• 支え合い、認め合う大切なつながり。少数も大勢も、世代も血縁も、飛び超えて、新しい社会で自由に変容していく多様な家族の形。グラフィックデザイナーでサルビア主宰のセキユリヲさんに、家族の物語を聞きました。
    (『天然生活』2021年9月号掲載)

    特別養子縁組で4人家族になりました
    家族構成:夫、妻、長女、長男、猫2匹

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    ピカピカのランドセルをひっくり返し、「これが教科書だよ」と教えてくれたかと思えば、外へピューッと飛び出し、「こっちに来て〜」と手招きするおてんばな長女。

    初めて見る顔にびっくりして、そおっとお父さんの足元に隠れる長男。ふたりは特別養子縁組で、セキユリヲさん、清水徹さんと家族になりました。

    画像: セキさんたっての希望で清水さんがつくったウッドデッキは、脇に植わる桜が心地よい木陰をつくる第2のリビング。学校、園から帰宅した子どもたちは、さっそくここでおやつを。「遊んだりくつろいだり、夜ごはんを食べたり。子どもはここでプール遊びをするのが大好き」

    セキさんたっての希望で清水さんがつくったウッドデッキは、脇に植わる桜が心地よい木陰をつくる第2のリビング。学校、園から帰宅した子どもたちは、さっそくここでおやつを。「遊んだりくつろいだり、夜ごはんを食べたり。子どもはここでプール遊びをするのが大好き」

    雑誌などのエディトリアルデザインを手がけるほか、自然や旅の風景をヒントにテキスタイルもデザイン。職人と誠実なものづくりを展開している、セキさん。

    夫の清水さんは、住宅の設計や、椅子や食器棚など木製家具のデザインを手がけています。

    セキさん29歳、清水さん32歳のときにふたりは結婚。

    「子は欲しいけど、いつか自然とできるかな」

    多くの女性が思うように、セキさんもそんなふうに考えていました。何より目の前の仕事が「とにかく楽しくて」仕方ない。

    「いま思えば、当時から夫婦で子についてもっと話しておけばよかったです」

    1年間スウェーデンへ。養子を育てた方との出会い

    仕事に邁進してきたセキさんが、子どもに関して焦りを感じるようになった、30代後半。かねてからの希望だった海外暮らしが実現する運びとなります。

    「スウェーデンにある芸術学校の、2〜3週間のサマーコースに参加したらとても楽しくて。夫婦で留学を決めました」

    一方で「帰国後は子どものことを真剣に考える」と日本を発つ前から決意し、その考えは夫婦で共有していました。

    画像: セキさんの仕事場はリビングの一角に

    セキさんの仕事場はリビングの一角に

    スウェーデンでの暮らしは、とても充実したもの。24時間作品づくりに没頭できる幸せな環境に、周りの自然が普段の暮らしに密接に関係する現地の生活が、仕事一辺倒に過ごしてきたセキさんに大きな感動を与えました。そしてここで運命的な出会いがありました。

    「近所に養子を育てた女性がいらして。韓国人の子を育て、いまニュースキャスターをしているのよと、胸をはって教えてくれました」

    以前から養子や里親に興味があったセキさんに、彼女の誇らしげな姿はぐんと現実味を与えました。

    「こんな形で幸せになれるんだ!私にもできるかもって。夫もためらいなく賛同してくれました」

    帰国したセキさんはさっそく情報を集め、特別養子縁組を斡旋する、とあるNPO法人に入会。

    不妊治療もしたのですが、痛みがひどかったのと、私としては何か不自然な気もして。私は子育てしたいけど、他方では子に恵まれたけど育てられない人がいる。それなら私が育てれば、私も子も、産んだ方も幸せですよね」

    実際に日本で養子を育てている家族に夫婦で会いに行ったことも、その決断を後押ししました。

    「そのご家族の仲睦まじい様子を見て、私も、と思いました」

    法人が主催する研修や交流会に定期的に参加しながら、子を待ちわびる日が半年以上続きました。

    「当時その団体は、夫婦どちらかは子どもが3歳になるまで子育てに専念する、という条件を設けていました。なかなか高いハードルですが、私は子育てをしたかったし、子の幸せを第一に考える団体への信頼にもつながりました」

    そこでセキさんは、子を授かったら取る育休の予定を変更。まず仕事を休むことに。長女は、その2〜3カ月後にやってきました。

    「駅に迎えに行ったときのことはいまでもはっきりと覚えています。感動して泣きましたね」

    「どんな子でも迎え入れる」第2子はダウン症でした

    長女は1歳を過ぎてから、参加する保護者が当番制で子を見ながら、内容や運営方針もすべて自分たちで決める、自主保育という活動に参加し始めました。

    「どこからの補助も指導も受けない本当に自主的な場で、貴重な経験でした」

    そろそろ第2子を考え始めたころ、連絡が入ります。「ダウン症です」と告げられても、セキさんに迎え入れる以外答えはありませんでした。

    「夫は驚いていましたが、彼なりに勉強して。互いの家族含めみんなが納得し、喜んで迎えました

    そして家族はこの春、東京から、周囲を田園が囲む北海道は東川町へ。

    画像: 住まいは築50年の古家をリノベーション

    住まいは築50年の古家をリノベーション

    庭先では念願の畑を始め、栗の木には清水さんがブランコをつくりました。ご近所さんからは自家製野菜のうれしいおすそわけも。

    画像: 清水さん手づくりのブランコは姉弟もお気に入り

    清水さん手づくりのブランコは姉弟もお気に入り

    「みなさんいい方ばかりで、家族でのびのび楽しく暮らしています」

    ご縁が重なって紡がれた、セキさん一家。

    そこには、幸せに満ちあふれた家族の姿がありました。



    <撮影/前田 景 取材・文/遊馬里江>

    セキユリヲ(せき・ゆりを)
    古きよき日本の伝統文化に学びながら生活雑貨づくりをする「サルビア」を始めて21年目。自然の美しさを表現したパターンデザインをはじめ、雑誌や書籍、プロダクトデザインの仕事多数。http://salvia.jp/ インスタグラム@salvia_official

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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