• 「おしゃれしたいのに、いまある服ではうまくコーディネートできない」。それはきっと、クローゼットのせい。詰めこむだけ詰めこんだ、数だけ勝負のクローゼットから卒業すれば、これからはきっとおしゃれ上級者。今回は、金子由紀子さん引き算クローゼットの整え方について伺いました。
    (『天然生活』2021年6月号掲載)

    暮らしを見直せば、本当に必要な服だけに

    「突然ですが、いまからあなたのクローゼットを見せてください」といわれたときに、「どうぞ! 」と自信満々で招き入れられる人は、さて、どのくらいいるのでしょう? たいていの人が、尻込みするであろうこのお題、いまでこそ、「どうぞどうぞ」と快く受け入れてくれる金子さんですが、かつては「それだけはご勘弁を……」と逃げだす側の人間でした。

    「服自体の数はいまよりずっとあったのに、いつも『着ていく服がない』と出かける前にあわてる始末。そう、不思議なことに、服をたくさん持っている人の方が、『着ていく服がない』と悩むことが多いんですね。クローゼットがすっきりしている人ほど、コーディネートに悩まないし、なんだかいつも、自分に合ったおしゃれをしている確率が高いと気づいたんです」

    クローゼットを占拠していたのは、セールで熱気にあてられて衝動買いした服、ひと目惚れで試着もそこそこに“たまの冒険アイテム”と言い訳して手に入れた服。若いころは、それらを正当化するために、頭をひねって工夫を凝らし、きっちり収納することで「自分はむだ遣いをしたわけではない」と言い聞かせていたそうです。

    「でもそれでは、何の解決にもなっていませんよね。着もしない服の収納に手間をかけ、時間をかけることこそ、大いなるむだ。そこで思いきって、クローゼットの“引き算”を実践したのです

    クローゼットの整理を決意したとき、いろいろな方法があります。まず思いつくのが、「この1年なり2年なり、袖を通さなかった服を処分する」という方法。確かにそれも有効ですが、金子さんの場合は、より自分の暮らしに寄り添った方法で仕分けします。

    いままでの「とりあえず」クローゼット

    画像: いままでの「とりあえず」クローゼット

    ⚫︎買っては着ずにしまいこむ

    買ったことに満足し、ひと安心。ところがほかの服との相性などを考えなかったため、タンスの肥やしに。着ないから、いつの間にかその存在を忘れ、また同じような服を買ってクローゼットを圧迫するハメに。

    ⚫︎詰めこみ過ぎて瞬発力に欠ける

    服がぎゅうぎゅうに詰まっていて、出し入れしづらく何がどこにあるのかわからない状態。シワだらけで、アイロンをかけないと着られない服も。結局、いつも同じ服ばかりを着て出かけてしまう……。

    ⚫︎ライフスタイルに合っていない

    たとえば、仕事が変わって、もうスーツは必要ないのに、「ものはいいからいつかは着られる」といつまでも手放せないパターン。ほぼ近所にしか出かけないのに、お出かけ着ばかりがクローゼットにあるなども。

    これからの「引き算」クローゼット

    画像: これからの「引き算」クローゼット

    ⚫︎服が多い少ないにかかわらずすべて活用

    クローゼットに収める服は、どれもいまの自分の暮らしに必要なものだけに厳選。増えていく服を収納するために、ラック類など新たな収納アイテムを買って、空間とお金のむだ遣いをする必要がなくなる。

    ⚫︎手持ち服の全体像を把握

    数をしっかり絞ることで、手持ちの服の色、素材、デザイン、その服を着ていくシーンまで、しっかり頭に入るように。出先で“素敵な服”に出合っても、本当に必要かどうかを瞬時に判断できる。

    ⚫︎家着と外着が分かれている

    服選びに手間取るのは、“家着”と“外着”が混在しているから。そこがきちんと分かれていれば、「今日は、外出するかしないか」を考えるだけで、その日のコーディネートはすぐ決定。朝の時間を有意義に使える。

    リバウンドなしの引き算クローゼットを完成させる

    「“最近、着なかった”という事実だけで処分してしまうと、また同じような服を買ってしまう危険性が残ります。もう一歩踏み込んで、“なぜ、着なかったのか”まで考えることが大切なのです。クローゼットの整理というと、皆さん一刻も早く気持ちも空間もすっきりさせたくて、大急ぎで服を減らそうとします。クローゼットの引き算も、ダイエットと同じ。短期間で結果を出そうと無茶をすると、結局、リバウンドしてしまう。まずは一度、心を落ち着けて、自分の生活を見直してみましょう。暮らしのなかで、どんな服が必要でどんな服が必要でないかを、冷静に見つめ直すのです。するべきことは、最近の自分の生活パターンを書き出してみること。するとようやく、自分が本当に必要としている服がわかってきます」

    たとえば、雪国に住んでいる人と、暖かい地方に住んでいる人とでは、必要とする服のバリエーションは大きく違ってくるでしょう。雑誌などの片づけ特集で、「コートは3着まで」などと一様にいわれたことを鵜呑みにしては、あなた自身の暮らしとはかけ離れたクローゼットになる危険があります。

    子どもの有無、その年齢、さらには仕事の内容。あらゆることを計算に入れて、自分だけのクローゼットづくりをすることが、リバウンドなしの引き算クローゼットを完成させる唯一の方法です。

    画像: クローゼットの幅はたった70cm。ハンガー掛けではないトップスやボトムスは、3つの衣装ケースにゆったりと収納されている

    クローゼットの幅はたった70cm。ハンガー掛けではないトップスやボトムスは、3つの衣装ケースにゆったりと収納されている

    「そこでようやく、手放すべき服がわかってきます。人によっては、“もっと買わなければいけない服”も見えてくるでしょう。手放すだけでなく、必要な服を補充するのも大切なこと。引き算は重要ではありますが、本当に使えるクローゼットにするためには、着られる服をきちんとそろえておくこともまた、大切なことなのです」

    ただ、そのときに気をつけたいのが、一気にそれらの服をそろえようとしないこと。

    「“気に入ったから色違いで”などと焦るのはNG。服は、実際に着続け、洗濯を重ねることで本当の着やすさ、扱いやすさがわかるもの。手放すときは潔く、手に入れるときは慎重に。クローゼットづくりは、野球チームに似ています。自分のライフスタイルの、あらゆるシーンをカバーする守備を完璧に。ピッチャーばかりでも、派手な活躍をする四番打者ばかりでも、うまく機能しません。メンバー全員が活躍する、戦力の高いクローゼットを目指しましょう」

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    <撮影/山田耕司 取材・文/福山雅美 イラスト/カトウミナエ 構成/鈴木麻子>

    金子由紀子(かねこ・ゆきこ)
    1965年生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。“シンプルで質の高い暮らし”を軸に幅広い執筆を行っている。All About初代ガイドを務める。著書は『ためない習慣』(改定新版、青春出版社)など。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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