植物も古道具も、時とともに「育つ」楽しみがある

「植物と古いものは相性がいい。骨董の世界では、古くなって味が出たものを『よう育ってる』っていうんです。経年変化によって、ものは育つ。植物も同じ。だから、組み合わせるとよく合います」

小泉攝さんは、京都でアンティークや古道具を扱う店「sowgen」を営んでいます。植物好きで、花屋で働いていたこともあるほど。

日頃から店のディスプレイにも植物を使い、造園の仕事もしています。妻と3人の息子さんと暮らしてきた路地奥の一軒家も、植物を楽しむことを前提にリノベーション。吹き抜けの階段は日当たりがよく、緑の見せ場になっています。

「植物は家族みたいな感じ、一緒に生活している感覚です。もともと大家族だったので、たくさん緑があるとにぎやかでほっとします」

目線よりも高いところに緑があると「森の中にいるみたいで落ちつく」と、吊るしたり、高い位置に置いたり。目に入りにくい場所に置くと植物の変化に気づけないので動線上に置いています。

「成長してしまえば、さほどかまわなくても大丈夫ですが、それまでは子どもと同じように、様子を見ながら手をかけて。本来の生息地とは環境が違うので、場所を変えながらいい居場所を探します。店で元気がなくなった植物を見つけると連れて帰り、機嫌よく育ってくれるとうれしくて、そのまま居ついたものもたくさんあります」

水やりは霧吹きでまめにシュッと、元気かな？と様子を見ながら。夏は外に出して日に当て、冬を越すエネルギーを与えるそうです。

「うっかり枯らしてしまうこともありますが、僕にゆとりがなかったんだなと。植物は自分の生活のバロメーターでもありますね」

植物はもっぱら小泉さんの楽しみでしたが、昨年、一人暮らしを始めた大学生の長男も自分の部屋で植物を育て始めたそう。

「家ではやっていなかった自炊も楽しんでいるみたいで、料理のことは妻に、植物のことは僕に電話で聞いてきます」

緑と暮らす心地良さは、家族にもちゃんと伝わっています。

いつも目にする場所に置いて家族のように暮らしています

日当たりがよい窓辺も緑の特等席。植物を集めて、空間を楽しく。

大きなグリーンは何度か植え替えするうち、小泉家のシンボルツリーのように

緑のご機嫌を伺いながら

水やりは朝のルーティン。

「葉っぱが乾燥していたら日中もシュッと。シダ類はみるみる元気になります」

剪定も小まめにして、風通しよく。

ハンギングで森のように

植物を吊るして縦のラインで見せると、森の中のように。

「場所も取らないので日本のコンパクトな住空間におすすめの楽しみ方です」

グリーンは鉢植え、季節ごとに見頃がある花は切花で楽しむ。

春を告げる梅の花は古い水差しに。

よく目に入る動線に

「緑は自然と目に入るところに」

剪定した枝もキッチンに飾って楽しむ。根が出てくることも。

インドアグリーンを楽しむための愛用アイテム

古い灯火具

油皿を乗せて明かりにした、明治時代の灯火具に入れて。

「吊り下げるS字フックは京都の平安蚤の市で見つけたもの。金具も古いものは雰囲気が出ます」

＜撮影／伊東俊介　取材・文／宮下亜紀＞

小泉 攝（こいずみ・せつ）
アンティーク＆ブロカント「sowgen」店主。京都・北白川と四条河原町に店舗があり、どちらもカフェを併設。店舗や住宅の設計・施工、造園なども手がける。自ら買い付けに出向き、メンテナンスのうえで販売。暮らしのなかで使うものだから手に取りやすい価格にもこだわっている。http://sowgen.com/