• エッセイストで空間デザイン・ディレクターの広瀬裕子さん。60歳を前に、歳を重ねるなかで出てくるさまざまな課題や考えなくてはいけないこと。たとえば住まいのこと、仕事のこと、⾝体のこと。ひとつひとつにしっかり向き合い、「心地いい」と感じる方へ舵を取る広瀬さんの毎日。そこから、60歳までにこうなりたい、という目標と取り組みを同世代や下の世代の方とシェアしていけたらと思っています。久しぶりに新しい靴に出会った広瀬さん。それはこれまでとは違う種類の靴でした。

    ヒール靴を手放して、次に手にしたもの

    冠婚葬祭用に1足だけ持っていた5センチヒールの靴を、東京へ住まいを移すタイミングで手放しました。以前、久しぶりに履いたところ、夕方になる頃には足が痛くなり「手放す合図」と感じていたからです。その時、靴も服同様、数を減らし、すきなもの、履き心地のいいものにしていくことに決めました。

    それからしばらくして、1足のローファーと出合いました。

    メンテナンスをお願いしていたバッグをお店へ取りに行った時のことです。店頭でそのローファーをはじめて目にしました。とてもきれいな形です。ローファーですが、エレガントな佇まい。

    画像: ローファーは、エルメスのもの。メンテナンスをしながら履きつづけたいと思っています

    ローファーは、エルメスのもの。メンテナンスをしながら履きつづけたいと思っています

    以前から「ローファーがあるといい」と思っていたこともあり、いつもは通り過ぎてしまう売り場で足を止めました。

    靴は消耗品と考えていたけれど、これからは違うのかも知れない

    靴は、服に比べると、慎重に選ぶことが多いのではないでしょうか。合わない靴を履いていると、痛みや体の不調につながるからです。5センチヒールを久しぶりに履いた時のように。

    若い頃は、体力や筋力で、なんとかなっていた窮屈さや痛みなども、歳を重ねるとなんとかならなくなってきます。デザインがいい。今年らしい。それだけでは、手にしなくなります。

    件のローファーですが、その日に限り、わたしのサイズがありました。そのお店は、合うサイズの靴の在庫がないことがほとんどなので、ちいさな驚きでした。

    サイズと履き心地の確認のため足を入れます。想像を超えたしなやかさ。ローファーなのである程度の革の硬さを想像していましたが、まったく、そんなことはなく、革靴とは思えないかろやかさだったのです。ローファーは足に馴染むまで時間がかかる、と思っていましたが、そんな心配は必要のないものでした。値段もしましたが、それ以上に「こんなローファーとはもう出合えないかもしれない」そんなふうに思ったのです。

    ローファーなら、長く履きつづけらます。サイズもぴったりです。出合いですね。そう思って、その靴をお願いしました。

    画像: 使用する前には、靴裏のつま先と踵部分にソールを貼ります。銀座松屋2階のシューズ&バッグリペアサロンにお願いしています

    使用する前には、靴裏のつま先と踵部分にソールを貼ります。銀座松屋2階のシューズ&バッグリペアサロンにお願いしています

    それから、わたしの靴に対する考えが変わりました。それまで靴は、消耗品と考えていたところがあります。メンテナンスも苦手でした。それが、あの履き心地をできるだけ長く保ちたい、と考えるようになり、手入れをするようになったのです。

    と、言っても、日常的には、ささやかなことしかしていません。

    帰宅したらさっと拭く。雨の日はできるだけ避ける。靴底のソールを早めに張り替える。それだけでも靴はいい状態を保つことができます。

    修理に出すお店も、詳しい方、親切な方がいるところを選ぶようになりました。些細なこと、例えば靴底のソールをどう貼るかなどもお任せではなく「こうしたい」と相談できるところです。何でもそうですが、プロならではの扱いや知識は、事例をいくつも持たれています。そういう方にお願いするほうが、安心です。

    画像: スニーカーは、ジェイソンマークの防水スプレーをしてから。汚れ落としは、スニーカー用のシートを。ジェイソンさっと汚れが落ちるので出張へ行く時もトランクの中へ

    スニーカーは、ジェイソンマークの防水スプレーをしてから。汚れ落としは、スニーカー用のシートを。ジェイソンさっと汚れが落ちるので出張へ行く時もトランクの中へ

    靴はその人を表す

    いま日常的に履く靴は、ローヒールでは、バレエシューズとローファー。夏用サンダル2足。スニーカー3足です。出向く先、どなたと会うか、天候、服装などで当日の靴を選びます。服もそうですが、数が少ない分、迷いません。色も黒、白、グレーと、持っている服と同じ3色にしています。この先、弔事用の靴が必要になると思いますが、その時もヒールのないものにするつもりです。

    画像: 着物用の履物は、整理をし現在は草履1足のみ。畳表は、鼻緒により礼装時もOK。鼻緒は昨年新しいものにすげ替えました

    着物用の履物は、整理をし現在は草履1足のみ。畳表は、鼻緒により礼装時もOK。鼻緒は昨年新しいものにすげ替えました

    靴は、その人を表す、と教えていただいたことがあります。

    ホテルの方がお客様と接する時「ヘアスタイル、時計、靴を見る」と、その方は教えてくれました。確かめていないので、間違っているかもしれませんが、なんとなくその理由もわかります。

    わたしが思うには、高価なものがいいわけではなく、清潔であること、手入れされていること、その人、その場に合っているか、ではないでしょうか。古いホテルでも清掃が行き届いていると気持ちよく滞在できるのと同じです。それからできるだけ、ヘアスタイルはコンパクトに、靴は手入れしたものを、と思うようになりました。自分と古いホテルを重ね合わせているわたしに気づきます。

    靴は、年齢を意識するものです。ヒールのある靴を履かなくなった、履けなくなったように、体力や筋力の状態と関係しています。いまは、長い距離も歩けますが、少しずつ、距離も短くなるでしょう。骨折しないように気を配る必要もでてきます。女性は年齢とともに骨密度が低下すると言われています。それらを考えると、自分に合う、安定した靴を選ぶことがこれからは大事ですし、それは、自分自身を大切にしていくことと同じだと思っています。

    60歳までのメモ

    1 どんな靴を持っているかすべて確認する

    2 体にとって負担になるかを検討する

    3 履くものと履かないものを分けてみる

    4 必要なもの(ウォーキング、レインシューズ、冠婚葬祭)などの新旧入れ替えを検討する

    5 これからも履く靴のメンテナンスをする


    画像: 靴はその人を表す

    広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)

    エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19

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