• 支え合い、認め合う大切なつながり。少数も大勢も、世代も血縁も、飛び超えて、新しい社会で自由に変容していく多様な家族の形。グラフィックデザイナーでサルビア主宰のセキユリヲさんは、特別養子縁組で4人家族になりました。血のつながりはなくても、暮らしをともにしていたら大切な“家族”なのです。
    (『天然生活』2021年9月号掲載)

    セキさんの家族

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    雑誌などのエディトリアルデザインを手がけるほか、自然や旅の風景をヒントにテキスタイルもデザイン。職人と誠実なものづくりを展開している、セキユリヲさん。夫の清水さんは、住宅の設計や、椅子や食器棚など木製家具のデザインを手がけています。

    セキさんは、不妊治療の末、特別養子縁組でおてんばな長女と、恥ずかしがり屋の長男を授かりました。今は、北海道の東川で家族4人と猫2匹でのびのび楽しく暮らしています。

    いま、家族として思うこと

    特別養子縁組が結んだのは、ほかとなんら変わりない幸せな“家族”というあたたかい絆でした。

    わが家では、特別養子縁組で子を授かったことをオープンにしていますが、それは隠す必要がないと思っているからです。

    長女はすでに理解していて、唐突に自分から周りに話すぐらい、その話がむしろ大好き(聞いた人がびっくりするんじゃないかと、私はちょっぴり心配ですが)。

    画像: 東京で通っていたアート教室での長女の作品。豊かな色彩感覚

    東京で通っていたアート教室での長女の作品。豊かな色彩感覚

    毎年誕生日に産んでくれたお母さんからくるプレゼントとお手紙も、楽しみにしています。字が書けるようになったので、「今年はお返事書いたら?」なんて話したり。長男にも時期をみて話すつもりです。

    暮らしをともにするのが“家族”ということ

    ある取材で「家族とは?」と聞かれた長女が、「一緒に住むこと」と答えたことがあるのですが、まさにそうだなと思うのです。

    工房で、夫がデザインする家具を制作している遠藤さんとは、お昼やお茶の時間をともにしています。彼も、暮らしをともにする大事な“家族”。そう考えれば、血のつながりなんて関係ないことを改めて実感します。

    画像: 敷地内に建つ工房で清水さんと働く遠藤覚さんも“家族”とふたり

    敷地内に建つ工房で清水さんと働く遠藤覚さんも“家族”とふたり

    おとなしめの長男も、最近は活発な姉によく似てきて、庭で、リビングで、ふたりで転げ回るように遊んでいます。今後成長して親には話しにくいことが出てきても、きっと姉弟が互いによき相談相手となってくれることでしょう。

    画像: 長男が「最近上手に積み木を積めるようになった」とうれしそうに話してくれたセキさん。姉弟ふたりで競うように積み上げては、崩れる瞬間に家族で大盛り上がり

    長男が「最近上手に積み木を積めるようになった」とうれしそうに話してくれたセキさん。姉弟ふたりで競うように積み上げては、崩れる瞬間に家族で大盛り上がり

    先日、とても素敵な体験をしました。長女の通う学校は、全校生徒は18名(1年生は長女ひとり! )で、ダウン症の女の子がひとりいます。運動会で彼女はうまく走れず転んでしまうのですが、周りの友達や観覧している保護者が一丸となって応援するんですね。

    するとその声を聞いて、女の子も「なにくそー」という感じで立ち上がって走り出して。ゴールしたときは、もうみんなで大盛り上がり!! あのとき会場をひとつにしたのは、間違いなく彼女でした。

    「知らない」ということは、恐怖や不安をつくりだします。ダウン症のことも特別養子縁組のことも、「よく知らない」から、必要以上に怖がり、遠ざけてしまう。

    私が、スウェーデンの女性の誇らしげな姿から、日本で特別養子縁組をした家族の幸せそうな姿から、前述した運動会でのひとコマから、たくさんの勇気と感動をもらったのと同じように、身近に触れ合える機会があれば、理解は深まりハードルは低くなるはず。

