• いつまでも元気で好きなことができる体づくりのために、自分のできる範囲で、1日10分、筋トレをしてみましょう。スポーツ科学の専門家で、健康について研究している樋口満さんに、将来の健康を保つための筋力を維持できる、基本的なトレーニングを教わりました。今回は、1日10回のスクワットを紹介します。
    (『天然生活』2021年5月号掲載)

    女性のための10分筋トレ

    「女性は脂肪を減らそうとし、男性は筋肉をつけようとしますが、健康のためには逆のことをしてほしいんです」

    そう語るのは、スポーツ科学の専門家で、健康について研究している樋口満さんです。

    「男性の体は内臓脂肪がつきやすいため、生活習慣病予防のためにも、肥満は解消したほうがいい。いっぽう女性は皮下脂肪が多く、健康への影響は大きくありません。脂肪が多いことよりも、筋量が少ないことのほうが、のちのち問題になってきます

    年齢を重ねたときに十分な筋力がないと、出歩くのがおっくうになったり、転びやすくなったり。生活の質が低下し、ひいては認知症などを引き起こす恐れも

    筋トレをして筋肉をしっかりつけておけば、いつまでも元気に動けます。また、体が引き締まって見え、代謝も上がるため、脂肪燃焼にも効果を発揮します。

    「女性の体は、閉経を境にホルモンバランスが変わります。すると筋量ががくんと減って、骨も衰え、もろくなるんです。そのせいもあって、いまから筋量を増やしておくことが大切なのです」

    これまで運動習慣のなかった人は不安になるかもしれませんが、心配はいりません。何歳からでも、筋肉をつけることは可能です。

    しかも健康維持のための筋トレは、ジムで重いバーベルを持ち上げるようなハードなことをしなくて大丈夫。「ややきつい」と感じる程度の負荷を筋肉にかけるトレーニングをすればいいのです。

    「効率よく筋量を増やせる筋トレを紹介します。まずは週に5日、10分間、3カ月は続けてみてください。これらにウォーキングなどの有酸素運動をプラスすれば万全です。何歳になってもアクティブに動ける筋肉をつけましょう」

    長く続けるコツは?

    画像: “筋力不足”は、認知症の原因にも? いまから始める「女性のための10分筋トレ」/早稲田大学スポーツ科学学術院名誉教授・樋口満さん

    テレビを見ながらとか、家事をしながらとか、自分のライフスタイルに合わせ、何かのついでに「ながら筋トレ」をしてみましょう。朝晩5分ずつなど、トータルで10分をめざしても。

    また、同じメニューを毎日繰り返すよりも、自由にトレーニング内容を組み替えたほうが、飽きずに続けられます。

    1日10分でできる筋トレ

    将来の健康を保つための筋力を維持できる、毎日やっても体の負担にならない、基本的なトレーニングです。

    スクワット <1日10回>

    スクワットは、下半身の筋力と、腹筋群や背筋群などの体幹を鍛えられる、万能トレーニングです。全身運動で消費できるカロリーが多く、基礎代謝の向上にもつながるため、ダイエット効果も期待できるでしょう。

    簡単な動作に見えますが、正しいフォームで行わないと、膝や腰を痛める恐れがあります。イラストを参考に、安全で効果的な方法を身につけてください。膝痛、腰痛など体に痛みがある場合は、控えましょう。

     足を肩幅程度に開き、つま先と膝を同じ方向に向ける。姿勢を正し、まっすぐ前を見ること。手は自然に下ろすが、体がよろけそうなら、椅子の背やテーブルの端に両手をついて、支えながら行ってもよい。

    両脚は肩幅に開く

     股関節を曲げながら、お尻を後ろに突き出すようにゆっくりと重心を落としていく。このとき背筋は伸ばしたまま上体をやや前に傾ける。膝は最大90度まで曲げていき、立った姿勢にゆっくり戻る。

    股関節を折りたたむようなイメージ。おしりを突き出す。膝を曲げる角度は最大90度まで

    効果を出すためのフォームの注意点

    スクワットで重要なポイントは、膝に負担をかけないこと。膝が前後に動く距離が長いほど負担になりますから、膝を曲げるというよりは股関節を折りたたむイメージで行います。

    膝が外側に開いてしまったり、内側に入ってしまったりするのはNG。また、膝を90度以上曲げてしゃがむ姿勢になったり、猫背になり首や腰に負担がかかったりするのも、よくありません。

    慣れないうちは鏡を見てチェックするのもいいでしょう。

    画像: 膝からお尻の距離が大きくなると膝にかかる負担が大きくなる

    膝からお尻の距離が大きくなると膝にかかる負担が大きくなる

    画像: 膝が外側に開かないように

    膝が外側に開かないように

    画像: 膝が内側に入らないように

    膝が内側に入らないように

    画像: しゃがみ込むと膝に負担がかかる

    しゃがみ込むと膝に負担がかかる

    画像: 猫背になると頸椎や腰に負担がかかる

    猫背になると頸椎や腰に負担がかかる



    <監修/樋口 満 イラスト/にしごりるみ 取材・文/長谷川未緒>

    樋口満(ひぐち・みつる)
    早稲田大学スポーツ科学学術院名誉教授。教育学博士。アクティヴ・エイジング研究所顧問。健康スポーツ科学、スポーツ栄養学を研究。ハンガリー体育大学名誉博士。第20回秩父宮記念スポーツ医・科学賞功労賞を受賞。『女は筋肉 男は脂肪』『体力の正体は筋肉』(いずれも集英社新書)など著書多数。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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