• 誰もが先が見えにくい世の中で、これから先、もし、保険証が使えず病院に行けなかったり、保証人がおらず入院できなかったりしたら、どうすればいいのでしょうか? あまり知られていませんが、日本にはそんなピンチを救ってくれる制度あります。そういった「生きるノウハウ」を知っておけば、暮らしの不安もなくなります。
    (『死なないノウハウ』より)

    「保険証が使えず病院に行けない」ときに役立つノウハウ 社会福祉士・横山北斗さん

    画像: 「保険証が使えず病院に行けない」ときに役立つノウハウ 社会福祉士・横山北斗さん

    収入も仕事も不安定で保険料が払えず、保険証はとっくに使えない状態という人は多くいる。そのような状態になると、受診するには10割負担となるわけだが、そもそも保険料が払えない層が高額な医療費を払えるはずもない。

    19年時点で、国民健康保険の保険証がない世帯は実に77万世帯。

    そうなると、お金も保険証もないため受診を控え、我慢した果てに命を落とすという事態も生まれてしまう。

    「民医連」が23年に発表した「2022年経済的事由による手遅れ死亡事例調査概要報告」によると、22年1月〜12月の間に保険料滞納など経済的な理由から病院に行くのが遅れ、亡くなったケースは全国で46件。

    60代が41%でもっとも多く、ついで70代(24%)、50代(15%)。死因でもっとも多かったのは「がん」の69%だったという。

    さて、そんなふうにお金がないけど急に体調が悪くなった、あるいは歯が痛くなったなんていう場合、どうすればいいのだろうか?

    「このような場合は、無料低額診療事業をやっている医療機関を探します。医療費を支払うことができない時、無料もしくは低額で病院にかかることができる制度です。自分の住む都道府県名と、『無料低額診療』で検索すると探せます。すべての病院がやっているわけではなく、歯科はあまり多くないんですが、そこで受診できます」

    無料か低額かは、その人の事情により変わってくる。また、薬代には無料低額診療が適用されないケースもあるのでそこは確認が必要だ。

    ちなみに無料低額診療をやっている多くの病院には社会福祉士がおり、アウトリーチの場にもなっている。アウトリーチとは、支援が必要なのに届いていない人に対する働きかけ。「どんな状況なのか、無料低額診療を使うに至った経緯などをお聞きして、必要であれば社会保障制度につなぎます」

    そのような場合、生活保護制度を紹介することもあるという。生活保護制度については後述するが、保険料が払えなかったりお金がなかったりして無料低額診療を利用する時点で、生活はかなり厳しい状態だ。なんらかの手当が必要な人が多数だろう。一回受診して済むという状況ではない人が多いはずだ。

    「さまざまな理由で受診控えが起きると思うので、状況を整理して、生活保護の申請が必要であれば申請したり、あるいは保険料を分割で支払えるようであれば、今までの滞納分を払うなどもあります。無料低額診療に来ることで、背景にあるお金の問題を社会福祉士などが伴走して解決していく。なので、もっと知られてほしい事業ですね」

    身寄りがなくて入院できない 相談室ぱどる・原 昌平さん

    入院する時など、誰も身寄りがない場合に困ることはありますか。最近は保証人が必要という話もありますが。

    画像: 身寄りがなくて入院できない 相談室ぱどる・原 昌平さん

    「今、病院への入院や施設への入所、住宅入居や就職、学校への入学に至るまで、あらゆる場面で保証人を要求されます

    この保証人がいなくて困っている人を対象に、『身元保証人ビジネス』というものが非常に増えています。ただ、悪質な業者もいて、見極めが難しい。

    ひとつ言えるのは、病院と施設利用に関しては、厚労省が『必ず保証人をつけろ、と求めてはいけない』という通知を何度か出していることです。なので、厚労省は『絶対に保証人をつけろ』と要求するのはダメと言っていますよ、と伝えましょう

    もうひとつ、20年度施行の民法改正によって、保証に関しては限度額と期間を明記することになりました。それを明記していないと無効です。

    なので、どうしても保証人にならなければいけない時は、保証人になるけれど、10万円までしか保証しません、といったことを明記しておく。それがいいと思います」

    <相談室ぱどるについてはこちら>


    著・雨宮処凛
    作家・活動家。反貧困ネットワーク世話人。フリーターなどを経て、2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版、のちにちくま文庫)でデビュー。2006年からは貧困問題に取り組み、2007年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版、のちにちくま文庫)でJCJ賞を受賞。著書に『非正規・単身・アラフォー女性』(光文社新書)、『コロナ禍、貧困の記録、2020年、この国の底が抜けた』(かもがわ出版)、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)、『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)など多数。

    雨宮処凛オフィシャルweb
    http://amamiyakarin.com/

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    死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで(雨宮処凛・著/光文社)

    死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで(雨宮処凛・著/光文社)

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    「働けなくなったら」「お金がなくなったら」「親の介護が必要になったら」……。「これから先」を考えると押し寄せる不安。頼る人がいなければ、最悪、死ぬしかないのか? そして自らの死後、大切なペットは? スマホやサブスクの解約は? この先が不安で仕方ないアラフィフが各界の専門家に取材。社会保障を使いこなすコツや各種困りごとの相談先など、人生の荒波の中で「死なない」ための無敵のサバイバル術を一冊に。



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