    特別養子縁組に関しては、若い人にこそ知ってもらいたい。私の経験を伝えていく大切さを、いま、改めて強く感じています。

    特別養子縁組が“特別”でなくなるように。私たちの、幸せな家族の姿を見てもらいたいです。

    家族の思い出

    ふたりから3人、そして4人に。東京でスウェーデンで。思い出の写真から、家族の軌跡をたどります。

    結婚パーティーでツーショット

    画像: 結婚パーティーでツーショット

    「いまはなき東京の麻布十番温泉の宴会場で結婚パーティーを。ドレスコードは浴衣着用で、来ていただいた方に温泉に入ってもらいながらの、楽しい宴でした」とセキさん。

    互いに自由に仕事や好きなことに没頭し、都会暮らしを満喫したふたり時代。

    「家事も家計も半々。よく外食も楽しんでいました」

    一年間夫婦でスウェーデン暮らし

    画像: 一年間夫婦でスウェーデン暮らし

    スウェーデンの南東部、エーランド島にある小さな芸術学校「カペラゴーデン」で、セキさんはテキスタイルデザインを、清水さんは木工を学んだ。

    養子縁組で子を育てた女性や、現在清水さんと働く遠藤さんとも出会うなど、ふたりにとって縁深い場所。自然に近い現地の暮らしからも、大いに学びがあった。

    3人となって初めての初詣に

    画像: 撮影/髙橋京子

    撮影/髙橋京子

    長女を迎え入れて初めてのお正月に、3人で初詣に。夫婦の眩しい笑顔と、パパの腕にしっかり抱きとめられ、長女の穏やかでやさしい表情が、3人家族となった喜びを表しているよう。

    このころすでに、家には保護猫の「ペロ」と「うめ」も。にぎやかな一家になった。

    長男も加わり、4人家族に

    画像: 撮影/大沼ショージ

    撮影/大沼ショージ

    長男を迎えてまもないころ、明治神宮で家族でまったりしているひと時。活発に育つ長女はこのとき3歳。

    写真に映る何気なくも愛おしい時間は、「性別も病気も人種も関係なく、どんな子でも受け入れたい」という、当初から揺らぐことのないセキさんの強い思いが、軽やかに支えている。

    セキユリヲさんの家族の年表

    1999年(29歳)結婚
    2000年(30歳)夫婦+知人の3人の事務所「ea」を法人化、その中でセキさん個人の活動の場として「サルビア」を立ち上げる
    2009年 夫婦ともにスウェーデン・エーランド島「カペラゴーデン」へ1年間留学。養子縁組で子を育てたご近所さんと出会う
    2010年(40歳)帰国後、不妊治療を行いながら特別養子縁組に関する情報収集。秋には特別養子縁組をしたご家族に会いに行く
    2012年そのご家族のご縁をつむいだ、特別養子縁組を斡旋するNPO法人に入会
    2014年いつでも子を迎え入れられるように、セキさんは仕事を一度休むことを決断。その2〜3カ月後、生後10日の長女を迎え入れる。3年間子育てに専念
    2015年自主保育という活動の場を知り、長女と参加スタート
    2016年北海道・東川町に古家を購入。2拠点生活をスタート
    2017年生後2カ月の長男を迎え入れる
    2018年セキさん、ゆるやかに仕事復帰
    2021年(50歳)北海道・東川町に移住。長女は小学校に入学、長男は自然活動をする保育園へ
    画像: 私ペロも家族の一員です

    私ペロも家族の一員です



    <撮影/前田 景 取材・文/遊馬里江>

    セキユリヲ(せき・ゆりを)
    古きよき日本の伝統文化に学びながら生活雑貨づくりをする「サルビア」を始めて21年目。自然の美しさを表現したパターンデザインをはじめ、雑誌や書籍、プロダクトデザインの仕事多数。http://salvia.jp/ インスタグラム@salvia_official

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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