(『天然生活』2023年4月号掲載)
愛されつづける鞄の秘密は、密な対話と、チームワーク
ランドセルメーカーとして始まった「土屋鞄製造所」の製品は、丈夫さを受け継ぎつつ、飽きのこないシンプルなデザインが魅力。そのデザインを生み出しているのが、今回、お弁当を見せてくれた商品企画チームの皆さんです。彩りの美しさや盛りつけのバランスのよさは、お弁当箱のふたが開くたびに、歓声が上がるほど。
「そんなに深く考えたわけではないけれど、見たときにワクワクするように詰めました」と語るのは、チームを率いるアーティスティックディクレターの大野さんです。
目にした瞬間、何気ないのに心が浮き立つようなデザインを生み出せるのは、弁当箱という小さな空間にも自然と創意工夫を凝らす美意識の高さゆえなのでしょう。
就業時間は各自が自由に決めていいフルフレックスながら、「仲がいいので、お昼になると、みんな自然と集まってくるんです」と及川さん。そんな皆さんのランチタイムは、なんともにぎやかです。
「趣味の話もよくしています」との丸山さんの言葉どおり、この日も、落合さんが最近凝っているスパイスカレーの話や、学生時代から革に触れてきた成田さんの携帯ケースの話などで、盛り上がっていました。
コミュニケーションがものづくりのベースに
お昼どきには仕事の話をもち込まず、平和に時間を過ごせるのは、仕事中によくコミュニケーションをとっているからなのだとか。そんな皆さんは、他部署とのやりとりも、とても大切にしています。
「職人にデザインのイメージや思いをしっかり伝えられると、工房のみんなも技術と情熱でこたえてくれるんです。店舗のスタッフとも会話が多ければ多いほど距離が縮まるので、お客さまの声が聞こえやすくなり、デザインにもいい影響があります」と大野さん。
仕事の密な対話と、昼休みの息抜きと。長く愛されるデザインは、仲間とのメリハリの利いたつながりがあってこそ、なのでしょう。
商品企画チームのお弁当拝見
落合あやさん
麻婆豆腐はオリジナルスパイスで。「フェンネルやシナモンを入れています」。
さつまいものレモン煮、ゆでブロッコリーにキャロットラペも。
大野真彰さん
「鈴木登紀子さんのレシピの鶏そぼろがお気に入り」
炒り玉子、れんこんの甘酢漬けに、かぶの葉の炒めもの、ゆでスナップえんどうを彩りに。
成田 宙さん
春巻きの具は紫キャベツとにんじん。鶏の唐揚げに春菊の素揚げ、里芋の煮物とパプリカのナムルを添えて。
「揚げものが好きでよくつくります」
丸山 一さん
西京焼きは自分で釣ったカワハギなのだとか。「たまたまいい魚が釣れました」。
玉子焼きになすやいんげんの豚肉巻きとボリュームたっぷり。
及川茉佑子さん
「コロナ禍で時間ができ、おにぎらずをよくつくるようになりました」
ストージョの折りたためるお弁当箱で、帰りはかさばらずに持ち帰れる。
「土屋鞄製造所」スタッフの1日
入社以来、3年愛用しているという土屋鞄のバッグを見せてくれた成田さん。
「フォルムのバランスが好きで、いろいろな服に合わせやすいです。身体に沿って自分の形になじむところも魅力です」
「料理は好きで、妻と分担して調理しています。ふだんはレシピを見ずに、インスピレーションでつくることが多いんですよ」
美しく並べられたおかずの下は、白ごまともみのりを混ぜたごはん。
鞄のデザインが決まったら、革に合わせて色を選び、革屋に材料を発注。
「受け取った人がワクワクしていいものをつくりたいと思ってくれるように、発注書もていねいな作成を心がけています」
「ミシンは、集中して慎重に。スピードと思い切りも大切にしています」とは大人用カバンの製造チームリーダー・門井さん。工房は全国に3カ所。場所ごとに作業が異なる。(写真/土屋鞄製造所)
消毒液にすぽっとかぶせているのは、土屋鞄らしさが光るランドセル形のカバー。
店舗デザインチームがコロナ禍でもお客さまに楽しんでもらえるものをということで発案し、職人がつくった。
月に2回は海釣りに出かけるという丸山さん。ふだんはあじやさばが釣れることが多いのだとか。
「100匹くらい釣れることも。スーパーや魚屋で買うのとは新鮮さが違うので、おいしいですよ」
<撮影/濱津和貴 取材・文/長谷川未緒>
土屋鞄製造所(つちやかばんせいぞうしょ)
1965年ランドセルメーカーとして創業。ランドセルや大人用のバッグ、財布をはじめとした小物の企画、製作、販売を行う。上質な素材とシンプルなデザインで、長く愛用できるとファンが多い。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです