり方
1 小松菜は食べやすい大きさに切る。
2 鍋にAとホタテを入れ、弱火にかける。ホタテはかたくないように両面を3分煮て取り出す。
3 2の鍋に小松菜を茎から入れ、3〜5割火が通ったら葉を入れる。ひと煮立ちしたら小松菜を取り出す。
4 煮汁だけを沸騰させアクを取る。
5 小松菜を鍋に戻し、ホタテを裂いて加え、余熱で仕上げる。
梅くずがゆのつくり方
材料(1〜2人分)
● 白米 | 1/2合 |
● 水 | 600mL |
● 赤梅酢 | 大さじ1/2 |
● くず粉 | 30g |
● 赤梅酢(好みで) | 適量 |
*赤梅酢の代わりに、種を取って実をほぐした梅干しを入れてもよい。 | |
● 梅干し | 1粒 |
つくり方
1 白米は研いで30分〜1時間浸水させる。
2 水と赤梅酢、白米を鍋に入れ、中火にかける。沸騰したら弱火にして30分火にかける。
3 水大さじ2(分量外)で溶いたくず粉を入れる。好みで赤梅酢を加える。
4 おかゆをお椀わんによそい、梅干しをのせる。
本記事は『梅おばあちゃんの贈りもの』(誠文堂新光社)からの抜粋です
乗松祥子(のりまつ・さちこ)
1940(昭和15)年愛媛県生まれ。茶懐石料理店「辻留」銀座店に20余年勤務したのち、鎌倉・小町通りの日本料理店「味路喜」の責任者を務める。その後、代官山に日本料理店「延楽」を開店。現在は杉田梅専門店「延楽梅花堂」を経営している。「辻留」時代に100余年前の梅干しを譲り受けたことがきっかけで、梅仕事を始める。「幻の梅」といわれる野梅系の杉田梅に出合い、梅に一生を捧げることを誓う。現在まで50年以上に渡って梅仕事を続けている。杉田梅を未来につなげるために、「杉田梅を守り育てる会」の主幹を務め、自身でも梅の木の保全活動や植樹などを行っている。最新著書『梅おばあちゃんの贈りもの』(誠文堂新光社)が発売中。
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82歳でもなお元気。朝から晩まで働く梅おばあちゃんこと、乗松祥子さん。梅に寄り添い、ささやかな発見を慈しみながら、心豊かな日々を送っています。乗松さんの春夏秋冬の梅仕事を追いながら、毎日の食事から、梅の健康効果、幻と言われた杉田梅のこと、好奇心の持ち方、大切にしていること、白洲正子さん、樹木希林さんらとの交流などについて綴った本ができました。
秘伝の梅干し、梅肉エキス、梅酒、梅ジュース、梅ジャムの作り方をはじめ、梅酢を使った料理レシピも掲載しています。家族ぐるみで付き合いのあった文筆家・内田也哉子さんとの対談も収録。梅仕事に興味がある方はもちろん、日々の暮らしを大切にしたい方、これからの人生のヒントがほしい方にもおすすめの一冊です。