• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。保護した母猫が原因不明の不調に。病気かも?と心配するも解決策が別のところにありました。

    「原因不明の不調」に悩まされて

    猫の病気はいつも心配しますが、昨年保護した親子猫の母猫「ヨナ」は、半年以上、原因不明の病にかかっていました。

    それは「下痢」。いつまで経っても、うんちがゆるいのです。

    保護してすぐ、当然寄生虫などを心配し、うんちの検査をしました。ですが、異常なし。

    最初は、フードが体に合わないのかと、お腹に優しいフードに変えました。だけど下痢のまま。さらにさまざまな胃や腸に効くフードを試したのですが、いっこうに良くなりません。

    もしかしたら、野良時代の空腹の反動で食べ過ぎているのではないかと、ごはんの食べ過ぎにも目を光らせても、変わらず……。

    病院でも、ペットショップでも、ずっと匙を投げられていました。

    何が原因なんだろう。

    どんな重い病気が、この小さな体に潜んでいるんだろう。考えると、かわいそうで、胸が痛みました。

    画像: 「原因不明の不調」に悩まされて

    不調が治った! その理由はフードでも薬でもなく……

    ところが――ある時から、ふいに、ヨナの下痢が治ったのです。

    何か薬を飲ませたわけではありません。フードを変えたわけでもありません。

    いったい何が、ヨナのおなかに良かったのか。

    行き当たった答えは、「メンタル」でした。

    ヨナはもともと、とても気の小さな子でした。それが、突然「保護という名の隔離」をされ、知らない人間、知らない猫に囲まれる生活。

    時には病院に連れていくため無理やり捕まえられ、時には、ヨナを心配して、人間に不用意に近づかれる……。

    そんなささいな「家猫なら当たり前のこと」が、ヨナには大きなストレスになっていたのです。

    もしかして、と思ってから、私たちはそれまでよりもずっと、ヨナに近づきすぎないよう気にかけました。

    同時に、ヨナが甘えてきたときは、ヨナが満足するまで、ヨナのペースでなでてあげたのです。

    その頃からでした。ヨナの下痢がピタッと正常になっていったのは。

    画像: 不調が治った! その理由はフードでも薬でもなく……

    猫の不調時に、私たちができること

    猫が不調になったとき、私たちは、まず体を心配します。

    とりたてて威嚇していたり、隅で震えていたりしないかぎり、そんなに恐怖心を持っていないのだろうと安心してしまいます。

    でも、ヨナは、「ふつう」を装いながら、ずっと体に不調が出るくらい、心に負荷を抱えていたのです。

    この四月。心の病気を抱える私は、季節の変わり目で体調を大きく崩しました。

    何か嫌なことがあるわけでもないのに、毎日、命を投げ出したいほどの心の不調にさいなまれたのです。

    見えないけど――命は、いつも闘っています。

    しあわせになるために。

    そばにいる私たちは、「体は健康なんだから」と安心せず、「心の揺れ」まで支えることが、家族だからできることなんだな、と痛感しました、


    画像: 猫の不調時に、私たちができること

    咲セリ(さき・せり)

    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

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